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私が書いた物語のなかから(9)「両手でそっと、銃を置く」からマックス・ヴェーバーの言葉。

 2021年12月、「両手でそっと、銃を置く」をデジタル出版し、長年温めてきたハードボイルド3部作を完結しました。第1作は「左手で、焼けた薬莢を握り締め」です。本作は、第二次世界大戦時から秘密裏に行われたクチクラ(表皮)研究が現代に新たなモンスターを産み出します。東京、ベルリン、ロンドンデリー…世界を巻き込みながら陰の悪魔「フォーリー」が動き出し…現代人にとっての「美」とは何かを痛烈に問う大人の為の物語です。第2作は「右手で、朽ちた銃架を握り締め」です。ロシア人宇宙飛行士コズロフは宇宙で突然死します。世界犯罪集団「フォーリー」が仕掛ける宇宙弾丸衛星は、やがて世界の軍事衛星の脅威となります。宇宙犯罪対策チームが宇宙弾丸衛星の暴走を止められるかどうか、手に汗握る未来型ハードボイルド作品になりました。そして、第3作は、日本列島隆起から始まります。その謎を解く鍵はナチスドイツに略奪された絵画「虹色の少年」でした。大陸プレートと海洋プレートが不気味な動きを見せる危機に、ナチス・ドイツ略奪美術品の探索、ドイツ東部のアイゼントートの森の闘いと、ザ・チームが再び世界を飛び回り闘いを繰り広げる手に汗握るハードボイルド作品となりました。
 今どき、ハードボイルドですか?という声が聞こえてきそうですが、私は手に汗握る群像劇のようなハードボイルド映画が観たいのですが、誰も製作してくれないので……が正直な回答です。ま、製作すると、予算は1作品数十億円になりますから仕方がないですけれど。この3作目「両手でそっと、銃を置く」の冒頭に、次のようにマックス・ヴェーバーの言葉を引用しました。

 「悪魔の力は情け容赦ないものである。もし行為者にこれが見抜けないなら、その行為だけでなく、内面的には行為者自身の上にも、当人を無惨に滅ぼしてしまうような結果を招いてしまう。」(マックス・ヴェーバー「職業としての政治」(岩波文庫)より)

 元々は、面白くドキドキするハードボイルド作品に仕上げようと考えていたのですが、3作品を描いているうちに、国内外で発生した色々な問題点と重なってきて、3作品に通底する何らかのメッセージを考えているなか、このマックス・ヴェーバーの言葉をふと思い出しました。そして、本当に、悪魔というのは、リアルに顕在化しているのだと、つくづく思っているところです。リアリティが作り話を超えていくのをまざまざと実感していますが、作り話からリアリティの世界にある巨悪を撃つことは充分可能だとも思っています。
 読者のみなさんが私の物語に没頭していただけるのは幸せなことで、さらに読み終わっていただき、改めてマックス・ヴェーバーのこの言葉を思い出してもらえれば、さらに幸せです。リアリティを撃つ引き金を孕む作り話である物語を、これからも書いていければと願っています。中嶋雷太
 注記:「両手でそっと、銃を置く」ほか全三部作は、BCCKs(https://bccks.jp/bcck/171078/info)ほかAmazonやDMm等主要デジタル・ブック・ストアで購入できますので、ぜひお読みください。^_^

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