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切り取り報道に胸が痛い

知人が、岡山で選挙戦をしている。

いよいよなのか。衆院選に立候補することは、初出馬をした2019年の参議院選挙で当選ならず・・・となってからの予定だった。それを見据えて、負けた後も、2年間朝7時台に岡山の街頭に立ち続け、日々政策説明会や交流会を続けたのを、知っていた。今度こそ頑張って、と思っていたら、彼は週刊誌の非情な攻撃に見舞われた。

週刊誌というメガホン

週刊誌は、彼という人間の心臓やら、腎臓やら、肺やら主要な器官を全部無視して、この微細な細胞を、軽薄だ、不適切だと報道する。

私がなぜ、こんなことを書くのか。友人というほど近くもないが、原田さんが2年前の出馬に至るまで、ライフワークとして東京で10年以上続けていたNPO活動を通して、彼の人となりを知っている者として、一言言わずにはいられないから。

「政治」よりもっと地味な活動を続けて10年

初めて原田さんを見たのは、アメリカの大学の夏休みで日本に帰国していた、2013年の参院選の小さな公開討論会だった。

ニコニコニュースがネットで同時中継するとかで、ヤフーニュースのトップにイベントの告知バナーがあって、なんとなく行ってみた。とっつきやすいバナーのデザインが親しみやすかったから、くらいの理由。「もっとちゃんとわかってた方がいいんだけど、全然わかんないまま年だけ大人になるからな。。。」という負い目を解消する機会にも、思えた。

60人くらいでいっぱいになりそうだった小さな会場は、ほとんど満席で、遅れて行った私はそっと後ろの席に座った。席には各政党の選挙公約資料と一緒に主催者団体側の資料があって、そこで初めて、このイベントはYouthCreateという「若者と政治をつなぐ」活動をしているというNPOが企画運営をしていて、今司会進行をしている人がその代表ということを知った。それが、原田さんだった。(当時のイメージを東大新聞から拝借

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 臨機応変に場を回していたその人は、資料のプロフィールによると、東大法学部の在学中に20代の投票率の向上を目指してivoteという学生団体を立ち上げ、卒業後もずっと、若者の政治参画促進の領域で活動をしているらしい。インターネット選挙運動解禁を目指す「One Voice Campaign」の発起人で(その頃は、ネットで選挙運動につながることを一切言っちゃダメだという法律が撤廃されたばかりだった)、各党国会議員と大学生が気軽に飲みながら話ができる「Voters Bar」を全国で開催し・・・・・・と並んでいた。

 その頃私は結構名門だと言われるアメリカの大学に行っていて、周りは、いかに収入が高く、キャリア市場で価値が高く、社会的ステータスが高く、大きな仕事ができるか、という超個人的な原動力で、だけどそれを簡単にバカになんてできないくらいの激しい競争のなかでしのぎを削るカルチャーのなかにいたこともあって、「そんな、何とでも交換できるカードを持っていたのに、こんなことをやっている」人の存在に、驚いた。

こんなに能力があって、社会貢献性の高い仕事をしたいなら、官僚になればよかったのに。滅私奉公だ、薄給激務なんて言っても、NPOなんて吹けば飛ぶような身の立て方よりは、はるかに手堅い。政治に興味を持って欲しいなら、自分が政治家になればいいじゃない?

そのイベントは、「この人の能力だけでこれを全部回してるんだ。凄いな」と感じるものがあったからこそ、「なんでこの分野のNPO?!」と思った。

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 イベント終了後、私は衝撃の冷めやらぬなか、吸い寄せられたように原田さんに話しかけに行った。別に語るべき社会活動をしているわけでもない、政治に詳しいわけでもない、交換する名刺すら持っていない。

相手からしても、やや不思議だったと思う。「いやぁ、すごい良かったです!私、こういう活動してて。今度ぜひ一緒にイベントやりましょう!」みたいな歯切れのいい挨拶をされるわけでもなくて(他に話しかけに行くような人たちはそうだった)、「あの…面白かったです…」みたいな、一言だけを言いにきた子、というのは。

 原田さんは、私の言葉にお礼を言って、名前を聞いてくれて、もう覚えていないいくつかの言葉を交わしたあとに、「また、お話ししましょう」と優しい声色で、言ってくれた。

その言葉は、すごく透明で、包容力のある優しい言葉だった。 

それは、「へぇ、興味あるんだ」みたいな傲慢さは一切なく、過剰に迎合してくるような勧誘色の強い親しみのこもった反応でもなく、機械的で心の伴わない反応でもなく、すごく穏やかで、配慮のある、優しい言葉だった。その澄んだ目の奥がすごくキラキラしていてまっすぐ、と思った。

