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イギリスの生きた博物館

ロンドンの郊外には、生きた博物館が点在している。イギリスの田舎町の風物詩は、自然とパブ、そして歴史のあるお屋敷。それらの邸宅は代々貴族(今でも「〜伯爵」と名前に付いてる人)に受け継がれてきたのだが、いくら豪邸でも500歳にもなると管理が大変らしく、今ではそれらの多くをNational Trust という団体が管理している。わかりやすく訳すとしたら、「文化遺産建築財団」とでも言えるだろうか。イギリス全土のお屋敷だけでなく、広大な庭や森などの敷地500カ所近くがNational Trustの管理下にあり、会員になるとそれらの施設どこでも無料で入る事ができる。(ちなみに入場料は各施設£15ほど、年会費は一人£60ほど)

とあるTV番組では、放置されて散らかり放題の大きなお屋敷をOCD(脅迫性障害)潔癖性の人たちが掃除しまくる、という企画があるぐらいだからイギリス人も色々と考えるものだ。

屋敷は壁一面を埋め尽くす絵画コレクション、彫刻、ゴージャスなインテリアで溢れ、それら一つ一つに一族の歴史が刻まれている。

最近訪れたHatchlandsという屋敷とお庭(森)で発見したのは、なんと50近くものキーボード。ショパンやマーラーが持っていたヴィンテージピアノから、美しい装飾が施されたハープシコード、四角い机のかたちをしたクラビコードなど、楽器好きにはたまらないコレクションだ。ゴージャスな部屋にピアノが敷き詰められるように沢山置いてあり、オーナー家族は普段普通に弾いているという。

団体が管理しているものの、今でも二階部分に家族が住んでいるパターンが多い。公開されている屋敷のリビングの一角に小さなテレビと家族写真が並べれられていて、一部庶民的なところも面白い。

Petworthという屋敷には、もともと使用人たちの屋敷だった別棟があり、昔のキッチンがそのまま再現されていて、食生活や暮らしぶりを知る事ができた。

Stourheadという屋敷には数奇な歴史がある。この屋敷を第一次世界大戦前に受け継いだ一家。幼い子供を連れたその家族には、家が火事にあったり、戦争中に兵士の療養施設として開放したりと波乱が待ち構えていたが、最大の出来事は、立派に成長した一家の息子が戦死してしまったこと。息子と両親との手紙のやり取りや写真などが展示され、各部屋ごとにストーリーが紐解かれていく。

1つ1つに貴重な歴史が刻まれるNational Trust 登録施設の場所は、この緑の点。ちょっとディープなイギリス旅行がしたくなったら、車を借りてこれらを巡るのもいいかもしれない。


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