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【映画】ダニーボイル監督『イエスタデイ』について

3年程前にイギリスのR&Bのシンガーソングライター、エイミーワインハウスのドキュメンタリー映画『AMY』に酷く心を打たれて以降、ドキュメンタリーや実話を基にしたフィクション、完全なフィクション作品問わず、ミュージシャンを扱った映画を選ぶことが増えたように思う。
『ジャニス』、『This is It』、『ホイットニー』、『エリッククラプトン』といったドキュメンタリー作品、『ボヘミアンラプソディー』や『ロケッマン』『ジャージーボーイズ』といった実話を基にしたフィクション、『ギター弾きの恋』や『アリー』、ジョンカーニー監督の『once』、『SiNG STREET』、『BEGIN AGAIN』といった完全なフィクション。
その中でドキュメンタリーや実在の人物を扱ったフィクション作品を取り上げてみると、その殆どが一般人には想像も付かない程高額の「有名税」を支払った悲劇的な結末を迎えているものが目立つ。
『ロケットマン』などもハッピーエンドではあるものの、それもあまりにも高額の支払いを終えた後のことだ。

そして今回紹介する本作、ダニーボイル監督作品『イエスタデイ』は、恐らく上記のことを意識したアンチテーゼ的な作品だと思う。


STORY
売れないシンガーソングライターのジャック(ヒメーシュパテル)は、働きながら幼なじみのマネージャーのエリー(リリージェームズ)と共にどさ回りを続けている。
そんなある時、12秒に渡って世界規模での大停電が起こり、ジャックは交通事故に遭う。
ジャックは退院後の快気祝いでふと思い立って歌ったビートルズの「イエスタデイ」が大受けする。しかも、誰でも耳にしたことのある筈のビートルズソングを誰も知らないというではないか。
そう、ジャックは「ビートルズが存在しなかった」パラレルワールドに迷い込んでしまったらしいのだ。
ジャックはそのことに戸惑いながらも、ビートルズの楽曲を披露し、エリーから離れ、敏腕マネージャーの手によりあっという間にスターへの階段を登っていく。

ミュージシャンを扱い、そして悲劇的な結末を迎えた映画の多くはレコード会社の人間やマネージャーや親族、その他取り巻きに人間性を無視したキャッシングマシーンとして扱われる。彼らはその為に誘惑し、陥れる。結果、ミュージシャンは人間不信に陥り破滅への道を行く。

ちなみに、『アリー』のラストは最愛の人を亡くしたことを契機にして、作られた箱入りのアイドルではなく、本物のスターとなって失意の底から蘇るという象徴的なシーンで終わる。

さて、では本作『イエスタデイ』はどうかと言えば、ジャックは「自分の楽曲ではない」という罪悪感もあって自分を見失う前に成功への階段を下りることを決意する。

とても単純でありそうな話だが「あまりにも高過ぎる有名税を払い過ぎた」数々のミュージシャンの映画を伏線としてこの映画はハッピーエンドとして成立するのではないだろうか。

それから、この手の映画の良し悪しはヒロインに負う所も大きいと思う。
本作のヒロインのエリーを演じたリリージェームズは、最初は何にも感じなっかったが、終盤には酷く可愛くみえてくる。
これはこの手の良い映画の特徴だろう。

エドシーラン本人出演での即興作曲対決などでビートルズの楽曲の良さを感じられる映画であり、ほっこり安心して見れる映画だと思います。


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