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「対新潟シフト」2021.05.16 FC町田ゼルビア vs アルビレックス新潟 J2第14節マッチレビュー

ここまで負けなしの首位新潟をバックスタンド杮落としの試合で破るという出来すぎな試合だったと思う。それと同時に、ここまで熱くなる試合は久しぶりだったし、このチームの戦い方がハマれば上位相手でも引けを取らない試合ができると改めて感じた。

そしてポポヴィッチ監督は奥山政幸と三鬼海のサイドを入れ替えて、相手のストロングポイントである本間至恩を抑え込むという今まで見られなかった勝利への拘りを見せた。

以下では対新潟用の守備と見えてきた新たな攻撃の形について見ていきたいと思う。

スタメン

スタメン

ゼルビアは先ほども言った通り、SBの左右を入れ替えた。また、平戸太貴がCHに入り、太田修介が2試合ぶりのスタメン。

新潟は鈴木孝司がケガから復帰し、待望の野津田凱旋。STだった谷口海斗が右WGに移った。4-2-3-1。


左誘導のプレス

相手が新潟であろうとなかろうと左誘導のプレスを行ってきたゼルビア。私はその理由は左SBがリーグNo.1SBの奥山で、そこでボールを奪いきることがチームで共有されているからだと思っていた。しかし、この試合で奥山は右SBだった。にもかかわらず、ゼルビアは変わらず左誘導のプレスを行った。その理由は本間のいる右サイドでボールを持たせたくなかったからだろう。

新潟のビルドアップの形は右SB肩上げの3+2で行われ、時々島田譲が最終ラインの落ちてくるような感じ。開始40秒くらいで先制に成功したゼルビアは、ハイプレスに行く必要はないので、センターライン付近からブロックを形成し新潟の攻撃を迎え撃つ格好。

中央にボールがあるときは中島裕希か長谷川アーリアジャスールがボールホルダーに規制をかけに行き、残りの一人がCHを監視。サイドにボールが流れたら、SHが出てきて前方の矢印を消す動きはいつもと変わらず。

しかし今節は右SH吉尾海夏があらかじめ高い位置を取って、相手をけん制してボールを左サイドに誘導する意識が強かったように感じた。新潟の左SB堀米悠斗が左利きでボールの持ち方を考えると、このけん制が思った以上に効果的だったのかもしれない。

中央はいつもよりもCHが前に立ち位置を取り、高宇洋と島田の中盤2人に前を向かせない、さらには降りてボールを貰おうをする高木善朗の周りのスペースを消して、最終ラインからの縦パスが入るのを未然に防いでいた。

左誘導のプレス

その結果、新潟は左サイドへと誘導されるのだが、太田の背後にいる右SB藤原奏哉にボールが回っても、三鬼のプレスが早く自由を与えることは少なかった。また右WGの谷口が内側に入って2トップのようになるのもありがたかった。谷口がサイドで裏を狙うようなことがあれば、CBがサイドに引っ張られピンチも増えたと思うが、谷口は中央から背後を狙おうとしていたのはラッキーだったとしか言いようがない。コージと谷口を同時に起用した時の最適解が見つかっていなかったのは幸運だった。

サイドから侵入された時は、CHがサイドに寄ってきて数的優位を作りボールを奪い、カウンターに繋げていた。新潟が簡単にクロスを上げず、折り返しのパスが多いのもいいように作用し、横のスライドがいつもより早かったため、パスコースを消す、ボールを引っ掛けることに成功していた。

時間が進むにつれ、スペースが生まれたりスライドが遅くなるのはやむを得ないが、今節は途中交代で入った酒井隆介が効果的で、2018年のような雰囲気があって酒井ちゃんのコンディションが上がってきていることを感じさせるパフォーマンスで、層が厚くなってんなーと感じた。


新たな攻撃の形

ポポヴィッチ体制になってから中央攻撃が主体だったゼルビアに新たな得点パターンが生まれている。

そう、右サイドからの攻撃だ。コンビネーションからワンタッチで3~4人を経由してフィニッシュや高速ワンツーからのクロスなどその中でも崩し方はさまざまである。

この試合の1点目はスローインから、2点目はサイドチェンジから手数をかけずにサイドの奥を突いてクロスを上げた。

この右サイドで崩せるようになったのは、やはりアーリアの存在が大きい。今までのゼルビアには居なかった背負って時間を作り、且つ攻撃の組み立てやラストパスを出せる選手だ。コージはそれに近かったかもしれないが、彼は点を取るために相手を背負うからまた別タイプな気がする。

この時間を作るというのは特に重要で、攻撃でより強みを発揮する髙江麗央がここに関われる時間を作れるので、ペナルティエリア周辺でより怖さが出る。また、SHが前を向いた状態でボールを受けれるので、チームとして重要視している縦に速い攻撃に拍車がかかる。アーリアがいるだけで攻撃のクオリティが上がるのだ。

あとはもう一人、ここで書いておきたい選手がいる。吉尾海夏だ。ここ数試合で精神的に一回り成長した気がする。昨シーズンのアウェイ琉球戦の退場のように結果にこだわりすぎて、得意であるカットインからのシュートや左足でのプレーに固執していた。しかしここ数試合では、左足を囮にして縦にボールを持ち運んで右足でのプレーで相手のプレーを惑わせている。このことに本人は生き生きしているように見えるし、自分に与えられたタスクと自分のこだわりに上手く折り合いをつけてプレーできているなと感じた。

右サイドでクロスを上げられると、左SHに右利きの選手を置くことの効果も出てくると思うので、これからが楽しみである。


試合結果

町田 2-1 新潟
得点者:1' 三鬼海
    11' 太田修介
    62' 堀米悠斗

さいごに

この試合に勝てて良かったなと色んな意味で思う。現場の選手や監督は首位の新潟に勝てたことが自信に繋がると思うし、バクスタ目当てで久しぶりに野津田に来たサポーターや他サポの人にまた来たいなと思わせることのできる試合ができたし、行政やスタジアム建設に関わった人にも作って良かったと思わせることのできる試合ができたのではないか。

コージもこう言っているしさ。

--町田とひさびさに戦った感想とスタジアムの感想は。
横ズレの速さ、プレッシングの仕方は、相馬(直樹)さんの実績が残っている。それが僕たちはやりづらかった。スタジアムは、すごく懐かしかった。僕が町田にいた頃よりバックスタンドが大きくなって、ここにもっと人が入れば、すごいスタジアムになっていくんだろうなと思いました。


今節もお読みいただきありがとうございました。

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