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大事なのはグリーンダカラと脂肪燃焼スープ、あと缶詰

流行り病にかかってしまった。
家族が次々に侵食されていく様は、なんだか昨今流行ったゾンビドラマみたいだ。

沸き立つはずの

この週末は、都内にいる姪っ子たちを千葉に招く予定だった。
地曳き網体験してスイカ食べてカレー食べて花火して肝試しをして、竹で工作して流しそうめんして、「夏らしいこと」を全部詰め込んだ1泊2日にしようと思っていた。

私は年甲斐もなく楽しみにしすぎて、事前に日程表まで作って姉たちに送りつけていた。

 伝わるだろうか、海おばちゃんのはしゃぎようが。


ところが時を同じくして、参加予定だった姪2人と私の妹に陽性反応が出た。

中止を伝えると妹は最後まで「私のせいでごめん」と言っていたけれど、妹が不注意だった訳では全くない。手洗いうがいも消毒も、人並み以上に気をつけていたのが彼女だ。正直誰がかかってもおかしくなかった。

妹は普段彼氏と同棲している部屋に帰りたそうだったけど、彼氏も仕事があるし、完全に治るまでは実家で療養してもらうことにした。


隔離部屋のこと

さて、実家での話である。

実家には、1階の「和室」と2階の「防音室(※)」と呼ばれている2部屋にしかクーラーが付いていない。さすがにこの猛暑、クーラーがないと厳しかろうということで、妹はその防音室で隔離されることになった。

(※)防音室は、かつてドラムを叩いたりギターをかき鳴らすのが好きだった父のために設けられた二重扉の部屋だが、現在は荷物置き場にしか使っていなかった。

ただ、ただである。
自分でもびっくりするくらい、これが寂しかったのだ。

朝、食卓にいるはずの妹がいない。
2階で寝ていることは分かっているのに、顔を合わせられない。
妹が1階に降りて来たそうにそわそわしているのを感じながらも、可能な限りその防音室だけで生活してもらわないといけない。

このことが、私は自分でもびっくりするくらい、寂しかった。

どうやら母も同様だったらしい。
「●●(妹)との接触を最低限にするために、代表者1人が看病することにしよう」と母が言い出したものの、「いいよ私行くよ」「いやいや私が行くよ」と、私も母もどちらも譲らない。

「調子どう?」
「何か欲しいもんある?」
「アイスあるけど食べる?」
「氷まくら変えるよ」

結局、何かとこじつけては妹の様子を見に行きたがる私と母。お察しの通り、最終的に2人で看病することになった。
きっと妹からしたら心底「いいからほっといて寝かせといてくれ」状態だっただろう。

うん、ごめんとは思ってる。


それから

父が発熱したのは、妹が陽性だと判明してから3日後のことだった。
父は数ヶ月前に3回目のワクチンを打っていたもんだから、どんどん形を変えていくウイルスに、私は得体の知れない恐怖を感じた。

私がピンチヒッターとして出勤していた父の塾でも何人か陽性者が出た。結局夏期講習も1週間完全休講することになった。


余談だが、私の父は太っている。わかりやすく言うなら、ほぼ丸である。例えるなら、アリスのハンプティダンプティを地で行く体型である。

問題は例の防音室が、6畳程度のこぢんまりした空間だということだ。
普通に父と妹2人では狭いし、えもいわれぬ圧迫感がある。

が、背に腹は変えられない。布団を2つ並べて、2人ともその部屋で寝てもらう他なかった。


でも、その夜中。

私が2人の様子を見に行くと、妹は防音室から這い出て、(そう、文字通り這い出て)、灼熱の廊下で、扇風機を味方に大の字になって寝ていた。

まあ、そらそーなるわな。


情報網

「喉のイガイガにはグリーンダカラ飲むと良いよ」
「食事は脂肪燃焼スープ(キャベツ玉ねぎにんじんセロリなど、山盛り野菜をトマト缶で煮込んだもの)にすると効果てきめんよ」

なんだかんだこの病の看病をするのが初めてだったので、他の兄弟たちからの体験談や情報提供がありがたかった。

食べることが大好きだった父の食欲がないのを不安がってはいたけれど、このスープのおかげか少しずつ回復の兆しを見せて、3日目には父は熱も下がっていった。


ところが父の容態が安定し、妹の熱が下がりきって経過観察期間に入るころ、私は急に喉に違和感を覚えてしまった。

あ、来てしまった。

と思ったらすぐだ。

発熱。
38.5度。どんどん上がる。
食欲が湧かない。だるい。
腰がとにかく重くて生理痛みたい。
頭がカチ割れそうなほど痛い。
39.3度。
寒気が出てきた。
喉の奥の違和感が取れない。

あーあ。

「なんか次々と、、。まるでウォーキングデッドみたいやな」

私が自分にも症状が出たことをNetflixドラマに例えて家族にLINEすると、すかさず姉の配偶者から反応があった。

「ウォーキングデッドをシーズン8まで観たオレからすると、缶詰が1番大事よ」


うん。あながち間違いではないかもしれない。


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不快な例えに感じられる方もいるかもしれませんが、本当にそう感じる程度には「次々侵食」でした。

皆様もどうかお気をつけて。

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