刈谷という男

前回は一発目だったのでできるだけ早く書き上げようと思ったわけですが。

いやいや!
さすがの私もその日のうちにバトンが返されるとは思いませんでしたよ!
ポテンシャルが高いことは知ってるけど早すぎるて。赤い彗星やないか。

束子さんのチョコレートと恋のお話は、想像以上にドストレートな甘酸っぱい青春恋愛話だったので読んでいてときめきがとまりませんでした。可愛い、続きが読みたい、YOUたちはやく付き合っちゃいなよ。

それから自分の文章に感想を書いてくれるのもとても嬉しいんですよね。束子さんに感想もらうのほんとうに好き。すべて見抜かれていて笑ったけど。
感想を書くのも読解力と語彙力が必要なんだよなあ。日々勉強ですね。

さてさて、それでは今回のお話です。
お手柔らかにお願いします。

*****

「承認欲求みたいだよな」

 空を見上げながらそう呟く友人に「また始まったよ……」と思うほかなかった。
 年末、たまたまホームセンターで見かけた凧。なんとなくで購入してしまったそれを、なんとなく正月に「今日あげるべきじゃないのか?」と思いたった。だらだらと過ごしていたコタツから這い出し、適当に身なりを整え、いざ外に出ようとしてそこでやっと気づいたのだ。凧ってひとりであげられないじゃん。
 数名の友人にラインを送ってみたところ、帰省していたり予定が入っていたりで。「今? 別にいいけど」と返信がきたのがこいつだけだった。

 刈谷は変な奴だ。
 なにが変なのかと具体的に聞かれると困るけれど、なんとなくズレている。空気が読めないとまでは言わないけれど、その場に合わせることはあんまりないだろうなと思う。そしてフットワークは軽い、今日みたいに。

「……承認欲求ってなにが? 凧揚げが?」
「そう。正月って案外みんな凧あげるんだな」
「まあ確かに。思ってたより多かったよな」

 近所に広めの運動公園があったので、そこで直接待ち合わせることにした。案外、公園では家族連れが凧をあげていて驚いたけれど、そんなことより刈谷が下駄を履いてきたことのほうが衝撃だった。いや、下駄履いてくんなよ。凧揚げなめてんのか。

「凧あげるお前をずっと見てたんだけどさ」
「気持ち悪い言い方するなよ」
「なんか、ここにいる誰より高くあげたいんだろうなって。思ったより全力で走るし」
「…………」

 空高く舞い上がった凧は上空のいい軌道にのったらしい。たまにクイクイと引っ張りながら少しずつ糸をのばしていく。凧揚げに集中しているふうを装ってみたけれど、変なところで核心をついてくるから妙な気持になってるって、多分バレてるだろうな。俺、よく感情が顔に出るって周りから言われるし。
 ──いや、別に全力で走ってもよくねえ? あげるなら誰より高くあげたいじゃん。やるからにはなんだって全力のほうがいいだろ。

「……あっ!」

ぶつんと。
指の感覚が軽くなって、思わず声が出た。
糸のきれた凧があらぬ方向にとんでいく。

「おいおい、お前の承認欲求、暴走してるぞ」
「俺を現代病みたいに言ってんじゃねえよ、下駄野郎」

*****


テーマは『凧揚げ』でした。
今回めちゃくちゃなにを書くか悩んだ。
凧をあげずに会話劇だけで終わらせようかと思ったけれど、やっぱりちゃんとあげてみようと思って。凧。
書くまでとても悩んだけど、書いてる最中は楽しかったな。

では。
束子さんへの次のお題は
『今回の話に出てきた刈谷を出演させる』
です。
ちょい役でもがっつりでもなんでもオーケー。
束子さんには荒めのお題を投げてもなんとかしてくれると思っているので。
どうなるかな~。楽しみだな~。

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