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「こじらせ」を考える① 自虐的な彼は弱き人たちの気持ちがわかる人

 先日、私たちの間で「大人の恋愛と『こじらせ』」について語った内容を、何回かに分けて記したいと思い立ちました。

自信が無い男性 Hさんのお話

 あるところにHさんという男性がいました。彼は自信が無く生きづらさを感じていました。曰く、

「自分は低学歴で見た目も冴えないし、要領の悪い無能な男だ。」

 などと、自分自身を散々に低く評価していました。

 そんなHさんが唯一自信を持っていること。それは「ユーモアセンス」とのことでした。特に自虐ネタがお得意で、身近な人たちからは「笑ってはいけないけど笑ってしまう」と、素直に喜んで良いのか微妙な高評価を得ていました。

「笑えません」

 ある日、そんなHさんの鉄板の自虐ネタを、少しためらいながらもHさん本人に向かって「笑えません…。」と伝えた人がいました。その人はRさんという女性で、この当時、Hさんとは職場で知り合ってまだ半月程度しか経っていませんでした。

 唯一の特技を真っ向から否定された!?その後数日間、Hさんはひどく動揺していましたが、Rさんの言いたかったことはHさんの受け止め方とは大きく異なっていたということが後でわかりました。

 Hさんは確かに要領が良いとはいえず、会社に入った時も、仕事を覚えるのは同期と比べてやや時間がかかりました。ですが自分が苦労した分、新入社員や異動してきた人に対して面倒見がよく、説明がていねいで分かりやすいので、あんがい後輩からの人望は厚かったのです。

 Hさんに支えられたおかげで、会社を辞めてしまうのを思いとどまった人さえ何人かいることをRさんは知っていました。それなのにHさん本人は気づきもせず、どこか投げやりな態度で過ごしている。RさんはそんなHさんを見て悲しくなり、思わず「笑えません」と口に出してしまったのでした。

 この出来事をきっかけに「自虐ネタ」を封印したHさんは、彼が本来持っていた丁寧さや責任感が顧客から評価され、みるみる実績を上げていきました。Hさんは性格上、先頭に立ってみんなを引っ張っていくリーダーにはなりたがりませんでしたが、後ろに回って皆を支えていくコーチのような役割で、社内でも信頼を得ていきました。

誰しも一つくらいこじれている

 近年、「こじらせ」という概念がいつの間にか定着してしまいましたが、この「こじらせ」の定義は非常にあいまいで幅広いように感じます。

 人間、誰しも一つくらいはこじらせた部分を持っていると考えられ、それを全て治そうとするのは現実的ではないので、自分のこじらせている部分が別に気にならない相手、もしくは補い合える相手を見つけることができれば一番良いと思います。今回の議論の結果、そのような結論を得ました。

 最も、HさんとRさんの一件は珍しい例であり、この問題を解決するのは実に難しいです。

「自虐」編 終わり 次回以降、「モラハラ」「ヤリモク」などを取り上げる予定