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相続税における小規模宅地の特例制度と成年後見制度のトレードオフ

今日も一日よく働きました。商売繁盛と言えばそうなのですけど、やっぱり疲れます。

さて、……

親が亡くなり、親の資産が
3,000万円+600万円×法定相続人の人数
を超えない場合、相続税は掛からない。これは前提である。

しかしながらこの計算、実は単純ではない。基本的には税額が減る方向でいくつか特例がある。恐らく小規模宅地の特例制度は、最もポピュラーなものだと思う。

故人が住んでいた土地、或いは事業をしていた土地について、相続税が満額課されることにより手元の現金では相続税を支払いきれないようになると、相続人がその土地を売却して支払うことになりがち。

結果として住むところがなくなる、事業が継続できなくなるのはキツいので、それをある程度防ぐためにできた制度である。

従ってかなり効果が高い一方で、適用要件も厳格である。事業の方は私もわからないが、住んでいた土地については、一通り経験した。

住んでいた土地の相続で小規模宅地の特例制度を利用する要件は、基本的に故人の配偶者が一番強い。次いで亡くなるまで同居していた親族、同居していなくても「故人に配偶者がおらず、故人と同居している相続人がおらず、故人が亡くなる前3年間に、自分か自分の配偶者の所有する家屋に居住したことがない」親族に適用される。

ぶっちゃけ、一般的に多い「夫に先立たれた妻」がいれば、基本はこの妻が相続する場合に特例の適用ができるということになる。なお、土地の面積は330㎡までと制限があるが、その範囲において相続税は80%減額される。

小規模宅地等の特例が使えなければ相続税が仮に1,000万円となる場合、特例の適用によって200万円で済んでしまうということ。だから、効果は高いと考える。

だから私はこの道筋を選択したのだけど、制度ができた背景通りのニーズがあったのも事実である。ただ、その先に母が転倒・足の骨折により実家に住み続けることができなくなり、かつ不慣れな老人ホームでの生活で認知に問題が出てくることまでは想定していなかった。

認知に問題があることをもって、直ちに成年後見制度の利用をする必要はないのだけど、少なくとも家の売却という大きな財産の処分に当たっては、その利用なしに売却は難しい。

売買仲介業者の宅建士や所有権移転登記申請手続きを行う司法書士から契約意思の確認がなされるため、ついさっき言ったことを確実に覚えていられない状態では、本人だけで契約手続きを進めてもらえないからだ。

しかし、成年後見制度は一度始めたら本人が死亡するまでやめられず、かつ家裁は家族ではなく司法書士、精神保健福祉士等の専門職を後見人に選任する傾向が強いこと、その利用には当然報酬の支払いが伴い続けることを考えねばならない。

私は成年後見制度の利用を諦め、空き家となり朽ちる一方の自宅を放置して現在に至るが、同じような理由で空き家になっている家は一定数あるはず。これで空き家を何とかしろと言われても、立ち往生してしまうしかない。

このようなことから、場合によっては多少相続税を支払うこととなってもあなたが兄弟と相談の上で相続した方がトータルでの支払い負担が少なくなる可能性があることはお伝えしたい。

お読み頂き、ありがとうございました。

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