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サッカー×データサイエンス G大阪VSFC東京


始めに

サッカー×データサイエンスを勉強中のナオキです。R言語やPythonに苦戦中のこの頃ですが地道に勉強しています。

前回はこんな記事を書いていて今回もその続きって感じ。

やりたいことはデータを自身で集めてまとめて解析するってことで、一番の研究のモチベーションはトランジションの局面を(ボールが一方のチームからもう一方のチームに移る瞬間)でのプレーや選手の配置、体の向きなどから評価することである。

具体的にはトランジションからの攻撃や組み立て、守備の原則を探りつつ、ある局面でのトランジションの振る舞いを評価するのが目標となっている。

今回はG大阪VSFC東京

今回とったデータ

計測したデータは2種類で前回と同じ

1 「デュエル付きでの一方のチームからもう一方にボールが移り変わることのエリア、その後のプレー選択」

2 「競合い後のセカンドボールの奪取エリアとその後のプレー選択」

1については基本的にはデュエル付きのもののみを数えており、ボール奪取やパスカット(インターセプト)などが例である。外に出てボールが移り変わったり、相手のクリアボールをフリーで受け取るなどは計測していない。

「移り変わる」の定義はボールを得た選手がボールを操作下にあり次のプレーに移行できているかどうかで判断した。パスに対して足を出して当たりどこかへいくようなプレーはカウントしていない。あくまで次のプレーへの移行していることが条件である。

2についてはセカンドボール奪取後の振る舞いを見るために計測した。

いわゆるこぼれ球への反応がポイント。ただこぼれ球と言っても相手に当たってのこぼれ球(例えばシュートブロック)やCKなどのこぼれ球は今回除外している。競合いなしでヘディングもパスと見なしている。基本はロングボールへの競合い後のセカンド奪取がメイン。

その後のプレー選択は主に以下の4種で分類

ボール保持 奪取後にボールを下げたり横パスをしていること。速攻の意思を示さずボールを落ち着かせている場合

速攻 奪取後の素早い攻撃を示す。奪取後ドリブルで前進したり目安ではあるが奪取後3本以内に縦パスは速攻に分類した。斜めのパスについてはその後のプレーを見て分類している。

クリア ボールを大きく前に蹴り出す行為。蹴る瞬間の顔の上げ方や前線の選手の位置から速攻とクリアを分けている。

ロスト 奪取者がそのまま奪い返されること、奪取後繋いだ後に失ったものは基本カウントしない。あくまで奪取者のプレーだけで判断した。

データの分析と解析

ここからは結果パート、まずは前半の両チームに振る舞いについて見ていく。以下のマップでは(横、縦)の座標で表記する。左上を原点(1.1)とし横は1〜5、縦は1〜6で表す。

前半

まずは前半におけるエリア別のG大阪のボール奪取とセカンド奪取について。1つのイベントに対して位置、時間、選手(背番号)、その後のプレーをまとめた。

大まかな傾向としてはボール奪取は低い位置が多く、セカンド奪取は前方が多い。

ボール奪取後の振る舞いを見ていくと基本的にはボール保持することが多かったG大阪、前方(ハーフラインより前)ではそもそもボールをほとんど奪うことができていなかった。これはガンバ大阪がそこまでプレスをかけなかったことと、FC東京のゲームプランの1つとして低い位置でボールを失わないようにはっきりプレーするということが原因として考えられる。

続いてFC東京

FC東京の方もG大阪と同じような振る舞いをしており、ボール奪取は後方でセカンド奪取は前方の方が多い結果となった。

この結果はこの試合のボール支配率(ガンバ大阪63%:FC東京37%)と合わせて考えるとG大阪が低い位置でボールを保持していることがわかる。

両チームがリスクを追いすぎずに前線にロングボールを送りこむことが多かったのだろうと推測される。FC東京も前線からプレスをかけなかったことも理由であろう。

後半

G大阪がボールを奪うことが増えた後半は比較的高い位置でもボールを奪えているが、前方で奪ってからの速攻は1回のみとなっている。

続いてFC東京の後半。

G大阪に比べて奪取後の速攻に移ることが多い。割と低い位置からでも速攻に移行しており、後方の2ブロックでは奪取後全てボール保持に移行したG大阪とは対照的である。

イベント別のプレー選択

G大阪

FC東京

この表はイベント後のプレー選択を集計したもので、これらからチームが志向するサッカーが見えてくるのではないかと期待している。

まず特徴的なのはFC東京の速攻の比率の高さである。

試合を見ていくと久保がドリブルで前に行ったり、シンプルに永井やオリベイラを走らせる形が多いのだが、奪ってからシンプルに前に攻めていくことを志向していることが定量的にわかる。

ガンバ大阪はFC東京に比べて奪取後の保持の割合が大きい。これはFC東京がボールの失い方にかなり神経を使っていることや、低い位置でマイボールになるか五分五分ぐらいになった時は蹴っ飛ばすことが多かったことを考えると納得が行く。FC東京の振る舞いからガンバの速攻が封じられていたと考えていいだろう。

