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商業出版する方法#65〜「出版プロデューサー」という役割について元KADOKAWAの編集者は「こう」考える(1)

こんにちは。渡邉理香です。

今回の記事はある意味においては「タブー」、ある意味においては「リスク」ある意味においては「お役立ち」?に縦横変化していくような、読み手にとって賛否があったり、果てはアンチも出てくるかもしれない、と思っております。
だけど、自分の中でも一つ「整理」をしておかないといけないなーと考えているので、書かせていただきます。

今の私もそう名乗っていたりするものですが、、「出版プロデューサー」とか「出版のコンサルタント」って、結局何でしょうね?
このある種「不思議な」職種について考察してみるとします。

1)出版プロデューサーやコンサルタントはどのように生まれてきたのか?
KADOKAWA編集者時代、出版プロデューサーという人たちに抱くイメージがありました。それは

不思議な人たち

です。
はい!はっきりもうアウトプットしてしまいましたが(苦笑。

KADOKAWA時代、多くの企画書が持ち込まれる中「出版プロデューサー」と呼ばれる人からの持ち込み案件もありました。
で、これはあくまでも私の価値観でもあったりしますが、大体において出版プロデューサーへのイメージは「あまり芳しくない」というのが私個人の印象でした。

「なぜ、企画書を自分で直接送ってこないのだろう」

という率直な思いがまずありました。


でも、これはしょうがないことなのです。ビジネス書や実用書の世界では。
文芸の世界のように「作家になる」「本を出す」ための「登竜門」ともいうべき「ステップ」が見えない世界です。
文芸書はその点明確です。「賞(タイトル)を獲る」というのが、プロ作家への登竜門として長年歴史とシステムが整っていますから。

でもビジネス書や実用書の世界はそうではありません。素人が著者として出版社からの後押しのもと本を出したいと思っていても、「これをすればクリア!」「新人賞を取ることがまずが大事」みたいなわかりやすいゴールが存在していません。
だから、非常に出版までの手順が見えづらい、というのはあると思います。

ビジネス書や実用書の起源や走りはいろいろありますが、その業界の黎明期においては「士業」や「経営コンサルタント」「医者(などの専門性の高い職種)」の人たちが「名刺がわり」として本にする、という経緯があったことは見逃せません。
それが自費出版であれ、偶然出版社の協力を得て商業本として出したであれ、ある一つの現象がビジネス・実用書の世界を拡大させていきます。
つまり「売れる本が出てしまった!」「ベストセラーが登場してしまった!」ということです。
大作家でもない、賞も取っていない一ビジネスパーソンが自らのノウハウを一冊にまとめて世に登場させただけで、「異様なまでの需要」が高まって、大量に本としての商品を拡販させないと市場の要望に応えられない、ということがおこったわけです。

これはあるいみ「アメリカンドリーム」的な世界です。なんの賞も取っていない無名の一ビジネスパーソンが、一躍スターダムにのし上がっていくのですから。とても「夢」のあることなんですね。
本を出したり、それが売れたりすることで、集客しやすくなるわ、テレビや雑誌に引っ張りだこの「有名人」にもなるので、信頼性や権威性は増していく。
本が売れれば、次々と次作の依頼も舞い込み、途端に社会全体から知らない人から「先生」と呼ばれるようになっていく・・・。
ここに「ビジネス的な旨味」も感じるからこそ、今なお「本を出したい経営者」「いつか出版したいビジネスパーソン」は後を絶たないのでしょう。

しかし、いざ出版を考えようと思っても、先述したように「文芸書」と違って「ルート」が見えません。
新人賞もないし、何か「これをすれば本が出せる!」という明確な基準もあるようでない。
一つだけ確実なことがあります。
ビジネス書や実用書の世界で本を出すためには「出版社(編集者)に直接アプローチする」しかないのです。
でも、アプローチすると言ったって・・・って話になってくると思います。

「どうやってアプローチすればいいの?」

ということです。
ここで多くの人は「方法」を探し始めます。最近ではネットで何でも情報が落ちていますが、その昔は出版できるノウハウ情報はほぼ公開されていない・知られてないような状態。
おまけに編集者に直接アプローチするといったって、今の身の回りに簡単につながる人たちでないことが多いと思います(身近に編集者がいる人がいれば別ですが、そういう場合は希少ケース)。

