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本に愛される人になりたい(57)カール・ジンマー/ダグラス・J・エムレン著「進化の教科書」

 小学校低学年から図書館にはまり、ジャンル関係なく本を貪り読んでいるうちに、いつの間にか学際的な知識に興味を持ち、今日に至っています。私は永遠の図書館ボーイのようです。その中でも進化論という学問は私を惹きつけてやまないもので、皆さんご存知のチャールズ・ダーウィンの「種の起源」を筆頭に、進化論についての面白そうな本があると本屋さんで買ったり、図書館で借りたりして読み漁ってきました。
 五年ほど前のこと、京都に墓参で帰郷したときに、大型書店をぶらついていましたが、さして食指が動くような本もなく(こうした場合は、大抵、その本屋さんや出版社が悪いのではなく、私の知的好奇心が萎えているわけですが)、ならばブルーバックス・コーナーでも覗いてみるかとやってきたところ、平積みにされていたのが本書で、「おー!進化論!」と叫び、深く考えることもなく、第1巻から第3巻を鷲づかみしてレジへと向かいました。
 本書の帯にあるように、この原書はハーバード大学やプリンストン大学などで使われているらしく、読み始めるとなかなか上手く整理され読み易い内容になっていました。
 中身はお読み頂くとして、この五年ほどで、何度も読み返し、私の進化論についての知識を絶えず整理させてもらっていますが、徐々に「進化」という言葉自体に違和感を持つようになってきました。「進化」という言葉は、現在そして未来に行けば行くほど生物はより良くなっていくという嗜好性を孕んでいます。例えば、ヒトは最良の進化を遂げた生物だという漠然とした自惚れを、進化という言葉が宿しているように思われます。
 恐竜は約1億5,000万年間地球に棲息していましたが、ヒトはわずか700万年前に発生しただけで、地球の歴史のなかではカゲロウのような一瞬現れて消える生物なのかもしれません。進化の系統図では、ヒトは最先端にあり、生物として最高に進化したという感覚が描かれていますが、地球誕生以来の生物の変遷を考えると、単に「変化」してきた生物の一種でしかないのではと考えています。
 つまり、「進化」という言葉よりも、「変化」の現在形態だと考える方が良いかと思っています。「進化」ではなく「変化」なわけです。
 ヒトは知性を持ち、近代文明を成し遂げ…と言いたいのは重々分かりますが、地球史やさらにビッグバンからの宇宙史から考えると、「ヒトは最高の生物だ」的なものはいかがかと思います。とはいえ、進化論をめぐるオーソドックスな考え方を上手くまとめた本書は、これからも再読するのだとは思います。中嶋雷太

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