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地方国立の大学院院試を終えて

はじめに

 こんにちは、地方国立の情報系に通うB4です。院試を受けた方、まずはお疲れさまでした。今は志望校合格を祈りましょう。
 やっと院試が終わったので、来年度以降に大学院進学する人向けに拙い文章ですが情報を共有しようと思います。主に僕の経験談(地方国立レベル)ですが。
 この記事は理系中心に書いているため、おそらく文系で院進される方とは少し状況が異なる場合があるかもしれませんが少しでも参考になれば幸いです。
 それと、自分は外部の院試験は受けたことがなく、主に自分が通っている大学の院試験の情報を話すつもりです。その点はご了承ください。



院試の概要

1.日程

 多くの大学で7月~8月末に試験が行わています。僕の受けた大学でも今年は8月22日と23日の二日間で行いました。普通、受験といえば1月~3月ってイメージだと思うんですが大学院は夏に行います。これはB4が卒論でいそがしくなる1月を避ける意味があるのかもしれません(実際のところ知らんけど)。そして試験が2日間行われ

1日目 筆記試験
2日目 面接

の流れになっています。筆記試験と面接を同時に行う大学もあるそうです。

2.服装


 服装についてですが、多くの場合筆記試験では私服で受けて面接ではスーツを着ます。スーツ面倒くさいですね…。募集要項には服装のことはあまり書かれていないかもしれませんがスーツ着用が暗黙のルールになっているところが多いです。
 といっても院試は夏なので、僕が受験した時はジャケットやネクタイは身に着けない人もいました。この辺りは大学によると思いますがジャケットとネクタイがないだけで落とすってことはないんじゃないでしょうか?中には面接すら私服でいい大学もあるそうなので…。

3.提出書類


 大学院に出す書類として、志望理由書(400~500字程度)や顔写真付き履歴書(といっても名前と所属学部学科を書くだけ)を提出します。大学のHPなどに履歴書などがあるのでそれをDLして印刷して学務へ提出といった流れです。志望理由書は結構めんどくさいのでどれだけ遅くとも提出1週間前には書き始めましょう。先輩や同期達に相談しながらでもいいので書きましょう!研究計画書は書いたことないですがもっとめんどくさいはずです。

4.過去問

 大学院の筆記試験の過去問ですが、赤本みたいに書店には売ってないです。学務に尋ねると過去3年分の量を渡してくれます。外部の大学から来た人もここで受け取れます。他には各研究室に脈々と受け継がれてきた過去問もあるそうです。ただこれは外部の大学院を受ける際はあまり使えない方法です…。

5.合格発表

 面接してその場で合否が出ることもあるそうですが、大体2週間後でしょうか。そこから入学手続きをして…といった流れです。

試験の内容

1.筆記試験

 筆記試験の内容ですが、僕が受験した工学部情報工学専攻では

  1. 基礎科目:数学

  2. 専門科目:情報

の二つです。英語はTOEICの結果を出すだけです。(最低400点以上?)数学では線形、解析、確率統計の大門3つ構成になっており出題範囲はこんな感じ。

  • 線形代数

    • 行列式、逆行列の計算(行列のサイズ3まで)

      • 正則判定

    • 固有値、固有ベクトルの計算(こちらも行列のサイズ3まで。4以上はきつい)

      • 対角化、行列のn乗(対角化可能条件も)

    • ベクトル空間の部分空間かを判定

    • 線形変換

  • 解析学

    • 微分方程式(2階線形微分方程式まで)

    • 複素積分

    • 重積分

    • テイラー展開

  • 確率統計

    • 連続確率密度関数の期待値、分散(多変数を含む)

    • 同時確率密度関数の共分散、確率変数の独立か判定

 ざっとこのくらいですね。線形代数では行列式逆行列を求められるようにしましょう!直接それらを答えさせる問題ではなく、解く過程で必要になることが多いんです。それと固有値固有ベクトルも何度か手を動かして必ず求められるようにしましょう。これだけで小問2つ取れます。
 解析では微分方程式複素積分の2択です。微分方程式は基本レベルしか出ないのでいいんですが、複素積分は忘れがちです。例えば

$$
C:z(t)=\alpha + re^{i\theta}(r  > 0, 0\le\theta <2\pi) \\
\oint_{C}(z-\alpha)^ndz=
\begin{cases}
2\pi i & (n = -1) \\ 
0 &(n \neq -1)
\end{cases}
$$

の導出できない方いるんじゃないでしょうか。もし過去問で出やすいなと思ったら早めに復習することをおススメします。個人的に複素積分は「原始関数が簡単に求められない関数を積分する」という明確な目標があるので勉強しやすいと思います。こんなのが自力で解けたらかなり自信持ってもいいかもしれません。

$$
\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{x^4+1}dx=\frac{\pi}{\sqrt{2}}
$$


 確率統計は基本的なことができていれば解けるはず。ただ仮説推定が出るようであれば早めに復習しましょう。

まあ…
全部ヨビノリで分かりやすく解説されてますけどね

 そういう意味では数学は大した敵ではないのかなと思います。(数学科は別ですよ)問題のレベルも定期テストレベルです。地方国立まではヨビノリ見てちょっと過去問触れるかーで合格点は取れます。

