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誰にも聞こえないように





両耳から
私の中心の一番弱いところに
やさしい痛みが
降ってくる。



私が育てた食材で
あなたが調理したこの味は
きっと誰にも分からない。

いつかあなたが
誰かが大切に育てた食材で
誰か好みに調理する頃、
私は何を食べているのだろうか。

美化される前の味を
当分は覚えていたい。


私の不幸や幸せを
気にも留めなくなった時、
誰にも聞こえないように
とても繊細で小さな音を鳴らす。

私にしか聞こえないように。




言葉や行動などの保証で
得ていた安心は、
どこへいってしまったのか。




優しさも、
温もりも、
透明度も、
今は脱ぎ捨てたい。








また今日も、
頭が私の上を飛んでゆく。


頭を見つけたら
そっとしておいてほしい。





そして秘密のままにしてほしい。




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