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本に愛される人になりたい(7)「ローレン・バコール。私一人」

 俳優の自伝を数多く読んできましたが、未だに最高峰にあるのは、本書です。  
 1980年代に初版を手にとり、魅せられたものの、繰り返した引っ越しで、いつの間にか本書を無くしました。既に10回以上引越しをし、L.A.ではセンチュリー・シティーからウェスト・ハリウッドに二度引越しもし、若いころに読んで感銘を受けた本書を含め、数々の初版本は何百冊も失われてしまいました。
 L.A.から帰国した2003年。
 書棚に本書が無く、探し求めたところ、神田神保町の古本屋さんで300円で売られていたので、すぐに買いました。原書はL.A.在住時に買っていましたが。
 彼女については、語り尽くせませんので、皆さんにて、Googleで調べてください。
 女性差別だと嫌われるかもしれませんが、女性というジェンダーを、分け隔てなく生きた人が大好きで、ローレン・バコールという俳優は、女性というジェンダーを掲げつつ、強靭な個性を映画のなかで見せてくれたと思っています。
 淡々とした自伝の語り口は、副詞や形容詞でぼやかすことがなく、ある意味、ジャーナリスティックなのも、好感をもった理由だと思います。
 「キー・ラーゴ」の節で、「彼らはみな、単なる"スター"ではなく、真の俳優だった…」と、彼女は語ります。
 国内外で、数多くの俳優の方に出会ってきましたが、ローレン・バコールという俳優の、ある意味冷徹であり研ぎ澄ませた日本刀のような視座を持つ方には、まだお会いしていないと思います。
 より良き映画を作る最低限の気構えを、ローレン・バコールさんは語り残してくれました。     中嶋雷太

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