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あっこちゃんと珍道中 ⑥ロンドン塔周辺

あっこちゃんとの旅行。なんだか懐かしくなって、写真がないか探してみた。なかった。残念。もう、わたしの記憶力に頼るしかない。

当時はまだデジカメが一般的には普及していなくて、フィルムのコンパクトカメラが大活躍していた。たしか日本からFUJIFILMを10本くらい持って行き、ロンドンでコダックを買い足しながら歩いたと思う。そんな写真を先日まで置いていたのに、いつのまにか捨ててしまったか、どこかへやってしまった。仕方ない。思い出せることだけ書こう。

あっこちゃんが「今日は別行動しない?」と言った。わたしは「やっぱり初めて来たんだから、ビッグベンは見とかないとなー、ついでにロンドンブリッジも見てみるかー」と、軽い気持ちで出かけた。言葉は話せなくても、アルファベットは読める。地図もあるし、戻ってくるだけのお金も持っている。それだけで、一人で出歩けた。当時は勇気があったなと思う。

ビッグベンは今思い起こしても記憶に残っていない。見たことは見た、というくらいだ。ロンドンブリッジも、でかい、と思ったくらいで、歴史にも疎いわたしは、その価値があまりよくわかっていなかった。申し訳ない。

イギリスでは、横断歩道のないところでも渡って平気と聞いていたので(情報の出どころが全くもって怪しいが)、わたしは左右を確かめて、ロンドンブリッジの手前の道を横断した。そこへすごいスピードでやってきたバイクの人から、「ごぅるあ〜〜〜〜〜〜!」みたいな感じで怒鳴られた。「あぶないじゃねーか!たいがいにしろよ!コノヤロー!」くらいのことを言われたかもしれないが、その人は怒号のドップラー効果を実現しながら、その場をあっという間に去ってしまい、わたしはその後ろ姿に「ごめんなさーい!!!」と叫んだ。それ以来、わたしは国内外を問わず信号を守り、必ず横断歩道を渡る。

ロンドン塔にも行った。観光地なので人が多い。入場券売り場に並んでいると、「はい次!」みたいに愛想のない感じで呼ばれた。わたしは「大人一枚お願いします」と言い、明示してある通りの料金も払った。受付のおばさんは表情一つ変えずに無言でチケットをスッと出した。わたしはチケットを受け取り、建物の中に入った。

「怖い」と感じた。暗さに目が慣れず、古びた調度品や石積みの壁、重い鎖の下がった部屋など、ひんやりとした空気も薄気味悪かった。ダンジョンみたいな廊下を行ったり来たりしたのだが、不思議なことに、外で見たほどは、人がいなかった。一番暗い廊下を渡るとき、わたし以外に人がいなくて、本当に怖かった。明るい場所に出てみると全く感じない何かが、そこにはあった。

日本に戻って、チケットをよく見た。なんと「child」と刻印してあった。大人料金を払って、子どものチケット?てことは、差額はあのおばさんのポケットに?それともわたしの記憶違いで、見た目で子どもと判断されて、おばさんは子ども料金だけ受け取った?

今となっては確かめようがない。

(つづく)

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