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Awich, 藤井風, WALLOWS, Charli XCX, Latto… | 新譜ピックアップ (2022.03)

2022年3月にリリースされたアルバムや楽曲から、おすすめ作品をピックアップしてご紹介します。

月次で記事を書いているので、過去分も読んでいただけると嬉しいです。前月分はこちら。

Awich - Queendom

各所のインタビューでも触れられておりますが、BAD HOPのYZERRの「姐さんならもっといけるっす」という言葉が背中を押したという今回のアルバム。

力強いリリックとキャラクター、そして姐御肌なイメージのあるAwich。しかし、これまでのディスコグラフィーを追っているリスナーなら、今作の全く違った空気感に一気に引き込まれるのではないでしょうか。

幕開けの「Queendom」では、彼女の強さ(ある種ボースティングに長けていたことを改めて感じます)が、"シーンを背負っていく"という確固たる覚悟に転換され、まるで戴冠式を迎える様にその一歩を飾ります。

三つ巴のマイクリレーが展開され、池田エライザも口ずさむほどの大ヒットとなった「GILA GILA」では、圧倒的なスキルでヘッズを黙らせます。
ダブルミーニングにドキッとする「口に出して」や、彼女の音楽の門戸を広げたようにも感じた「どれにしようかな」には、言いたいことを言う、好きなものを選ぶといった、自分らしさを表現することを称賛するメッセージ性を感じます。
と思えば、地元沖縄の仲間やクルーに対する愛情を忘れず、「Link Up」では東京のKEIJU、東海の¥ellow Bucksを迎え、全国の仲間とリンクしつつシーンを牽引していくという視野の広さもみせます。

その1曲1曲に、まるで女王が一箇所一箇所を統治していくような着実性と、"わたしが全方位面倒を見る"という責任感を感じました。

そしてラストには等身大の叫びが光る「44 Bars」。先日、武道館公演も成し遂げたAwich。女王の作るQueendomに、ヒップホップの新たなステージを託そうではないですか。

藤井風 - LOVE ALL SERVE ALL

武道館公演、日産スタジアムでの無観客ライブ、そして紅白歌合戦への出場と、怒涛の勢いでシーンでの存在感を強めている藤井風。

抜群の歌唱力と打って変わって、ゆるさのあるトークとキャラクターも人気の魅力でしょう。そんな彼のセカンドアルバムがリリースされました。

英語と日本語、そして愛嬌のある訛りを巧みに操る歌詞の豊かさに今回も驚きます。例えば「燃えよ」は鼓舞するような"燃えよ"という意味と、"もうええよ"がかかっており、「damn」では"damn damn"と"だんだん"といったように、二面性を感じる楽曲が目立ちました。

また秀逸なのは「まつり」で、KREVAが、G-FUNKの日本語的解釈と表現するサウンドもさることながら、今あるものを見つめ祝福し(ときに休むことも忘れず)、"苦しむことは何もない"と歌う慈愛に満ちた姿勢が感じられます。仏でしょうか。

全体を通して、後押しをするような姿勢と、いやでも無理はしなくても良い、という絶妙な力加減が心地が良いです。それが、無意味に脱力しているのではなく、生きていくときに時折経験しなければいけない困難を見越したような力の抜き加減。アルバムジャケットにも通じますが、人を包み込む温かさを感じるアルバムでした。

WALLOWS - Tell Me That It's Over

LAを拠点に活動する3人組。 幼馴染の3人が結成したということで、仲の良さが伺えるような明るいサウンドに胸が躍ります。フロントメンバーのディラン・ミネットはNetflixシリーズ「13の理由」に出演していることでも知られています。

リード曲の「I Don't  Want to Talk」はキャッチーなメロディとは裏腹、恋人が去ってしまう焦燥感が感じられる歌詞が響きます。アルバムのタイトルもこの曲から取られています。

ローファイ・ポップやダンス・ポップなどの要素を組み入れながら、若々しく爽快感のあるサウンドを紡いでいきます。それにしても、ハーモニカの音色が少し入るだけで一気に"青春感"が増すものだなあと思います。

the 1975や、HAIMにも通じる爽やかさを感じるバンドです。先日のCoachellaでのパフォーマンスに関しても中継で追っていましたが、ロケーションも相まって素晴らしかったです。

Charli XCX - CRASH

Charli XCXの創り出す音楽は、ポップミュージックでありながら、所謂マスに向けられたポップではなく、一段階上から発信されるような高尚さを感じさせます。

"悪魔と契約を交わしたポップスター"というアルバムコンセプトを語る彼女は、今作を最後にアトランティック・レコードからの離脱を表明しており、レーベルが思うヒットと彼女の思う音楽性にギャップがあったのか、などと何となく察します。しかし、前衛的なサウンドを響かせつつも数々のチャート上位に君臨する存在感には流石、彼女が紛うことなきポップスターであることを再認識させられます。

ニュー・ジャック・スウィングや80年代リバイバル、ハイパーポップ、エレクトロ・ポップと数々の要素を感じる楽曲に、"ポップ"にもこんなに解釈があったのかと驚くばかりです。

伸び伸びとしたフックが繰り返される「Lightning」が好みですが、ファン的に嬉しいのは「Beg For You」でのRINA SAWAYAMAとのコラボレーションでしょうか。

Latto & Mariah Carey - Big Energy Remix ft. DJ Khaled

Lattoがリリースしたアルバム『777』にも収録される「Big Energy」ですが、ここではリミックスバージョンを取り上げたいと思います。

説明不要かもしれませんが、この「Big Energy」はTom Tom Clubの「Genius Of Love」をサンプリングしており、同じ元ネタで大ヒットしたのがMariah Careyの「Fantasy」です。このリミックスバージョンでは「Fantasy」のメロディが挿入されており、先輩に対するリスペクトが感じられる共演となりました。

Lattoは元々"Mulatto"という名前で活動していましたが、黒人と白人の混血を意味する言葉に批判が集まり、現在の"Latto"に改名しています。同じく黒人と白人にルーツを持つMariahとは共感できる部分もあったようで、そういう視点でも興味深いコラボレーションです。

MariahのホイッスルボイスとDJ Khaledのネームタグが少々主張が過ぎるような気もしますが(笑)、アガること間違いなしのリミックスです。

その他の注目楽曲 / プレイリスト

その他、3月のおすすめ楽曲をまとめています。

ポップパンクの元祖アヴリル・ラヴィーンの新作には何年経ってもブレない音楽性を感じ、一方で現代の新たなスター、マシン・ガン・ケリーのアルバムにも注目が集まりました。またNIGOのリリースしたアルバムでは、豪華すぎる参加アーティストに驚きました。


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