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大変だけど楽しい時間

3位、れいこ!と呼ばれた時、思わずそれらしき人物が周りにいないか見回してしまった。ちなみに私の名前はりえこである。IとEの順番が入れ替わって「れいこ」と間違われる事も多々あるが、もしかしたら「れいこ」と良く似た発音の名前の全くの別人かもしれない...

しかし審査員2人は明らかに私を見ている。私?と指さしてみたら、大きく頷かれたので、どうやら私が3位らしい。たぶん豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしていたと思う。念のため、私の名前はりえこである。

先週の土曜日が試験でものすごくくたびれたのに、何を間違えたか、今週もNSW州フルート協会のEisteddfodに参加した。

Eisteddfodはウェールズで始まった「芸術祭」の意味があるみたいだが、フルートのレベルごとに審査され、1~3位までが決まる「ミニコンテスト」みたいなものだった。

昨日はもの凄くお腹がすいて、生理前でもないのになんでだろうと思ったら緊張と不安から来る暴食だった。そのせいでおでこに2つ程、今日本番がおわったあとも、数日くらい生活を共にしなければならないニキビができた。

本番前に伴奏者の家に行くときも、緊張のあまりバスを乗り過ごし、本番直前は心臓が肋骨の中を四方八方に暴れ回ってるんじゃなかろうか、という程ドキドキした。

それでも出たかったのは、7年ぶりの緊張して弾くという体験が思いのほか楽しかったのと、今度は試験官だけではなく「観客」に聞いてもらいたかったのと、応募した「チャンピオンシップ」セクションは1~3位まで賞金が出たからである。へへ、「賞金目当て」ってやつだ。

楽しく弾けてお金も出たら凄い!と「登録」ボタンをポチッとした数日前の私。でも、やっぱり本番が近づくと緊張する。

もう良いや!やっぱり賞金はいらないから楽しく吹こう!楽しく吹けたら良しとしよう!

一番聞いてほしかった「観客」だった人は食中毒とインフルエンザで寝込んでおり、観客に知り合いがまったくいない本番。試験でも弾いた、モーツァルトのソナタとイーベのフルートのためのソロだったがやっぱり緊張して、吹き終わる最後の一音まで手がフルフルしていた。

伴奏者の方は、私の本番の後に次の伴奏場所へと向かっていたので、結果発表は一人だけ(伴奏とはいえ一日に本番が2回もあるなんてすごい!)。審査員が結果を相談している15分は、手持ち無沙汰でぼーっとしていた。

楽しかったけど、みんな上手で、一番自分が下手だったかも...と思っていたから3位で呼ばれた時は驚いた。私でいいの?と思っている間に、他の出演者や親が「おめでとう」と声をかけてくれるのも、初めての体験で。もちろんお目当ての賞金も少し笑

一人での帰り道、やっと終わったと思うと全身の力が抜けて、もう二度とこんなことしたくない!と思っているのに、「次はいつにしようか?」と話しかけてくるもう一人の自分もいて。

毎日へとへとになるほど練習して、プロでもないのに練習で指が痛くなって、せっかくの日曜日をほとんど緊張した状態で過ごして、でも本番前覚悟を決めると確かに体中に力が湧くのを感じた。

毎日行かなくては行けない仕事や学校の「大変な時間」と、「ダラダラYoutube見てる時」「何も考えずにドラマ見てる時」のただただ楽しい時間。

その間の「大変だけど楽しい!」感覚が、やっと取り戻せた。本気だしたら、どこまで行けるのかな?本気をだしても到達できないレベルまで、どうやったらいけるのかな?という実験。

この実験、毎日できたら楽しいな。次はいつにしようかな。




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