問題は専門科目です。僕が受けた大学ではこんな構成でした。

  • データ構造、アルゴリズム

    • ソート、木構造、計算量

  • 論理回路、計算機システム

    • カルノー図、論理関数、CPUの性能

  • C言語(手書きコード)、コンパイラ

    • ポインタの難しい話、再帰関数、文脈自由文法、LL(1)文法

 とまあ情報系らしい構成ですが勉強が大変です。というのも数学は動画でもウェブサイトでもとっっっても分かりやすく解説されていますが、専門科目では専門的過ぎて載っているのが授業で使った教科書しかないなんてこともあります。正直数学の勉強はちゃちゃっと済ませて専門科目に注力しないと終わらない可能性があります。先輩の力も借りて乗り切りましょう。
 情報系専攻の方はこちらの「工業大学生ももやまのうさぎ塾」というサイトが参考になるかと思います。上で述べたテスト範囲は網羅されていますし、数学の記事も載っています。


2.面接で聞かれることは?

 
一方、面接はどうでしょう?
 就活みたいにいっぱい準備して対策をしないと…と思う方もいるかもしれません。しかし、院試というのは筆記試験の点数で決まるといっても過言ではないです。つまり筆記試験の点数が取れていれば、面接では身だしなみを整えて最低限の受け答えができれば問題ありません!逆に言えば筆記ダメだったから面接で巻き返すとかはできません。
 面接では「この学生は本当に研究をしたいのか」というのを見極められます。単に就活がいやで…なんて理由で院に入ろうとする人を大学としても受け入れたくありません。研究をしてくれる人が欲しいのです。
 ある程度どの大学でも聞かれるであろう内容を並べます。

  • 大学院に進学したい理由

  • そこの大学院でなければならない理由

  • 卒業後の進路は?(博士or就職)

  • やりたい研究、今研究している研究の内容

  • 試験の出来

 志望理由は必ずと言っていいほど聞かれます。
 そしてやりたい研究や今卒論で行っている研究についても聞かれるのですが…かなり突っ込まれます。まだ論文読んでる段階とか知ったこっちゃないのです。
 「なんでそれでうまくいくと思ったの?」「なんでそれやろうと思ったの?」「いやそれは違うよね?」「もうちょっとまとめて話したほうがいいよwww」このような意地悪な質問(煽り含む)があります。
 僕が受けた大学では教授6人vs学生1人で、教授が質問するとほかの教授がなぜかクスクス笑いだすんです。そんなにおかしいこといってたのかな…しかもほとんどの受験生がこれだったようです。いやあ…今どき企業面接で同じ事したら「圧迫面接だ!あそこはクソ!」とかいってネットに晒されるんじゃないでしょうか。
 少し愚痴が入りましたが所詮田舎の地方国立の教授です。教授の考えが古いままのは仕方ないのかもしれません。彼らは自分の専門知識は最先端ですが世の中の常識のことは昭和のままだと思うことにしましょう。

いつ頃から対策すべき?

 これは内部進学と外部進学で大きく異なる点だと思います。内部進学の人は早ければ3か月前に、遅くとも1か月前には過去問を解いて自分の実力を測りましょう。院試は過去問が命です!過去問で分からないところがあれば調べてしっかり身につけましょう。定期テストレベルの問題が院試では多く出るので教科書の演習問題やテストの過去問も参考になるかもしれません。過去問を解き終わったらこちらをやってみてもいいかもしれません。(さらに前の過去問があるならそちらに)
 過去問ですが、5年分でどうにかなると思います。5年分も解けば大体は網羅できます。外部の院や旧帝大を受ける人はさらに必要だと思いますが。
 ちなみに、TOEICなど英語の成績が必要な場合は6月までに受けましょう。それ以降は認定書が届かず出願期間が過ぎてしまいます。600点取れればいですが英語の配点は1割くらいと言われるので恥ずかしくない点数が取れればいいと思います。

大学院の定員は?

 大学院の定員は学科ごとの定員(学部入試の時の定員)の半分程と言われています。僕のいる学科は60人が定員なので大学院の定員は30人です。そして研究室の先生一人当たりの定員も決まっていて、例えば人気の先生の場合でも定員は3人とかなのでこの枠を奪い合うことになります。もし落ちれば第2希望の研究室になります。
 …で、実際僕の受けた大学はどうなのかというと、なんと定員割れが起きていました。筆記免除で受ける人が7人で、他の内部生(僕含む)が20人、あと外部生の人が2人の29人です。1枠余ったんです…。こうなれば後は筆記試験の足切り(基準5割くらい??、存在するかは定かでない)さえ超えればいいという誰でも受かっちゃうんじゃないかという感じでした。といっても足切りがあるので油断なりませんが。
 とにかく、地方大学だと定員割れすることも珍しくないんだなということは覚えておくといいかもしれません。だからといってノー勉でどえらい点数とると幾ら内部生でも落とします。ちなみに定員割れの場合は2次募集(12月)でまた人を集めることになります。

終わりに

 院試を受けた人、改めて院試お疲れ様でした!卒論に向けてまだまだ論文読んだり実験したり忙しいと思いますがまずは残りの夏休みを楽しみましょう!
 何年も前から工学部でも大学院に進む風潮が強まってきているにもかかわらず院試の情報が少ないので、こういった形で少しでも情報を発信し読んでくれた方が無事大学院進学できることを願っております。

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