そして生まれたのがこの「出版プロデューサー」「出版コンサルタント」というある種不思議なビジネスだと思います。

出版したいけど、どうすればいいのかわからない・・という業界初心者と、出版社(の編集者)を繋ぐ役目の人々です。


2)全ては本をだしたい!ピュアな欲望が成り立たせてきた仕事
ただ出版プロデューサーやコンサルタントも、最初からその仕事をやっていたわけではありません。
やはり「出版関係者」であることから、”需要が高まった”末に、こう名乗り行っているわけです。

主に「著者」であったり、出版社に勤めていたことがあったり、出版社に勤めても著者でもないけど「人脈ビジネス」のセンスを活かして行う人が多いです。

この中でも特に「著者」という人たちは、”出版したい人需要”の只中にいることが圧倒的です。
というのも自分が本を出すと必ず

「私も本を出したいのです。あなたはどうやって本を出したのですか?」

との声が100%投げかけられます。そしてその声は「どんどん集まってくる」。ビジネス書や実用書の著者は大体が「経営者」であり「ビジネスパーソン」なので、「じゃあ、そんなにたくさんの人が聞いてくるのであれば、有料でセミナーでもしよっか」ということになるわけ。
ここから「出版プロデューサー」「コンサルタント」としての「仕事」が立ち上がっていったと想定されます。

んで持って、そういう人たちはまたもや「需要」に応える形で、セミナーだけでなく、いつしか「塾」という商材を開発・開催し、ビジネス講座として事業化していきます。
最初は先生対生徒、ということで自らの出版できた経緯を踏まえたノウハウを教えるんだけど、そこでまた出てくる「需要」があります。

「先生はいろんな出版社から本を出されているようですが・・編集者さんを紹介していただけませんでしょうか。お金は別途払いますので・・」

って感じです。
こうして、直接的に出版希望者と出版社(の編集者)を「繋ぐ」ような「仕事」も発生・・・。

こうして、出版プロデューサーや出版コンサルタント、という職種が確立してきたのだと私の経験と出版界の推移を鑑みて推察&考察します。

出版プロデューサーもコンサルタントも全て「需要」から生まれたビジネスです。ということは、いかにそれだけ「本を出したい!」と思う方が世の中にゴマンといるか・・というのがお分かりでしょう。

出したい・書きたい・本としてまとめてみたい、売ってみたい、多くの人に購読してもらいたい・・・!そうした人間のピュアな欲望が生み出してきた仕事といっても過言ではないわけです。

その意味でも「不思議な」とは表現したものの、ある意味においてやはり世に出るべくして出てきた仕事でもあるわけなんですよね(って、改めて私自身も確信するのです)。


3)出版社が冷淡なメーカー企業であるから、必要な立ち位置として存在している!?
さて、最初の方で私は「本を出したい・アプローチしたいなら出版社に直接企画書でも送って来ればいいのにな」といったことを書きました。
でもよくよく考えれば、出版社って「持ち込み原稿を心からウェルカムで受け入れてない」というのが原則としてあります。

商業出版は、著者になりたい人が書きたい!という本ではなく、出版社というメーカーに勤務する編集者が「売れる出版企画」を立てて、本という商品にしていく、のが基本原則です。

なので7割以上の出版社が、原則「出版企画ウェルカム!!」「あなたの原稿が本になりますよ」なんてうたっていないし、そんなに世の中からも出版の企画や原稿なんか求めていません。著者になってもらう人もベースは出版社の編集者が「選択」「指名」「依頼」していくものです。
よって、出版社は「表向きは」持ち込み原稿を断る会社も多いのです。

そんな「門戸の狭い」業界でもあり、世界でもあるからこそ、余計に「何が何だかわからない」感覚になる。
であれば、その業界事情を知りつつ、適切に「ナビゲート」してくれる人がいたらそういう人に事情を聞いてみたい、一緒に出版活動をしてほしい、お願いしたい!ということになるでしょう。

ここでも繰り返すことになりますが、結果的に「需要」が出版プロデューサーやコンサルタントという仕事を生み出す基盤となっているのですよね。だから不思議だろうが何だろうが、今の世の中に「在るのが当たり前」なビジネスではないかと思うわけです。

ということで、ちょっと「さわり」になりますが、書き記してみました。この話をし始めると深いので、また引き続き「考察」していくこととします。

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