Daiki Nakamura

宮崎大学教育学部講師。専門は科学教育、理科教育、教育心理学。教育の理論と実践をつなぐこ…

Daiki Nakamura

宮崎大学教育学部講師。専門は科学教育、理科教育、教育心理学。教育の理論と実践をつなぐことを目指しています。noteはアウトリーチ活動の場として利用しています。URL:https://researchmap.jp/daikin

マガジン

  • 理科教育の理論&実践

    理科教育の理論と実践をつなぐ記事です。研究の最前線の話や、授業のアイデアの話を紹介します。

  • 理科教育・科学教育の読書会

    • 17本

    理科教育・科学教育に関する本の読書会をオンラインで行い、本の内容と議論したことを記事にまとめていきます。Science Education Book Club in Japan の活動の記録です。 Twitter: https://twitter.com/ScienceEducat10

  • ReproducibiliTea Tokyo

    • 7本

    近年話題の科学における信頼性革命 (再現可能性危機) に関する話題を、心理学を中心に紹介していきます。https://twitter.com/repTeaTokyo

  • 研究方法論の話

    教科教育に関する研究の方法論について

最近の記事

科学教育の歴史的変遷と現代的課題

この記事では、過去100年間で科学教育の目標や教授方略がどのように変化してきたかを整理した上で、これからの時代の科学教育に何が求められるかを検討します。科学教育 Advent Calendar 2023 の22日目の記事です。 科学教育の目標の変化科学教育が重要であるという主張には多くの人が同意しますが、その目標は今も昔も変わらないのでしょうか?100年前と現在とで科学教育は同じ方向を目指しているのでしょうか?科学教育の歴史を振り返ると、決してそんなことは無いことが分かりま

    • 科学教育におけるコンピテンシー概念の定義に向けて

      本記事は、オンライン読書会(@ScienceEducat10)での発表と、参加者による議論をまとめたものです。理科教育 Advent Calendar 2022 の 2日目の記事を兼ねています。 この記事では、経済分野で登場したコンピテンシー概念が教育分野に導入された過程を整理した上で、科学教育におけるコンピテンシーとは何かについて考える基盤を示しています。 社会の変化とコンピテンシー概念の登場社会状況の変化と新しい能力観の必要性 現代社会では、科学技術の進歩やテクノロジ

      • 科学の性質を教える理科授業

        本記事は、オンライン読書会で読んだ本の内容と、参加者による議論をまとめたものです。理科教育 Advent Calendar 2021 の 18日目の記事を兼ねています。 今回、私が担当したのは Chapter. 4「Nature of Science and Classroom Practice」です。この章では、科学の性質を理科教育でどのように指導するかについてまとめられています。 科学の性質を理解することの重要性科学の性質(Nature of Science, NOS)

        • 非認知能力とGritは本当に有効か?

          この記事は、慶應義塾・社会学研究科の開講科目「社会心理学特論 I :心理学方法論の新展開」での課題活動と、ReproducibiliTea Tokyo の活動の一環として、まとめられたものです。ReproducibiliTea は、信頼できる科学を目指す、国際的な草の根ジャーナルクラブ活動で、Tokyo は文字通り、その東京バージョンです。各記事の対象論文の選定ならびに記事内容には、執筆者を含む参加メンバー全員の意見が反映されています。記事についてのご質問・ご意見等は、rep

        科学教育の歴史的変遷と現代的課題

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          7本
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          3本

        記事

          TIMSS2019の結果を見てみよう:中学校理科編

          前回に引き続き、この記事では、2019年に実施された国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)の中学校理科の結果をもとに、国際的な傾向を整理します。内容の大部分は、TIMSS 2019 Highlights(英語)を整理 したものですので、時間のある方はそちらも併せてご覧ください。TIMSSの概要や小学校理科の結果などは前回の記事をご覧ください。 ※この記事は、理科教育 Advent Calendar 2020の11日目の記事を兼ねています。 得点の結果中学校理科の得

          TIMSS2019の結果を見てみよう:中学校理科編

          TIMSS2019の結果を見てみよう:小学校理科編

          国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)とは、国際教育到達度評価学会(IEA)が実施する国際教育調査です。TIMSSでは、小学校4年生と中学校2年生を対象に、算数(数学)と理科の教育到達度を4年おきに調査しています。PISA調査が現実世界での課題に対応する問題解決の力を測るものであるのに対して、TIMSS調査は基礎的な学習内容の定着を図るものです(個人の見解です)。この記事では、2019年に実施されたTIMSS2019の小学校理科の結果をもとに、国際的な傾向を整理します。内容

          TIMSS2019の結果を見てみよう:小学校理科編

          探究に基づく科学教育

          本記事は、オンライン読書会で読んだ本の内容と、参加者による議論をまとめたものです。理科教育 Advent Calendar 2020の4日目の記事を兼ねています。 今回,私が担当したのはChapter. 19「Inquiry-Based Science Education」です。この章では、探究に基づく科学教育についてまとめられています。 能動的な学びに向けた教育改革の歴史 自然科学(Science)は、科学者が科学的手法を用いながら主体的に進めるものです。それに対して、学