どんなにいいイベントをやっても、司会が上手くても、頭がキレる人なのだと思っても、若い女の子(その時の私の一つのわかりやすい属性は「若い女の子」だった)にまっすぐに賞賛の目を向けられた時に、出る言葉が「えーーー!嬉しいなー!!!そんなこと言ってもらうと報われるわ〜!!あっ、この後、打ち上げおいでよ!!!これる?!?!?!」みたいな反応だったら、そんな感動も、興醒めする気がする。でも、そのやりとりこそが、その人を忘れられない印象のある人にした。

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道のないところに道を作って10年

私が出会った時の原田さんは(2013年)、まだその界隈でも有名になりだす前のことだった。 原田さんは、その後、そのわかりにくい領域でどんどん知る人ぞ知る人になっていき、選挙の解説者として全国放送の夜のニュースに出たり、そのうち18歳への選挙権引き下げについて、国会に招致されて参考の意見陳述をしたり、岡山大学で実践デモグラフィックラーニングの授業を持ったりとか(修士すら持っていないのに国立大学で自分の名前で講義ができるってすごいことである)、活躍のスケールをどんどん上げていった。

でも、達成を振り返って言葉を並べれば華麗に聞こえるその功績を積み上げることの難しさは、語るに及ばずと思う。NPO活動を生業とし、それを専門として社会に認められるというのは大変なことだ。利益を追求しないNPO活動で収支のやりくりが難しいのは言うまでもないが、それを以って「認められる」までの道のりだって、マイルストーンなんてゼロである。この試験に受かったら、この会社に入ったら、なんて道筋すらない場所で、「NPOの代表」なんて、誰でも名乗れば(申請すれば)明日から言える、ようなものなので──。自分の能力と、情熱と、行動の実績でしか、人を巻き込むことも、その先を切り開くことも、できない。 

とりわけ、「若者と政治をつなぐ」なんて、民主主義の根幹を担う壮大な領域の話でこそあれ、それこそ動物愛護とか、恵まれない家庭の児童支援に比べ、誰を救っているのかわかりづらい、どんな変化を起こせたのかも見えづらい、本当に、種まき以前の土壌を耕しましょう的な活動で、信念なしにはとても続けていけないと思う。

 でも、NPO 時代のその人に、「苦労」とか、ネガティブな言葉は全然しっくりこない。それを、なんか「楽しみながら」やっていた。

2DKの自宅兼事務所に「困っている人はおいで」なのに…

ところで、原田さんが、NPO時代に、東京で自宅兼事務所の拠点としていたのは、二階建ての小さな木造の2DKのアパートの一階である。

「けんけんはうす」と呼ばれていたその家は、書類と資料の山と、大きなホワイトボードが置かれた質素な空間だ(私も一度、活動を手伝った帰りに、5人くらいでお邪魔したことがある)。

6畳二間?くらいのその場所には、多い時で最大6人くらい(!)が寝泊まりしていたこともあったらしいが、原田さんのSNSで時々綴られる「けんけんはうす」の日常の光景は、そのときどきで社会的な関心や志を共にする訪問者が食卓を囲んで仲間たちが賑わう、すごくあたたかい空間に見えた。

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※昔、原田さんがNPO時代に書いていたブログから写真を転載。

今回炎上しているツイートの一つに、3.11の震災が起こって、帰宅困難になった人に向けておいで、と言った(のが信じられない!)という言葉があったが、それは、一人暮らしの自宅に誘い込むようなものではなく、そんな空間に「みんないるから、困ってる人はおいで」という優しさである。

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「現時点で女の子も二人来ることになっている」というのは、「え、行ってもいいのかな。でも・・・」とためらう女の子に、「男女どちらでも安心しておいで」の意味合いなのだと彼を知る者にとっては感じるし、文末の「どうしよ♪」は、真面目なことを真面目にやるのが嫌いな原田さんらしいツイートに見える。

坂本龍馬をイメージして、「(災害時)困ってるやつ、みんなうちこんかい!おなごもくるっちゃね!おら、今からドキドキしてきたな!」の言葉だったら、誰も無粋な糾弾などしないのではないか。

