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『飛込み営業の極意⑥』相槌の不思議なパワー

人が会話をしているのを見ていると、みなさん必ず相槌を打ちながら話をしています。

この記事では、会話の中で相槌がどれ程の効果をもたらすのかをお話します。

【1】相槌が持つ不思議なパワー

みなさんは、普段の会話の中で無意識に相槌(あいづち)を打ちながらお話しているはずです。

友人・知人などと会話をしている時など特にそうでしょう。
たとえば「そう、そう、それ!」とか、「あ、それ分かる気がする」とか…。

例えば、他にはどんな相槌の仕方があるでしょうか?
みなさんも、ちょっと考えてみてください。

例えば、こんな感じはどうでしょうか。

「あ、なるほど!」
「わ、すごいですね~!」
「あ~!あれですか~!」
「はい!みなさんよくそうおっしゃいます!」
「あ、だからですか!」
「分かります!分かります!」
「まったく同感ですね。」
「ほんと、そうですよね~!」
「あ、そうだと思いました。」
「あ、そうなんですか!?」
「あ、だからですね。」
「あ、やっぱりそうだったんですか。」
「それで、その後どうされたんですか?」(~からの切り返し)
「ということは~されたんですね?」(~からの切り返し)

わたしが営業で使った相槌はこんな感じですが、みなさんならどうですか?

営業的には、これに「オウム返し」をミックスしてアレンジするわけです。

例えば、こんな感じです。

お客様:
「実は、こないだ○○しちゃってね~。」
 ↓
営業マン:
「あっ!○○されたんですか!?」(オウム返し)
「そうなりますよね~。」(相槌)
「で、その後どうなったんですか!?」(~からの切り返し)

という感じです。

頭に「あ、」とか「わ、」とか「えっ!」とかが付くのは、会話にインパクトを付けるためです。
尚かつ「あ、」のところで「顔つき」「身体の動き」をシンクロさせればさらに効果があります。

つまり、こちらはその話にちょっと驚いています、興味ありますよ、という意思表示です。

言葉にインパクトが付き、こちらの存在そのものが相手の脳に届きやすくなります。

相槌のうまい人と話をしていると、後になって思い返すと「なんであんな事までしゃべっちゃったのかなぁ・・・」、ていうことになります。

それが相槌のもつ不思議なパワーです。

【2】人は自分を理解して欲しいもの

人は自分のことを理解して欲しいし、認めてもらいたい欲求が強い生き物です。これは、あなたにも思い当たる節がありませんか?

例えば、会社の会議の席で自分の意見に対するストレートな反論には、ついむきになってこっちも反論してしまうことがありますよね。

ところが、「うん、君の○○という考え方も確かに分かるよ。ただ、××という風にも考えられないかな?」と言われたとしたら、反論しにくくなります。

それは、いったんは自分の意見を認めてもらったからです。
いったん同意しておいて「しかし、こうとも言えますよね」という、営業トークで言うところの「切り返し」(応酬話法)の基本です。

人間は同意してもらえると、嬉しくなって続きをしゃべりたくなる傾向にあります。

経営者様は、普段は責任の重圧で結構孤独なものです。
特に中小企業の経営者様は、たたき上げの苦労人が多いので、こちらが一生懸命お話を聞かせて頂くと、昔を思い出されて予想以上に饒舌になられることも多いです。

本気で相手のお話しを聞いていると、話の内容に入り込んでしまうことも少なくありません 笑

しかし、会話をしていると、ある時点で「ところで、あんたの会社のその製品いくら位になるの?」と言われる様になります。これは会話の中で相手の心が開きだしている証拠です。

つまり、

営業マン:
本気モードで相手の話を聞いている(売りが消えている) 
  ↓
お客様:
「なかなか人間が良さそうな奴だな…」(自分の話を聞いてもらって欲求が解消されている)「前々から考えていたし、話ぐらいなら一度聞いてみるか…」(心が開き出す)

という流れでしょうか。

どうですか?もし自分が相手の立場だったら、どうして欲しいかを考えてみてください。

【3】受け入れる力

相槌は言わば相手を「受け入れる」ことにつなりがりますが、「受け入れ」でひとつ思い出した実例があります。

あれは、わたしがまだ新人の頃の小雨の降るある日のことです。
とあるテナントビルに飛び込んだ時の話です。

1階にオーナー様の事務所がありました。
扉を開け中に入ると、運よく事務所にはご主人様と奥様がおられました。

建物の外壁の劣化はひどく、まずそれをお伝えしました。
すると、そのご主人様が、こう言われたんです。

「よくそうやって営業さんが来るんだよね。」
「でも、・・・、」
「あんただったら、いきなり来て言われて信用できるかい?」

なかなか、きつい切り返しですが、その時わたしの口をついた言葉は、

「いや、信用出来ないですね。」 苦笑

迷わずに言いました。弁解はしませんでした。 笑

するとご主人様は「そうだろ~?」(してやったり気分)

