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『LONG ESCALATOR』刊行によせて(Tシャツで小説を連載します)


 ~まえがきにかえて~


 このたび、『LONG ESCALATOR』という小説の連載を始めました。といってもその掲載媒体は、紙面でもなければWebでもなく、もちろん僕の脳内でもありません。

Tシャツです。
Tシャツで小説を連載するのです。

 これから3ヶ月に3枚ずつ、背面にテキスト/フロントに挿絵をプリントしたTシャツをリリースします。Tシャツ1枚につき1エピソードで全33話完結、約2年半の連載となる予定です。なお、Tシャツの販売は受注生産で承ります。

 そして連載ではありますが、基本的には一話完結形式に近く、1エピソードだけ読んでも楽しめるようになっております。テキストはもちろんのこと、挿絵/デザインにも臆すことなく果敢にトライしています。

 褒めてください。褒めそやしてください。

 さて、小説の内容を申し上げますと、ある男が下北沢から小田急快速に乗って新宿に向かうべく、駅の地下二階へと降りる長いエスカレーターに乗っている、その一分半のあいだに考えたことを書いた作品です。つまり登場人物はたったひとり。ストーリーらしいストーリーも特にありません。ある男の内的独白/自由連想がひたすらどんどん展開されてゆく、というものです。

 これは文学だと“意識の流れ”といわれるスタイルでありまして、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』や川端康成の『針と硝子と霧』などが有名ですが、本作はこれを全編にわたって採用しています。

 また、前述した通り自由連想ですので、シンキング・テーマはどんどんリレーしていきます。

 ある男はエスカレーターを登るときと降りるときの時間感覚の差異について考えるうち、特殊相対性理論のことを思い出し、そしてそれは『2001年宇宙の旅』の個人的考察へとつながっていきます。やがてエゾリスの生態観察記録になるかもしれませんし、クアラルンプールでの臨死体験の思い出話になるかもしれません。今後の展開をお楽しみに、といったところでしょうか。


 思考のスピードは、1エピソードにつき1テーマの速さで流れてゆきます。

 エピソードの末尾にはハッシュタグ(#)が示され、そのハッシュタグが次回のエピソードのテーマになる。という感じでリレーしてゆくんですが、まあ文章でいわれてもナンノコッチャイだと思いますので、バックプリントの画像にご注目いただければと存じます。


 完全受注生産、基本的に再発はしない予定ですが、再発する場合は“第二刷”としてほんの若干、テキストに手を加えます。わかりやすくいえば永井豪先生の『デビルマン』方式で、再販毎に内容が若干変化します。受注は2023年2月14日~3月5日の間で承っております。生産後に順次発送、日によっては昼間ギリTシャツ一枚で外出できる三月下旬~四月初旬にはお届けしたいと思っております。マジでやります。本気でやります。


 また、3/5まで大阪のギャラリー・Marco Galleryで、エピソード1~3を展示しております。こちらではフォトグラファー・@yuinogiwa_ 氏とのコラボレートとして、作品世界を表現した写真もあわせて展示しています。ぜひご覧くださいませ。


 最後に、これは着る小説であります。書を捨てず、肌身につけたまま街へ出ることができるのですから、寺山修司先生もビックリでしょう。このTシャツは、あなたの周囲の人間を否応無しに“読者”にすることができます。そうして、ある男が一分半のあいだに繰り広げた独白は、外へ外へと波及的に広がってゆきます。あなたが誰かに背中を向ける限り。

山塚リキマル


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