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私の好きな映画のシーン(57)『博士の異常な愛情: または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』

 英語題は"Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb”ですが、ピーター・ブライアント(ジョージ)の原作は"TWO HOURS TO DOOM"だったので、監督のスタンリー・キューブリックがこの長ったらしい題名に行きつくところが、彼らしいなぁと思います。
 東西冷戦下での、アメリカとソビエト連邦の核の脅威を、ブラック・コメディのタッチで描いたこの作品は、私の個人映画史にも深く跡を残してくれました。映画の内容はぜひ見ていただければと思いますので、よろしくお願いします。
 最初から最後まで、まるで私の好物の天下一品のラーメンのような、ブラック・コメディこってりの、この映画の、最初のタイトル・バックで私はやられました。1950年代のラブ・ロマンス映画タッチの柔らかな楽曲のBGMが流れるなかで、空中給油機から長いノズルが下に伸びB-52戦略爆撃機へと給油するシーンが延々と流れ、楽曲のエンディングでは、静かにノズルが放され、B-52は右へと機体を傾け分かれてゆきます。
 クスリと笑える絶妙な映像と音楽の演出は、導入部として大切なタイトル・バックとして、大人の観客のブラック・コメディ・センスを鷲掴んでくれます。(何を言ってるのか分からん!という方は、ぜひこの映画を観てくださいませ)
 1964年米国劇場公開ですから、スタンリー・キューブリック監督が36歳のとき。1968年『2001年宇宙の旅』、1971年『時計じかけのオレンジ』、1975年『バリー・リンドン』、1980年『シャイニング』、1987年『フルメタル・ジャケット』、1999年『アイズ・ワイド・シャット』…と、彼の快進撃が続きますが、36歳の監督作のこの映画にかけた情熱が、ひしひし伝わってきます。
 さて、製作費があろうがなかろうが、この映画に向けた創造力から学ぶべきことは多々あるかと思います。創造という努力をするか、しない理由を見つけようと考えてばかりなのか…。
 しかし、この映画のタイトル・バックのブラックさは秀逸過ぎ、ムフフ…となり、そのまま約90分のドラマへと没入していくわけです。中嶋雷太

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