徹底的に「褒める練習」をしてみたらコミュニケーションに困らなくなった
人を褒める事が苦手だ。
昔の自分はそうだった。
だけど今は、褒める事は結構自然に出来ちゃう。
「今日は寒いね」
レベルで自然に口から出てくる。
新卒で務めた会社は、写真スタジオだった。そこではスタジオカメラマンとしての配属で、カメラマンという肩書きがとても誇らしかった。
でも、そのときの最初のミッションが、カメラの扱い方を覚える事でもなく、受付を覚える事でもなく、
お客様を褒める事
だった。
ちょっとやってみてほしい。
地味に難しいんだよ。
初めましてのお客様に向かって、褒めてしゃべりかけまくる。
最初は褒め言葉を口に出す事も出来なかった。
言った後は、自分が偽善者にでもなったかのように感じで、口がワワワワってなる感じに苛まれた。
何より困ったのは、お客様の褒めどころが分からない時。
例えばさ。
ホントごめんなんだけど、ルックスが良くない子に向かって「可愛いですね!」とは言えなかった。
いや、こういう言い方するとほんとゴメンなんだけど...
ある時は、韓流スターのヨン様に似た男性が来られて、撮影を担当したんだけど、どうしても男らしく撮れなくて困ってしまっていた。
ちょっと女性的な所があるじゃない?繊細というか。
そういう雰囲気はめちゃくちゃ出るんだけど、どうしても「男」感が出せなくて。
お客様の要望が、「かっこ良く撮ってくれ」だったから、自分なりのかっこ良さを表現したかったんだ。
だけど、どうやってもかっこ良く撮れない。
撮れば撮るほど、オネエ感が出る。
だから、カッコいいですね!なんて口が裂けても言えない。
どうやって褒めれば良いかも分からなくて、自分の理想とするかっこよさも出せなくて、この行き場の無いモヤモヤをぶつける事が出来ず、バックヤードで思わず泣いた。
今思えば、自分の思うかっこ良さに無理矢理近づけなくても、その方の魅力を引き出してあげれば良かったと思う。
当時の経験値では、残念ながらそんな思考の転換が出来なかったんだね。
こういう事が数件続いたので、社内で一目置かれている凄腕カメラマンの先輩に相談に行った。
「褒めようと頑張るんだけど、出来ないんです。褒めるのが苦手です。」
恥ずかしいという感情よりも、なんか嘘っぽいというか、偽善っぽいというか、そんな感情が自分の中に生まれてきて、出来なかった。
先輩に心情を吐露すると、その先輩はこういった。
事実を言ってあげるだけで、お客様は喜ぶよ。
先輩曰く。
「そりゃね、可愛くない子にカワイイですねなんて言えないよ。そうじゃなくてさ、例えば。『わー!アイシャドウ黄色なんですねー!どこのですか!?』とか『靴のヒール高ーい!何cm??』とか、『指が細くてきれいですねー!私なんて手がごつごつで困っちゃう!』とかね。顔を褒めろって訳じゃなくて、事実を言ってあげる、持ち物やその人に興味を持ってあげる、それだけでお客様は喜ぶよ」
目からウロコだった。
褒める=お世辞をいう
じゃ無いんだね。
ていうか、ルックスにフォーカスし過ぎていたね、自分。
今まで本心でカワイイとか美人だとかカッコいいとか思ってない人にそういう言葉をかける時、「ぐぬぬぬ…」ってなってたけど、自分が思っていない事を言わなくても良いんだ!と、一気に心が軽くなった。
もちろん、伝える時の表情やテンションも大事だよ。
無表情で言うと、喧嘩売ってんのかと思われるから。
持ち物を褒める。
出来そう。
事実を伝える。
出来そう。
お客様に興味を持ってみる。
出来そう。
やれる気がする。
単純に可愛いな、カッコいいな、と思った人には、素直に言います。
私はお世辞が言えない不器用なタイプなので、本当に心から思っている事しか言えない。
でもね、心が軽くなったとはいえ、じゃあ今日から突然褒め上手になりました!ってワケにもいかなかった。
ボキャブラリーも少ない。表現力も無い。観察力も足りない。
だから、ここを鍛えなければと思った。
そして何をしたかというと、
【 誰が一番褒めまくれるかゲーム 】
って言うのを勝手に作って、周りの人に協力してもらった。
友達や同期と飲みに言った時に、出てくるメニューをとにかく褒めまくるというゲームで延々と遊んだ。
お題:
唐揚げを褒めて下さい。
こういわれると、味を褒めがちだよね。
けど、味の他に褒める所は?ってなると、めちゃくちゃその唐揚げを観察しだすの。
盛りつけはどうだろう。
添えてある野菜とのバランスはどうだろう。
色はどうだろう。
熱さはどうだろう。
大きさはどうだろう。
お箸で持ちやすいだろうか。
衣のカリカリサクサク感はどうだろう。
肉質はどうだろう。
唐揚げ×お皿×店内 の雰囲気は合っているだろうか。
写真に撮るとフォトジュニックになるだろうか。ちょっと撮ってみよう。
とかね。
唐揚げ一つでもこんなに観察する所が出てくる。
で、褒める、というか事実を言う。プラス表現でね。
「この唐揚げ小さめだから一口で口に入っていいね!リップが取れないね!」
とかとか。
本当は、「この唐揚げ小さいじゃんガッカリ。」と思っていたとしても、ここまで表現が変わる。
これはスゴい事だなと。
そうやって褒める練習を徹底的にやった。
全体的には嫌いなものでも、ここはスキよ!という所を見つけるのが得意になった。
よく「褒め上手ですね」と言われるんだけど、褒めてるというより、事実を発掘しているというのが近いかな。
発掘した事実を、ちょっとテンション高くプラス表現でお伝えしているだけ。
それだけで、ハッピーになれる。心を開いてくれる。
スゴいよね。
褒める事が苦手な方は、事実を発掘してみてほしい。
で、それをちゃんと口にする習慣を付けてみたら良いんじゃないかな。
ちょっとプラスの要素を足してね。
人間関係がスムーズになって、コミュニケーションが取りやすくなったよ。
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