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その場所で咲く

私は近頃、毎日のようにおいしい焼き立てのクロワッサンを食べている。
発酵バターがたっぷり入った全粒粉を使ったこだわりのクロワッサン。
とってもおいしい。

10年務めた幼児教育の仕事に一度別れを告げて、しばらく何もしない日々を送っていた。
もう一度子どもたちと関わる仕事をしたいという気持ちがどこか捨てきれずにいた日々。
゛気持ちに一区切りがつく゛そんな経験をしたことをここに記しておきたいと思う。

先日、以前勤めていた職場の運動会を見に行かせてもらう機会があった。
7か月振りに会った子どもたちは背が伸びて、日に焼けて、たくましくなったように感じた。
応援しに来たことを告げに行くと、反応は様々で、大喜びをしてくれたり
すこし照れているような表情で手を振ってくれたり、少し昔の記憶をたどっているような微妙な表情をしている子もいた。
保護者の方たちとの再会も、私にとって想像以上に心躍る時間になった。
私の姿を見つけると元気な声で声をかけてくれた。
仕事を離れてから毎日なんとな過ぎていくようなけだるい日々を送っていた私にとって、誰かに覚えてもらっている、
ここにいた私を見ていてくれた人がいる ということは
今まで感じたことのないような不思議な気持ちを抱かせた。

運動会を一日応援させてもらい、私がいなくなっても元気に過ごしている子どもたちの姿と生き生きとした同僚の姿をしっかりと目に焼き付けた。
゛もう私の居場所はここにないな゛
嬉しいことに、はっきりとそう分かった気がした。

私の中でくすぶっていたものが心地よく、そして晴れやかに消え去って
残ったものは、とても大きな愛 だった。ように思う。

私は今、街のパン屋さんでパンを作る仕事をしている。
生地をこねたり、発酵の終わった柔らかな生地をそっと天板にのせたり、
焼きあがったパンを並べたりしている。

初めて会った時、緊張して言葉を慎重に選んでいた慎重派の私が、一緒に働く人たちのことも少しずつ分かってきて、新しいこの場所は居心地の良い場所に形を変えようとしている。

その場所で咲く。
いろいろな気持ちを抱えて、考えて決めて行動して、今私はこの場所にいることを選んでいる。
この先どうなるかなんて分からないけれど、自分の決めたこの場所で咲きたい、そう思った。

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