ボール奪取での各トランジションの詳細

ここではピックアップしたトランジションを詳細に見ていく。

検討するのは

①相手のどのラインを置き去りにしたのか

②何人を置き去りにしたのか

③争った時のボールより前方での人数比

④奪った瞬間の選手の体の向き

まずはG大阪の前方でのボール奪取から見ていく。

黒い丸はこの場面でのトランジションに関与している選手である。


こちらは9分の場面。久保にボールを奪われた後にアデミウソンが奪い返しシュートまで繋げた。この時①は相手の1列目②2人③2:6陣形はやや崩れている④では図のようになっておりこの後素早く遠藤とアデミウソンが反転し攻撃に移ってシュートまで行くことに成功。

続いて35分の場面。アデミウソンからボールを奪った高萩から遠藤が再度奪った形。①相手の中盤ライン②3人③遠藤を含めてガンバ2人対FC東京3人FC東京のDFの陣形はやや崩れている。④高萩は転倒しており小川橋本も後ろ向き、しかしチャンと森重は前方を向いているのでここで再度ボールの奪回に成功するFC東京。

この時にFC東京は遠藤から奪取後すぐにクリアするのだが、他の場面でもこのようなスクランブルな状況でFC東京はボール保持に移行せずクリア(蹴っ飛ばす)ことが多く、繰り返しになるがFC東京のトランジションからやらせないという姿勢が見える。

永井が奪取したボールを小野瀬が後ろから奪取。①についてはラインは超えておらず②も0人③も中はアデミウソンしかPAにはおらず④についてもFC東京の向きは悪くはない。ここから上手く前を向いてCKを得た小野瀬はなかなかいいプレーだったと考えられる。

(45:32)のプレーはミスでのロストなので割愛。

(48:31)オジェソクが後ろ向きに奪取。①はラインを超えておらず②も0人である。③も3:5とG大阪が不利である。このケースではボールを割ったかどうか微妙な判定になり橋本と久保の動きが止まったため速攻に移ることができたのでやや例外かもしれない。

(49:48)での遠藤の奪取。FC東京がセカンドを拾ってから高萩に渡し攻撃に移行しようとしたのを遠藤が阻止。①は中盤のライン②1人③は3:5かつFC東京の陣形は崩れていない。④後ろ向きで奪ったためガンバの選手も後ろ向きの選手が多くFC東京の選手の向きは悪くはない。

このトランジションからもわかるのはFC東京の比カウンターへの備えである。CHも片方が上がればもう片方は上がらず、攻撃自体が前線の4人で完結するゲームプランであり奪われても後ろに人が残っているのでカウンターを受けにくくなっている。

ガンバの速攻に移行するトリガーとしては、相手を何人置き去りにしたかとどの列を置き去りにしているかがまず考えられそうである。特に前線二人プラスSH(もしくはCHの一人で)の4人を置き去りにできると速攻に移ることが多いことがわかる。列で言うとFC東京の中盤ラインを奪う瞬間に超えると速攻に移りやすくなる。

ガンバがボール保持に移行するトリガーは2つある。

1 ボールを奪取してもFC東京の2トップ(たまにSH1人)しか超えていなかったケース(60:55),(69:59),(74:33)。この時FC東京は4ー4(3)のブロックを組めており速攻に移ることができない。

2 ロスト後のプレスが早いケース。(52:38),(81:40),(86:21)この時は前線にボールが出せず横パスや下げることになる。FC東京の選手もまず縦に出させない寄せ方をしていた。

このことからもガンバはロングボールや奪取後の速攻を狙いに対してFC東京がそれを上手く塞いでいたのがわかる。

面白かったのは(73:36)のシーン。今野が久保へのパスをカットした場面。①1列目+両SHで②4人③倉田と小野瀬は戻りながらであるが実質6対6しかし④向きはFC東京の方が良い。

条件的にはカウンターに移れそうではあるが、、、

今野の判断が一瞬遅れたすきに久保が小野瀬の方まで先回りし速攻を遅らせる。久保のセンスが光る好プレーであった。

最後にFC東京についてボール奪取後の速攻に焦点を当てて見ていく。

前半の奪取MAPから見ていくと速攻4回の内3回{(21:40),(28:18),(40:57)}が久保絡みであった。奪取後久保に預けそこからのドリブルでの速攻を狙う。

あとは簡単にオリベイラに蹴っ飛ばし永井が拾う形は定番のパターン。永井はセカンドを拾う能力に長け攻撃を進めていた。

感想

なかなか統計分析まで辿りつけないなと言う印象。

大分戦で見せたようなロングボールを多く使う戦術もいいが、本試合のようにボールを保持しても攻めることもある程度できる印象のG大阪である。

特にミドルゾーンではよくボールを奪えていたしそこからの再攻撃もできていた印象。

分析トータルではもう少し仮説を持ってからデータを見ていくことが大切な気がしている。

感想、意見があればよろしくお願いします。



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