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絞扼性神経障害 entrapment neuropathy

参考文献
Entrapment Neuropathies:Challenging Common BeliefsWith Novel Evidence
J Orthop Sports Phys Ther 2018;48(2):58-62
ANNINA B. SCHMID

絞扼性神経障害とは、神経が筋、軟部組織、その他組織の絞扼(締め付け)を受けることで滑走性が障害され、痛みや痺れなどの症状、機能不全を起こす障害です。

症状はdermatome デルマトーム(皮膚節)などの解剖学的分布に基づくとされていますが、実際は患者さんの約2/3が相関しない症状を示します。

その原因としては、dermatome(皮膚節)の他にmyotome(筋節)やsclerotome(骨・骨膜節)がoverrapして存在していることが挙げられます。

ただし、手根管症候群の患者さんにみられるような、上肢近位の痛み(例えば肩から上腕にかけて痛むなど、障害を疑う部位とは離れた位置で起こるもの)は上記だけでは説明ができません。
そこでdorsal root ganglia(背根神経節)の存在が注目されています。
dorsal root gangliaには、元の損傷から離れた部位に由来する数千の細胞体が含まれているため、損傷により他の部位に関連した症状が出ることは説明がつきます。

まとめると、dermatomeに沿った症状がないからといって、絞扼性障害の可能性を除外することはできない ということです。

ここからは神経障害を鑑別するための評価の話をしていきます。
まず、神経の評価には、感覚、筋力、反射 といった理学的評価が欠かせません。
これらの評価を適切に行うことで、神経系の関与を評価することができます。
しかし、上記の評価は正常であるが、神経絞扼が存在する可能性があります。(手根管症候群患者の25%は正常と言われている)

そこでneuro dynamic test(神経力学的検査)が必要になってきます。
このテストは神経を伸張位にし、その際の可動域や症状を評価するものです。

例えば正中神経であれば、肩甲帯下制・後退、肩外転・外旋、肘伸展、前腕回外、手関節背屈、指伸展で伸張されます。

テスト陽性の定義としては、
1、患者の訴える症状が再現される
2、テストへの反応は、遠位の身体部位の動きによって変化する
3、健側と比較して可動性の制限がある

       (David S.Butler,バトラー・神経系モビライゼーション,p160)

個人的になるほどと思ったことは、可動性制限だけでなく、症状の再現があるということですね。
ちなみに2の例としては、SLRを調べる際に、頚部の屈曲を屈曲させる(神経が頭側に引っ張られる)と可動域が変化する。といったことが挙げられます。 

従来、brachial plexus tention test(腕神経叢伸張テスト)やupper limb tention
test(上肢神経伸張テスト)といった用語が使われてきましたが、これらの用語は神経障害が異常な張力によるものであることを示唆しています。
そのため最近では、
neuro dynamest や neural tissue provocation test(神経組織誘発テスト)といった用語が使われるようになってきており、神経の伸張のテストではなく、神経の感受性を調べるテストであるという考え方に変化してきています。ただしまだ一律には使用されておらず、医学分野では誤解を招いています。

また最近の研究では、『重度の神経障害があると、感受性の上昇の兆候を示す可能性が低い』といった報告もあり、テストが陰性だからといって神経障害がないとは言い切れないとしています。

つまり軽度〜中等度の障害があれば神経の感受性が高まり、neuro dynamicestが陽性になるが、重度であると逆に感受性が低くなりテストは陰性になるということです。…むずかしいですね。

あとは絞扼による末梢神経障害は中枢系のメカニズムにも関与していることに関心が高まっており、実際に絞扼性障害の患者は広範囲の痛覚過敏の兆候を示し、これらの所見は中枢性感作などの中枢性メカニズムを示唆しています。
末梢神経障害があればそれが中枢、脳に伝播し少なからず影響を与えているのには、なんとなくですが理解はできるのかと思います。

以上、むずかしい話でしたが、最後までみていただきありがとうございました。
コメントあれば下さい。もっと理解できるように頑張ります。



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