          探究に基づく科学教育

          理科における科学的推論の課題とメタ認知

          本記事は オンライン読書会で読んだ本の内容と、参加者による議論をまとめたものです。理科教育 Advent Calendar 2020の5日目の記事を兼ねています。 今回,私が担当したのはChapter. 8「Scientific Reasoning During Inquiry: Teaching for Metacognition」です。この章では、学習者が探究を行う際に直面する科学的推論の課題についてまとめられています。 科学的探究と科学的推論科学者が科学的な手続きを通

          理科における科学的推論の課題とメタ認知

          社会情勢の変化と科学教育改革の歴史

          本記事は Science Education Book Club in Japan の活動の一環として、オンライン読書会で読んだ本の内容と、参加者による議論をまとめたものです。今回,私が担当したのは「Values in Science Education : The Shifting Sands」という本のChapter.11「Intended, Achieved and Unachieved Values of Science Education: A Historical

          社会情勢の変化と科学教育改革の歴史

          移ろいゆく科学教育の価値観

          本記事は Science Education Book Club in Japan の活動の一環として、オンライン読書会で読んだ本の内容と、参加者による議論をまとめたものです。2020年の1冊目の本は ”Values in Science Education: The Shifting Sands” を読み進めています。 今回は、以前に出版された書籍と本書の「The Shifting Sands of Values in Science Education. An Intr

          移ろいゆく科学教育の価値観

          Welcome to Science Education Book Club in Japan!

          Science Education Book Club in Japan は、理科教育・科学教育に関する本のオンライン読書会です。 新型コロナウイルスの流行により、どこかに集まって対面で議論することが難しい状況にあります。そこで、Zoomなどのアプリケーションを利用してオンラインで集まることで、学びを止めずに継続できるのではないかと考え、このような読書会を企画するに至りました。オンライン読書会は、ポストコロナ時代の新しい学びの形です。 現在、メンバーには大学教員、大学院生

          Welcome to Science Education Book Club in Japan!

          教育学分野における再現性の話

          この記事は、Open and Reproducible Science Advent Calendar 2019 の14日目の記事です。 これまでのアドベントカレンダーの記事では、主に心理学における再現性の話が展開されていたかと思います。しかしながら、再現性の問題は心理学に限った話ではありません。そこで、この記事では私の専門の教育学分野(特に教科教育)で再現性問題にどう向き合うかという話を書かせていただきたいと思います。そこには、心理学と共通した問題に加えて、教育学分野独自

          教育学分野における再現性の話

          条件制御能力を育てる方法

          この記事は、理科教育 Advent Calendar 2019の10日目の記事です。 今回は、条件制御能力を育てるのに有効な指導方法は何か?ということについて、エビデンスを示しながら、お話したいと思います。 条件制御能力とは科学においては、何かしらの仮説を検証する際には、実験を行います。  その際、実験結果から妥当な考察を行うには、実験が、別の因果効果や相互作用を排除できるように設計されていることが前提になります。つまり、影響を検討する1つの変数以外は、一定に保つ必要があ

          条件制御能力を育てる方法

          理科におけるICT活用の効果

          この記事は、理科教育 Advent Calendar 2019の4日目の記事です。 今回は、理科でICTを活用するのってどれくらい効果あるの?ということについて、エビデンスを示しながら、お話したいと思います。 ICTに囲まれた社会いきなりですが、クイズです。この写真に写っているのは、何の機械でしょうか? これは、去年の夏に富士山の登山口で見つけたもので、登山口を通過した人を検出し、人数を自動送信するものです。 このように、私たちの社会では、ICT(Informatio

          理科におけるICT活用の効果

          理科の見方・考え方を働かせて資質・能力を育成する手立て

          理科の見方・考え方 平成29年版小学校学習指導要領解説理科編においては、理科の目標として、児童が「理科の見方・考え方」を働かせて、観察・実験に取り組むことで、資質・能力を育成していくことが示されています(文部科学省,2018)。 このうち、「見方」とは、自然の事物・現象を捉える視点であるとされ、理科の四領域それぞれに特徴的な見方が整理されています。例えば、地球領域では、「時間的・空間的な視点で捉えること」が、見方として示されています。 一方、「考え方」とは、児童が問題解決

          理科の見方・考え方を働かせて資質・能力を育成する手立て

          理科における仮説設定とは何か

          理科の授業では、問題解決の流れに沿って授業を進めることが多いです。 問題解決の流れとは、大まかに書くと 問題設定→仮説設定→実験計画→実験(観察)→結果の処理→考察→結論 というものです。 この内、今回は2番目の仮説設定に注目します。 仮説とは何か 仮説設定とは何かという問いはシンプルですがとても難しいです。 というのも、研究者によって仮説とは何かという考えが違うからです。 理科教育の世界でも同様で、定義が混乱しています。 そこで私は、過去100年の本や論文から、「仮

          理科における仮説設定とは何か