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マイ・ライフ・サイエンス(26)「黄砂は悪者?」

「明日は大量の黄砂です!」と大変さを前面に押し出すニュースが流れると、へそ曲がりの私は黄砂は悪者なのか?と、世の中の反対側に立ちたくなります。元々、二者択一論を毛嫌いしているので、先ずは真逆に立って物事を捉えたくなる性格です。
 中国のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠や黄土高原から巻き上がった細かな砂が、偏西風に乗り朝鮮半島から日本海を超えて日本列島まで吹き流されてくるのが「黄砂」だというのは、誰もが知っている基礎知識でしょうが、黄砂自体についての話になると、視界が悪くなるとか洗濯物に付着するといったその現象面ばかりで、その実態について語られることはあまりないようです。
 気象庁によれば「黄砂粒子の分析からは、土壌起源ではないと考えられるアンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオンなども検出され、輸送途中で人為起源の大気汚染物質を取り込んでいる可能性も示唆されています」とあります。
 大気汚染物質が取り込まれているとすれば、やはりその詳細を知りたいところですが、地球史という時間軸で捉えてみると、日本海や日本列島に豊富なミネラル分や土壌を長年供給してくれているのも黄砂です。
 約三千万年前にユーラシア大陸から離れて形成されたのが日本列島なので、日本列島単体だけを考えても、約三千万年間、黄砂がミネラル分や土壌を日本列島に供給してくれているともいえます。
 日常生活になるべく支障をきたしたくないのが私たちのあるがままの気持ちで、そうした気持ちに沿ってニュース番組などは「黄砂は悪者!」として取り扱い、それが何十年も繰り返されているうちに、「黄砂は悪者」という考えが根づいてきたと思いますが、そうした価値観を一度消し去り、約三千万年もの間に日本列島にミネラル分や土壌をもたらしてくれていること、そしてこの数十年の大気汚染物質のあり様について、もう少し深く考えてみたいと思っています。何事もファナティックにならず、多様な視点で落ち着いて考えてみたいものです。中嶋雷太(図は気象庁のウェブサイトより)

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