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私の「美」(9)「神威岩」

 小樽から車を飛ばしニッカの工場に行った帰り、ふと立ち寄ったのが神威岬でした。
 観光ガイド情報にある様々な美しい風景写真を求めて旅をする人が多いと思いますが、私はあまり興味がありません。その風景写真という枠メガネをかけたまま観光地を訪れ、枠メガネに固定された風景写真を追い求めたくないと思っているからです。
 これは、私の実家が嵐山や嵯峨野近くにあったせいもあるかと思います。今から考えると贅沢ですが、徒歩圏内に歴史的な神社仏閣があり、嵐山や嵯峨野が普段の風景だと、観光ガイド・ブックで紹介されている同じ場所の風景写真が、どこか遠い世界のものに感じざるを得なかったこともあります。
 さて、事前情報もないまま、神威岬のつけ根にある駐車場に車を停め、岬の先端まで歩くこと数十分。駐車場の売店に貼ってあったポスターの神威岬と神威岩のイメージを心に抱えつつ岬の突端に立った私は、目の前に広がる情景に、目を見張りました。
 水平線が描く弧は、まさに地球の丸みで、見晴らしは300度以上あり、青い海と青い空、そして海面から神威岩がスクリと立っていました。
 小樽のホテルに帰ってからGoogleで歴史的な話を探し読んでみましたが、それはそれ、歴史的な意味を伏す感激がありました。
 これまで、色んな風景に出逢い、時に感激することも多々ありましたが、神威岩もまた、これまでにない風景だったと思います。そして、驚きこそ創造力の源泉なのだと改めて感得しました。その感激を言語化すればするほど、どこか嘘になるはずで、ただただ「美」を感じたとだけ、ここでは言っておきたいと思います。 中嶋雷太

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