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私の好きな映画のシーン(50)「アメリカン・グラフィティ」

 29歳だったジョージ・ルーカスが監督したのがこの作品です。1973年米国劇場公開で、その4年後に「スター・ウォーズ」の米国劇場公開となります。
 全編、タイトル通りの青春映画としてパクス・アメリカーナの享楽を生きる若者像が描かれ、その屈託ない明るさが羨ましくもなります。
 ところが、スタッフ・ロール直前に、主人公たちの行方が淡々と顔写真と文字で現されます。ベトナム戦争で行方不明になったもの、戦死したもの…。
 鮮やかなネオン管に照らされた青春は、束の間の享楽でしかなかったことを、観客はドンと突き放されながら、知らされます。幸せな青春も泥沼のベトナムの戦地も、いずれもリアリティなのだと、観客は、ジョージ・ルーカスに突きつけられて、この映画は終わります。多感な十代の私もまた、彼に突きつけられ、突き放された一人だったと思います。
 それは1970年代初頭だけの話ではなく、今でも、ウクライナで戦争があり、世界各地で紛争や飢餓に苦しむ子どもたちなどがいますが、私たちの日常は「アメリカン・グラフィティ」で描かれたような享楽で彩られています。束の間の幸せが孕む狂気を、私はそっと見つめています。中嶋雷太

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