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プロダクション・ノオトー「メタバース編」(13)

 前回は「次回では、コンテンツが提供される空間(庭)の話に移ります。」で締めくくりました。
 今後訪れるであろうメタバース空間は、大いなる庭なのだと思われ、おそらく町作りに似ているのかもしれません。何もない土地に作られる町とすると、以前に綴った作庭師的な思想をどのように生かしていくのかが、とても大切になるかと思います。
 一番手っ取り早いのは、モールになったショッピング・センターのように、デカルト的なx軸y軸z軸の平面を組み合わせたもので、地勢学的なものは考慮せずに、人工的な、あまりにも人工的なコンクリートの箱の連なりの表面を装飾しただけの空間になるかと思います。私はこれを、逆ブロイラー空間-つまり、養鶏場のブロイラーのニワトリの逆パターンの空間だと命名しています。決まりきった箱に異なる餌があり、そこに顔を突っ込んでは餌をついばるように見えるからです。
 一方で、実際にヒトが集まる空間を考えてみると、そこには土地の起伏があったり、川が流れていたり、道路が曲がっていたり、坂や路地があったり……三次元に凸凹した地政学的な面白さがあります。何十年か前、東京の面白さとは何かを知人と真面目に議論したことがありました。そのときに、ふと思い浮かべたのが、東海道新幹線で東京駅に向かう直前、品川の手前で車両は左へと傾きながら曲がって走ります。そのとき、左側の車窓に見える東京の街は、凸凹した地形に高低さまざまな建物があり、そこに数多くの人々の暮らしが見えてきます。それを無秩序という人もいるかもしれませんが、私には、その凸凹した街の風景こそ、東京の魅力に見えます。
 風水や陰陽道ではありませんが、凸凹した地勢を生かして作られた街にそよぐ風や光も、多様性を帯びて、私たちを楽しませるものと思います。
 さて、メタバースという空間には、もともと地勢はありません。その地勢をどうやって作り上げるのか、つまりなんらかの明確な考え方があるべきだと思っています。前話で綴った作庭師のように。中嶋雷太

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