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ショート小説「立ち仕事」

 「この仕事は初めてですか?」
 「いえ、前に2回ほど」
 「長時間立つ仕事ですが大丈夫ですか?」
 「大丈夫です」
 
 穂波は大学を卒業したあと、正社員にはならず、フリーターとしてアルバイトを転々としていた。正社員になればストレスが多く、責任も重いことを知ってのことだった。

 「何時間立っていられます?」
 「13時間ほど」
 「それなら大丈夫ですね」

 この時代、AIの革命的な進歩により、人類は完全に人間らしい仕事を失っていた。今ある仕事は、穂波が得意としているマネキンの仕事や、飛び出しダメくん、神社の狛犬などがある。もちろん面接官もAIである。

 信号も人間による手信号で、そうなったのもAIが信号の維持費や電気代より、人件費の方が安いと結論づけたためであった。

 そして今、穂波が受けている面接は大手マネキン会社のメインウィンドウ担当。マネキンの仕事に求められる立ち時間は最低8時間だが、大手ともなると最低12時間は立っていなくてはならない。

 穂波は何度もマネキンの仕事を経験し、確実にスキルを伸ばしていた。彼女自身、この仕事が天職なのではないかと思い始めている。

 「何か質問はありますでしょうか」
 「仕事で着る服はどんなものでしょう?」
 「我が社は結婚式場と提携しているので、ドレスなどが着れますよ」
 「ドレスは重いですか?」
 「5キロほどです。パワースーツを中に着ることもできますよ」
 「それなら安心ですね」

 穂波は後日、この会社に採用された。給料はデジタル通貨で支払われることになっている。月20万デジタル円もあれば十分豊かな暮らしができるのだ。

 

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