薄桜鬼短編『ある日の事』

穏やかな日和の日の事。

新選組屯所内での出来事。

「おいっ!!総司っ!!総司ぃぃ!!」


「なんですかぁ、土方さん。そんなに大きな声出さなくても聞こえてますよ。」

土方の声に沖田は飄々として答える。


「なんですか?じゃねぇぇぇぇ!!お前、また俺の発句集もちだしやがったろう!!」

「ああ、これですか?もう、そんなに怒鳴らなくてもお返ししますよ。」

「あたりめぇだ!たくっ、油断も隙もありゃしねぇ。」

そう言いながら沖田の手から発句集を取り上げる。

そこへ・・・。

「朝から騒がしい事ですね。土方くん、沖田くん。」

山南が呆れたような声で言う。

「おお、山南さん。すまねぇな。総司の野郎がまた、例のもちだしやがって。」

「山南さん、おはようございます。僕は静かに豊玉さんの俳句を読んでただけなんですけどね、土方さんが大きな声だすから。」

「やぁかましい!!てめぇが持ち出さなけりゃ、俺がこんなに怒鳴らなくても済むんだよ!」

「まぁ、まぁ、土方くん、落ち着いて。沖田くんもあまり土方くんを困らせてはいけませんよ。」

山南の言葉に沖田はおどけた様に笑い言う。

「わかりました。山南さんに言われたら仕方ないですね。」

「たくっ、山南さんも総司には甘くていけねぇ。」

「ふふふ。まぁ、いいじゃありませんか、とりあえずは返ってきたのでしょう?」

「まぁ、そうなんだが。」

「お、土方さんに山南さんに総司じゃねぇか。」

そこに永倉がやってきた。

「よう、新八。おめぇは朝から元気すぎるくらい元気だな・・。」

「おはようございます、永倉くん。」

「おはよう、新八さん。」

「おお、おはようおはよう!」

永倉は豪快に笑いながら挨拶をする。

「新八ぃ、もう少しまともに挨拶できねぇのかよ。おはようさん。」

原田が永倉に呆れたように言いながら皆に挨拶をする。

「なんだ、お前ら二人で稽古か?」

土方の問いに二人はニっと笑い指を指す。

彼らの指し示す方を見るとそこには・・・。

「・・・・。」

無言で疲れきった藤堂の姿があった。

「平助?どうした?」

土方が尋ねると藤堂はゆっくりと顔をあげて泣きそうな声で言う。

「もう、新八さんと左之さんと稽古すんのやだ・・・俺の事ボロ雑巾みたいにするんだもんよ~。」

「平助は体力無さ過ぎなんだよ。」

「新八っつあん達がありすぎなんだって!」

「平助、体力馬鹿は新八だけだぜ。俺はそんなに体力馬鹿じゃないぜ。」

「な!!左之!また、俺を裏切るのかぁ!」

「ああ、もう!!お前らうるせぇんだよ!!」

だんだんとうるさくなっていく周りに怒鳴る。

「まぁまぁ、皆さん落ち着いて。」

山南が皆を落ち着かせる。


「ところで、皆さん、あそこの桜そろそろみごろなのではありませんか?今日はいい日和ですし、お花見にでも出かけてみてはどうでしょ?」


「はぁ、山南さん、急になんだよ。この忙しい時に皆でいけるわけねぇだろう。」

「その事なら心配いりませんよ。近藤さんにも相談済みですし、今日の見回りは会津藩の方々にお任せする事になってますから。会津公にも休暇を頂きましたし、問題はないとおもわれますが」


「随分と手回しがいいな、山南さん。俺に内緒で近藤さんとそんな話してるたぁな。」

土方は少し不満そうに言う。


山南は意に介さないという態度で土方に笑いかけながら続ける。

「土方くんに言うときっと怒られるからと近藤さんに言われたものでね。私もこの時期にとは思いましたが、近藤さん曰く、こんな時期だからこそ行く価値があるのだそうですよ。まぁ、言われてみれば、いつどのような状況になるかわからない時期ですし、今、見ておかないと今度はいつになるかもわかりませんし、見れない隊士も出てくるかもしれないですし、ね。」

山南の言葉に土方は深く溜息をついて答える。

「わかったよ。んで、花見はいいが酒の肴や酒はどうするんだ?」


「ああ、それでしたら、先に雪村くんと井上さんにお話してありましたから準備はととのっているはずですよ。」

「なんっだよ、千鶴のやつ、普段は嘘付けないくせにこんなときは嘘つけるなんて。」

平助が少しむくれて言う。


「あいつが事前に知らされて嘘付き通すなんざできるわけねぇよ、どうせ、山南さんが何か手をこうじたんだろうぜ。な、山南さん。」

原田の言葉に山南さんは小さく微笑む。

「へぇ、山南さんと千鶴ちゃんって仲良く話しできるんだね。びっくりしちゃった。」

「いつも、厳しいばかりではありませんよ、私だってね。では、みなさん、用意して下さい。局長自ら場所取りに出かけているのですからね。ああ、ちゃんと護衛はつけていますよ、島田くんと山崎くんも一緒ですから、沖田くんも土方くんも安心してください。」


山南の手回しの良さに本当に土方はびっくりしていた。

でも、心の中で感謝もしていた。

自分にはできないであろうことをそっせんしてやってくれた山南に。


「よぉし、てめぇら、さっさと用意しやがれっ!!」

「おおっ!!俺達はいつでもいいぜぇ、土方さん!!」

新八が答えて酒瓶を持つ。

原田が千鶴と井上がつくった酒の肴がはいった重箱を持つ。

そして、新選組屯所を後にした。

いつもの桜のきれいな場所にくると島田と山崎と歓談しながら近藤が待っていて、みなで重箱を広げて宴会がはじまるのだった。


こんな日がまたいつくるかもわからない身だとみなわかっているのか楽しく宴会は進んでいくのであった。


ある日の出来事でございます・・・・・。

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ふと思い付いて書いたんだと思う。

薄桜鬼で幹部全部出して書いてみたんだ。

(宇宙の塵と消えろ私www)

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