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私の好きな映画のシーン(31)『ローズマリーの赤ちゃん』

 前話の『死霊のはらわた』に続きホラー映画の話で恐縮です。
 今回は『ローズマリーの赤ちゃん』です。日本では1969年に公開されたので、小学生だった私は劇場では観ておらず、テレビ、そしてその後貸しビデオ屋さんで借りて観たはずです。しかも、その頃は画角が4:3でしたから、2000年代に入りデジタル・ハイビジョンの画角16:9で観るまでは、この作品の良さをしっかり理解してはいなかったように思います。
 見どころはたくさんありますが、私は、話の前半、地下室のラウンドリーのシーンがとても気に入っています。
 新しく入居した、ニューヨークの古いアパートメントという舞台装置の、しかも古びた地下室で、主人公のローズマリーは住人のテリーと出会い仲良くなります。すると、突然電球が割れ、ローズマリーは「この地下室嫌い」とこぼします。すると、テリーはお守りがあるからと、胸元にぶら下げたお守りをローズマリーに見せます。とても嫌な匂いがする薬草が入っているお守りで、ローズマリーは顔を顰めます。古いアパートメントの、さらに暗い地下室のこのシーンは、その後のストーリーを暗示させます。
 監督のロマン・ポランスキーは、『チャイナタウン』や『戦場のピアニスト』などを撮った監督ですが、彼のストーリー・テリングの、流れがありながらも重厚さを楽しめる作品の一つが本作です。
 そして、どこか不安気で線の細さが際立つローズマリー役のミア・ファーローの演技が、ポランスキー監督の流れるような重厚さに押し流され、漂う儚さが、本作のホラー性をさらに際立たせていると思います。暮れの騒がしい街から姿を隠し、年末年始に、もう一度、観てみようかと思っています。中嶋雷太

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