坂本龍馬に例えるのはさすがに贔屓目なのは承知だが、社会的使命感、行動力、本当は「女の子と話すのが苦手」なわけがない(心理的には苦手なのかもしれないけど)男女問わずの交友関係の広いコミュニケーション能力、そして、そうやって呼びかけるような、近くにいる人への思いやり。その全部、そう例えても、めちゃくちゃズレてるとは思わない。

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色んな場所で、原田さんの与えた影響の上に芽吹くものがある

原田さんがYouthCreateの後半で精力的に力を入れていた活動の一つに、18歳選挙権引き下げにともなう、大学生よりさらに若い年代への主権者教育があって、年間に数十回とか、中学や高校に出前授業に行っていた。

アメリカから帰国して東京在住になった私は、年に数える程度だけどたまにYouthCreateの活動を手伝うようになり、YouthCreateのスタッフさん達と、高校生に自分たちの区のマニフェストを作るワークショップ型の授業だとか、高校の体育館でやる模擬選挙で候補者役をしたりしてた。

その高校への出張授業で、別のボランティアとして出会ったのが、岐阜5区で元市議、元市長、元大臣の61〜69歳の候補者のなかで選挙戦をしている、25歳の今井るるちゃんだった。

(あの頃はまだ大学生だった!)

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当選10回の、代々世襲のベテラン自民党候補(古屋氏)に対し、政治の家系ではない、地元育ちの25歳の彼女が日を追うごとに支持を広げて猛追を見せ、岐阜では大フィーバーが巻き起こってるらしい。

YouthCreateの活動を手伝う人は、男子学生・男性のほうが多かったけど、るるちゃんみたいな大学生や、私みたいな女性もいた。男子校っぽくて入りづらいみたいな空気は全然なかったし、「うわぁ、その冗談、昭和ですか?」みたいなやりづらさを感じることもなかった。

2019年に原田さんが岡山から出馬すると表明したとき、まだ会社員だったるるさんは、「人生を変えてくれた人で、尊敬する大先輩。全力で応援したい」と言葉を寄せていた。

他にも、教育者、活動家、いろんな人がはなむけの言葉を贈っていた。

ところで、彼の不適切とされている主なツイートは以下だ。

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これがそんなに悪いのか?!

これが、そんなに悪いのか。。。もし、本人を知らず、意地悪い目で見たら、ショートパンツツイートはちょっと・・・かも。でも、その一番弁解が難しいと思うツイートでさえも、積極的に「女の子のショートパンツ姿見たいときは、サッカーっすよ!!!」と積極的に謳った訳ではなく、「と思う。。。」とちょっと控えめあたりなニュアンスなのだ。そんな品のない人間ではない、シャイさと良識のある青年だよ、、、と言いたい。

首絞めどうこうの豆知識ツイートに至っては、どちらかといえば彼が法学部で法律を学んだからこそのギャグツイじゃないんですかね。と思うし、自分の実践記録として「今日は紐で絞めてみた。これだと刑法リスクがあるので、明日は素手で絞めてみよう」と書いたかのように、それを「性的趣向」と形容することには悪意を感じるし、何をもって「リスキーな性行為について自前の法的見解を述べた」んではなくて、「個人の趣向を綴った」と解釈したんだよ?という感じである。


前回の選挙の時から、必死に政策と演説スケジュールを訴える原田さんのツイッターには、過去10年の数えきれないツイートのうち、3・4個の、上記ツイートをスクショしては、すべてのツイートに貼り付けていくというような、悪質な絡みツイートが目立った。

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反省を踏まえて今回の出馬の前に該当ツイートは消しておいたのだろうが、その一連の騒動を、今回女性自身が報道した。

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こんな瑣末なことが、その人の足を引っ張っていることが、信じられない。


彼自身、8年前や10年前のツイッターにコメント出すほどやましくないから黙殺でいく、というようなスタンスを取ったのだろう、と思える(また、選挙期間のこの短い間にそんなことに対応していられない、と焦っているのだとも思うし、下手に応戦してそこに注目を集めたくない気持ちもわかる)。


でも、どうなのかな。一個一個の絡みツイートは黙殺が正しいと思うし、週刊誌の取材にもそんな時間を削って対応しなくてもいいと思うけれど、公式ステートメントとして一言くらい公式ホームページに載せてもいい、と思うのである。

それくらい、その人の名前がこんな風に広がるのは、悔しい。





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