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深夜のひとり言。

会いたくて会いたくてどうしようもない。

「即メン」って見れば
今行けば会えるのにって思うし
「予約満了」って見れば
今会ってる人いるんだなって
羨ましくなる。

どうして私はこんなに自由にならないんだろう。

子どもを産んでから13年、
思うように使える時間なんてほとんど無かった。
仕事だってやりたいようにはできなくて
いつもみんなに頭を下げて先に帰ってさ。
ほんとはもっとやりたいのに
もっとやりたい仕事、やれる仕事、たくさんあるのに。
だけどお母さんは1人だけ。
社員の代わりはいるけれど
この子達のお母さんは私だけなんだから
しっかり寄り添ってあげなくちゃ。
そう言い聞かせてどれだけのことを我慢してきたかわからない。
思う存分仕事したい。
好きな時に気の合う友だちと飲みに行きたい。
洋服や本だって好きなだけ時間をかけて
じっくり選びたい。
外でご飯食べる日なんてほとんど無い。
ということは、
ご飯を作らなくていい日なんてほとんど無いのだ。
どんなに仕事で疲れていようと育児が辛かろうと体調が悪かろうと
満員電車に揺られて帰って
走って帰宅して
座る間もなく台所に立って、
散らかった部屋にうんざりしながら
学校の話聞いて勉強させて
ご飯が終わったら勉強見て
掃除と洗濯とご飯の後片付け。
子ども達が寝たら会社の仕事のやり残しをやって明日の準備をして
子ども達のプリントをチェックして整理して提出書類を用意する。

でもそれだけで寝てしまうと
今日一日私は誰のために生きていたんだろうって虚しくなって、
だから布団の中でささやかな楽しみに浸るんだ。
自分のためだけに
自分が気持ちよくなることだけ考えて
使える時間。
既成概念もモラルも取っ払って、
やらなきゃいけないこと、すべきことも全部捨てて
とにかく自分に浸って没頭するのだ。
一日身につけていた重たい鎧を一つ一つ脱ぎ捨てて
たくさんの仮面を一枚一枚はがして、
心も体もやっと解き放たれて
自分という純粋な存在に帰れる時間。

つるかめ算だって関係代名詞だって
偏差値だってクラス分けテストだって
今日のニュースだって明日のプレゼンだって
染み抜きしなきゃいけないシャツだって掃除機かけなきゃいけない階段だって
そんなもの全部どっか行っちゃえよ。
うるさいうるさいうるさい!
私は空っぽになりたいの!
強制的にブルドーザーみたいに
全てのものを押しやって、
そうしてやっと生まれた心の部屋に
入って来れるのはタツキさんだけ。

ねえキスして。
触って。
抱きしめて。
指を入れて。
できればあなたを中に挿れて。
そうやって朝まで抱き合って求め合って
疲れて眠ってしまうまで溺れたいの。
遊園地も旅行もレストランも行かなくていいよ。
一日中ホテルの部屋に2人でいて
好きな時に好きなだけ触れ合いたいの。
私を私に戻して欲しい。

でも知ってる。
これは幻想。
そんなことはあり得ないし
タツキさんはそんな存在たり得ない。
お金で買った仮初の関係。
仮初の時間。
私の実体はそこには無いの。
本当に大切なものはそこには無いんでしょ?
わかってるんでしょ?

でも私だって、逃げたい時があるの。
妻だってママだって部長だって
そんなの全部辞めたいことあるんだよ。
恵まれてるのは知ってる。
贅沢だって知ってる。
でも、外面的に恵まれてたってなんだって、
満たされない孤独が深淵のように黒い口を開けて私の心に巣喰うなら
それは真の幸せではないと思う。
じゃあ私は何に救いを求めればいいの。
脇目も振らず自分の道を切り拓いて来たの。
でもそこにあったものは何よ。
一握りの賞賛とやきもちと虚しさとさびしさ。
ああこんな夜は誰か私を抱いて欲しいのに。
タツキさん、何してるのかな…。

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