サステナブルな消費とは?

私は今年の4月から「食」について学び合う学び舎フードスコーレに入学した。4/27は、その第2回目の授業で「発酵でつなぐ都市と地域」というテーマで行われた。株式会社ファーメンステーションの代表である、酒井 里奈さんがお話ししてくださった。

酒井さんはもともと金融機関で10年間働いた後、生ゴミをバイオ燃料にする技術に惹かれ、東京農大の醸造化学科で学ぶことを決意されたという。卒業後、「発酵技術を使って循環型社会を作りたい」という想いから、ファーメンステーションを立ち上げ、有効活用されていない資源を発酵によってアルコールに再生させている。今年で12年目になるとおっしゃっていた。ファーメンステーションとは、Fermentation (発酵)とStation(駅)の造語で、ファーメンステーションを通過したら、前よりいいことが起こるように願いを込めてつけられたそう。不要になってしまったものやゴミと言われるようなもの、そういった未利用資源を再生させて循環させることを目指して4つの事業を展開しているお話をお聞きした。

①本格的なオーガニックブランド
サステナブルエタノールの良さを伝えたい想いから、自社のオーガニックブランドを持ち、商品化することで、消費者の手元へ届ける事業。
②原料販売
オーガニックやサステナブルな商品を作りたい事業主にけ原料を売る事業。
③OEM/ODM
委託者のブランドで、お米でできた高濃度アルコールスプレーを開発。いろんな皆さんと組んで未利用資源を活用するのが当たり前の社会を作りたい想いから始めた事業。
④企業コラボレーション
シードルを作る過程で出てしまった「りんごの搾りかす」を発酵させ、アルコールをつくり、ウエットティッシュに製品化することに成功。高い技術力でゴミと言われるものをよりよいものにしている。使われなかったりんごカスは家畜の良い餌となるため、ゴミはゼロ。良い餌を食べた家畜は良いお肉に育ち、良い糞は良い堆肥となる循環が生まれている事業。

他にも、雑穀のヒエのヌカを化粧品の原料にしたり、廃棄バナナでエタノールを製造し、ウエットティッシュにしたりと様々な取り組みを行なっていることを教えていただいた。「無駄って思われているものをめちゃくちゃ価値のあるものに変身させたい。」酒井さんはこうおっしゃっていた。そうした理念そのものがまさにエコシステムだと感じた。

酒井さんにとって、サステナブルな消費とは?

狭い意味で言うと、原料を作っている過程で環境負荷ができるだけ低い製法でできているものを選ぶこと。広い意味でいうと、作っている人を応援したくなる、共感したくなるようなものを選ぶというアクションのこと。買うとか使うという行為は社会参加だと思っているから。

このお話を聞いた後、私にとってサステナブルな消費とはなんだろうとモヤモヤしながら考え続けた。わたしはこれまでの買い物で、取り組みを応援したいと思って買った買い物は数えられる程度しかなかった。サステナブルについて日常ではほとんど考えられていなかった。価格に目を奪われ、自分の利益ばかりを考え、買い物をしていたように思う。私がこの講義を聞くまでは、サステナブルな消費と聞いて、「大切にものを使い続けることや無駄なく食品を使うこと」が思い浮かんだ。けれども講義を聞いた後、考え続けた結果、「日常の買い物の中で、使うものの原料を気にしてみることや、製造の中でサステナブルな取り組みをしているかどうか考えて使うこと」なのではないかと思った。毎日は難しい。毎回のお買い物で気にし続けるのも苦しい。けれどちょっとだけでも日常で意識してみたい。ただ欲しいものを自身の利益のみで消費していくのではなく、生産者に想いを馳せたり、消費の後の循環を想像したりすることがサステナブルな消費になるのではないかと考えた。

例えば、私たちがこのコロナ渦で日常的に使用している消毒用のアルコール。私は毎日何回も使っているのに、どんな成分でできているか、どんなところで作られているのか、恥ずかしながら気にしたことがなかった。現在主に流通しているエタノールは安価な現在料でできており、石油由来のものと発酵由来のものがある。発酵由来のものは、キャッサバ・サトウキビ・トウモロコシなど大量に収穫することで安価にすることができた原材料を使用している。大量生産・大量消費によって安定供給されたアルコールを私たちは毎日便利に使わせていただいているのだ。こういったことをこの講義日まで全く知らなかった。ファーメンステーションのサステナブルアルコールは、こうした安価な価格で安定供給されている市場に出ていくことになる。

そういったときに果たしてどれだけの人が買うのか。これまでの私だったら、何の疑いもなく、価格に目を奪われ、きっと安くて世に流通してて、どこでも買える便利なアルコールを使ってたと思う。ファーメンステーションのアルコールは、大量生産ではなく、1つ1つ丁寧に理念を大切に高い技術力で未利用資源をアルコールにしているため当然価格は高くなってしまう。しかし私は、その過程そのものが価格以上の価値があるのではないかと思った。サステナブルな取り組み自体が、世に流通しているものと違う価値を見出していると感じた。そう思ったから、これまで価格に捉われて買い物をしていた私がファーメンステーションの取り組みを聞いて応援したいと思い、サステナブルアルコールを実際に購入するワンアクションを起こすことができた。リンゴの搾かすや、ゆずの皮、規格外で廃棄されるはずだったバナナ、休耕田を再利用してできたお米、そうした未利用資源を発酵させてできたアルコールがどんなものなのか興味が沸いたし、そうしたサステナブルな取り組みを応援したいと思う変化が生まれた。これは取り組みを「知る」ことによって生まれた変化だと思った。

私が価格に関する質問を酒井さんにしたとき、「既存のアルコールと価格競争すること自体が間違っていると思う。環境負荷が価格に反映する時代ももしかしたらこれからくるかもしれない。価格が高いからという理由だけで、事業を諦めずに根気比べで粘ってやると思う気持ちでやっている。」とおっしゃっていたのが印象的だった。

市場に出回る価格内で作らなければ売れないメカニズムがたしかに世の中にはある。大量生産・大量消費によって、安価で便利で効率的になった世の中。もちろんそうした恩恵も日々わたしたちは受けている。しかし効率だけを求め続けてしまうと、環境負荷といった過程のことに目がつけられなくなってしまう。だから効率のみを重視するのではなく、サステナブルな取り組みをしてるその過程に目を向ける必要が出てきた。まずはそういった取り組みを「知る」ことが大切なのではないかと思った。そして「知る」機会が増えて、多くの人が取り組みという生産者の想いを認知できたとき、大量消費とサステナブルな消費という相反する両方の商品が同時に市場に出回ることができ、消費者が意識的にどちらかを選択できるようになるのではないか。そんな社会になっていったらいいなと思う。そのためにまずは、今日から私も一消費者として、サステナブルな消費を考えながら買い物をしていきたい。





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