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私の美(46)「例えば、陶器の器の底」

 底好きというか、裏好きというか…の私です。わざと捻くれているわけではなくて、例えば、飛行機が着陸態勢に入り、真上にやって来るや、私の心臓はドキドキと激しく鼓動します。飛行機の裏面を見ると何故だか興奮さえします。電車や機関車でも、その足元を楽しみます。特に機関車の場合は、鉄の輪が駆動する仕掛けを見ているだけで、幸せです。
 そして、陶器の器の底。
 真横や真正面から陶器を眺め「良いなぁ」と呟くのではなく、どうしても、その裏というか底を見たくなります。その陶器の作り手の「銘」には興味などなく、あくまでその底のフォルムを愛でたくなります。
 底フェチとか裏フェチと断罪されると困りますが、確かにフェチズムはありそうです。
 何故、底や裏が好きになったのかは、幼少期の心理学的な体験が強く残っているのだとは思いますが、記憶にはありません。ただ、カブトムシを手にして裏返し、モジモジと脚を動かすのをじっと眺めていたのは確かです。カブトムシだけではなく、蝶々やバッタなども、その脚の動きに見とれていたような記憶が微かにあります。
 「私は底・裏が好きだ!」とはっきり分かったのは、ロサンゼルス出張時のことです。ロサンゼルス国際空港に到着すると事前予約したレンタカーを取りに、Hertzの回遊バスに乗ります。十数分かけHertzレンタカーに到着し、電子ボードにある名前と駐車番号を確認して、レンタカーをピックアップします。
 指定されたレンタカーを見つけ、荷物を載せていると、ひっきりなしに飛行機が着陸してゆきます。その高度もかなり低く、飛行機の裏面がはっきり手にとるように見え、じっと見つめる私がいました。
 その時に、「私は底・裏が好きだ!」と自覚した次第です。
 頻繁に陶器の器を買うことはありませんが、買うときには必ずその器の底を見てしまいます。日常使いの器を選んでいるのに、底の「銘」でも調べているのかと疑われていると思いますが…。
 ただ、ある人に教えてもらいましたが、陶器の器の造形で重要なポイントの一つがこの底の形状だそうです。上部の造形がたとえ美しくても、この底の造形が適当な器があるらしく、いわゆる手抜きだとのことでした。その真偽のほどは分かりませんが、見えないところまで気を配るのは大切なのでしょうね。確かに、底が適当だと、グラグラするわけですから。何事も基本が大切なのですね。中嶋雷太

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