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バレンシアの日本人

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スペインはバレンシアでプロサッカー選手を目指す24歳の、フットボール・クロニクル。
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記事一覧

ミステリートレイン

 冬は収穫がなかった。  近所の八百屋で野菜を買うついでに、「季節の果物は何か」と聞くと…

コンティニュアム

 日がかなり短くなって、車に乗る頃にはすっかり夜だった。その日は天気がとても良く、そのお…

起こったことのすべて

 夕食の後で海沿いを散歩しようということになった。  同部屋のビクトルと、それから隣の部…

ストリート&フットボールショー

  人生の中で得た教訓はたくさんある。特にサッカーからは多くのことを学んだ。その次に映画…

STAY POSITIVE

 今回はバレンシア行きの飛行機が全て欠航になっていたので、マドリードに一度入ってバスで移…

まだ狂っちゃないぜ

   サッカー選手というのが皆一様に抱えている病がある。  勝負師、負けず嫌い。  小さ…

フットボール讃歌

 「ニュー・シネマ・パラダイス」を観たことがあるだろうか。  イタリア、シチリア島の小さな町を舞台に、町に1つの映画館と、映画に魅せられた少年との関わりを描いた一代記だ。シチリアの景色にエンリオ・モリコーネの音楽がかかれば、それはもう映画である。そしてこれは、映画を好きになる映画でもある。  町に1つの映画館には、いつも町中の人々の顔が並ぶ。そこには、悪ガキも、神父さんも、大人の男たち、女たちも全員がいる。そして少年トトは、映写技師のアルフレッドにいつも映画の話を聞き、町

バレンシア、サッカー特等席からの報告書

 レストラン街を歩くと、そろそろ店支度だとシャッターを上げる人がいたり、昼からの客の入れ…

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バレンシアでサッカー選手になる人の記録

 およそ二ヶ月も経てば、髭もすっかり生え揃っていた。4月の初め、バレンシアに来る日の前日…

バレンシアのバレンシア人

 もう1週間も過ぎてしまったが、5月の初めには23歳の誕生日を迎えていた。同じ日には、フラン…

高貴で感傷的に踊る、バレンシアにフットボール

 トランペットの音が大きくなり、演奏隊のテンポもゆっくりになってくると、いよいよ真実の時…

サッカーとはこんなものか

 もっぱらバレンシアファンである。  バレンシアに到着して荷物を置くやいなや、すぐ近くに…

ボールが足に吸い付くようにバレンシアオレンジが

 バレンシア・ノルド駅はバレンシアの北を意味する古く大きい駅で、今は街の中心に位置してい…

どこにいても何かを思い出す

 地元民になるコツはこうだ。  見知らぬ街並みに沿って気の向くままにあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、時には少し戻ったりもして目に焼き付けておく。空気の振動に乗って漂ってくるゆるやかな人々の波長もしっかりキャッチする。  ここでは大通りでも、信号が赤でも、車の流れを見て渡っていいのか。今日は晴れてるからみんな足並みを揃えてビーチに向かっているようだ。こんな嵐のような雨の日にでもバレンシアの試合にはちゃんと足を運ぶのだな。  それから、街角の、見晴らしのいい場所にあるカ