そしてわたしは、
「それは、ご主人さんのおっしゃる通りです。」
「わたしも信用しないと思います。」
尚も言っちゃいました。 笑

「ただ、ご主人、あの状態を放っておかれるのがマズイことだけは事実です。」と真顔でご主人様の目を見てきっぱりと言い切りました。
わたしにもプロとしてのプライドがありますので。

すると、ご主人様がちょっと困ったような、覚悟したような顔つきをされたその瞬間、すかさずわたしは、「ご主人、ちょっといいですか?実際にご覧になってください。」と、表に連れ出しました。(この間髪入れない「間」が命です。)

外は小雨、わたしはご主人様に傘を差しかけ建物の説明をしようとしましたが、それより先に、ご主人様は塀にしがみつき壁を触り建物の状態を雨に濡れながら確認されました。

「確かに悪いね。」ご主人様は、私が具体的に指摘した点を直接確認されました。

「ちょっと、こっちも見てくれないかな」と、わたしを誘導されて建物を連れ回す形になり最後は屋上にまで上がりました。

結局、このテナントビルの外回りの工事をすべてを任せて頂きました。
全部で500万円の工事になりました。

この実例の中の「受け入れ」「言い切り」は、わたしがやってきた営業では非常に大事なポイントです。

言葉のテクニックを駆使したわけではありません。ただ、人間の心理を突いただけです。

つまり、「同調」している訳なんですけれど、そこで相手の欲求をいったんは満たしているわけです。

だから、こちらの言い分も受け入れてくれたんだと思います。それと大事なことは、相手の断りに負けないその上を行く覚悟プライドです。

注意して欲しいのは「お金がない」に同調しないことです。 笑
これは、だいたい挨拶みたいなところがありますから。
無視するのではなく、さらりと受け流してください。

【4】クレーム処理にみる「受け入れ」の不思議

営業をやっていると多かれ少なかれ「クレーム」に出くわします。
電話があって客宅に向かいながらどうやって相手の怒りを鎮めようかと考えを巡らせたりします。

久しぶりに客宅を訪問した時に、前振りなしにいきなり雷を落とされて面食らうこともあります。

ここで、大前提としては、電話があった場合は出来る限り早く客宅へ伺うこと。遅くなれば遅くなる程お客様の怒りや不満は増幅します。

わたしも、「クレーム経験」はありますが、実際のところ、相手がクレーマーでなければお客様はかなり本気モードで不満が溜まっている状態のはずです

ここでも基本は同じなんです。まず大事なことは腹を据えて、こちら側がじたばたしないことです。そして、相手の不満をひたすら聞いてあげることです。(受け入れること)

注意しなければいけないことは、相手が不満を吐ききるまで弁解しないことです。それと、ここでも「オオム返し」「相槌」で相手の不満を出し切ることです。

そうすると益々不満が出てきますが、そこでビビってはだめです。ウミは全部出し切らないと相手の心にもやもやしたシコリが残ります。

一つ一つ「オウム返し」で確認しながら、真剣な厳しい顔つきをで「受け入れる」わけです。申し訳なさそうに、尚かつ厳しい気持ちで受け止めてますというボディーランゲージです。

しかし、自分の会社のミスではない箇所については、安易に謝らないことも大事です。その部分は、謝らずに黙って受けるだけにします。

これは人間の心理で、お客様は自分の言っていることを営業マンに理解してほしいという欲求がまずあるわけです。

そして、お客様の話を一生懸命お聞きしていると「この営業マンはわたしの言っている内容を理解してくれている。」という気持ちがお客様の中に無意識に働いてきます。

そうすると、見ていると分かりますが、だんだんとお客様の気持ちが落ち着いてきます。そして、全部出し切ったなと判断したら、まず改めて謝るべきところは誠心誠意謝る事です。

その後に、一つ一つ相手が言ったことを確認するかのようにお互いに話を整理し説明していきます。相手はさらに落ち着いてきます。

次に、自分の所見を述べます。ただし言い訳ばかりしないことです。
会社に不利益なことは絶対言わないことも大切ですが、言い訳しか言わない営業マンからは、もう物は買ってくれないでしょう。

逆に「クレーム」はお客様といっそう仲良くなるチャンスでもあります。
わたしは、「クレーム」の時こそ相手の気持ちになり、追加注文のお話になったりしました。

怒られに行っているのに追加注文はおかしな話と思われる方がいるかと思いますが、相手の気持ちを分かってあげると、「クレーム」という厳しい状況下でさえ売り上げにつながるお話になるわけです。

ほんとに人間の心理って面白くて不思議なものです。

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