りんふぁん

頑張らない美術館学芸員です。

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マガジン

  • La joie de vivre

    撮りためた喜び

  • とどめの愛撫で

    誰と出会うのか、よりは いつ出会うのか、の方が重要に思えた。 でも、誰にも正解はわからない。 君と出会わない先の未来に、運命の人と出会うと何故わかるだろう。 不幸であろうとする32歳と、愛に戸惑う22歳。お互いを欲しても、とどめは刺せないでいる。

  • 言葉の箱

    好きな言葉の詰め合わせ

  • 氷点下32度の私たちは

    カナダ、北緯63度、氷点下32度。 一面、白銀の世界。 私はあの極北の地で、全く別人格だった。 皆もだ。 あそこにしかいない人が、たくさんいた。 氷点下32度の私たちは ———

  • 極北の雑多な記録

    カナダの極北ですごした日々のこと、出会った人たち。

最近の記事

  • 固定された記事

Introduction. 愛してくれると、信じたかった。

寂しかった。 女性用風俗を利用するのはこれで3回目。 3回目で、私は出会ってしまった。 初めて女性用風俗に足を踏み入れたのは、20歳くらいだったと思う。 まだ学芸員になる前で、近代西洋美術史を研究していた。 ろくに愛など知らないくせに、 愛を主題にした絵画を目の前にして途方に暮れていた。 好きな人が居たこともあるけれど、自分から告白する勇気はなかった。 告白されたこともあるけれど、その人を好きになれる自信もなかった。 そのくせ、人並に、男でも女でも、誰かに触れ

    • バルセロナのデモ、秋

      • Xに書ける場所がなくて、すみません。 金銭的に不安すぎるので、やむを得ず限定的にチャトレ始めたんですけど、始めて2週間ですでに学芸員の月給の半分稼げてて辛いな。というか虚しいよな…でも体力的にも精神的にも死ぬ。ブログはほぼ放置してるので不労所得助かる。

        • 固定された記事

        Introduction. 愛してくれると、信じたかった。

        • バルセロナのデモ、秋

        • Xに書ける場所がなくて、すみません。 金銭的に不安すぎるので、やむを得ず限定的にチャトレ始めたんですけど、始めて2週間ですでに学芸員の月給の半分稼げてて辛いな。というか虚しいよな…でも体力的にも精神的にも死ぬ。ブログはほぼ放置してるので不労所得助かる。

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        • La joie de vivre
          13本
        • とどめの愛撫で
          4本
        • 言葉の箱
          61本
        • 氷点下32度の私たちは
          4本
        • 極北の雑多な記録
          3本
        • 【実録】愛してくれると、信じたかった。
          28本

        記事

          最近不妊治療を始めて気を病み...やる気というやる気がなくなってしまいました...ズーンと...沈んでます。こんな時に、元父親の件で司法書士さんと会わなければならなくなり更にズーン...。昔から気持ちを立て直すのが下手なの、どうにかしたいと思いつつ出来ずになかなかね...。

          最近不妊治療を始めて気を病み...やる気というやる気がなくなってしまいました...ズーンと...沈んでます。こんな時に、元父親の件で司法書士さんと会わなければならなくなり更にズーン...。昔から気持ちを立て直すのが下手なの、どうにかしたいと思いつつ出来ずになかなかね...。

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          深ける浅草

          深ける浅草

          この手の不倫の話出るたびにニーチェの「倫理は弱者が作り出した虚構、強者の足引っ張るため」みたいな話(テキトー)が思い浮かぶんだけど、ふーん正しいかもねとも思うし、不倫は顔が悪くても金がなくても弱くても(から?)できるけどねとも思うから、ちゃんとニーチェ読む?(読まない)

          この手の不倫の話出るたびにニーチェの「倫理は弱者が作り出した虚構、強者の足引っ張るため」みたいな話(テキトー)が思い浮かぶんだけど、ふーん正しいかもねとも思うし、不倫は顔が悪くても金がなくても弱くても(から?)できるけどねとも思うから、ちゃんとニーチェ読む?(読まない)

          とどめの愛撫で 4

          最寄りの駅で待ち合わせした。 宇田さんの家で、ご飯を食べる約束だ。 雨なんて降る予報じゃなかったのに、駅に着いた頃には強い雨が降っていた。 「えー、お前、自転車で来たのかよ」 「雨なんて天気予報で言ってませんでしたよ」 神谷がハンカチを頭に乗せ自転車を押し始めると、宇田は「ほら、」と言って傘の中で手招きする。 「どうも。すいません」 片手でハンカチをポケットにしまう。傘の中に入ると、冷気で冷え切った肩同士が触れ合った。宇田が肩を引く。 「で?子上さんとは、どうなん

          とどめの愛撫で 4

          とどめの愛撫で 3

          本人は頼っていないつもりだが、結局のところ宇田さんは結構僕に頼っている、と神谷は思う。 しばらく天井を見つめてから起き上がり、遮光のカーテンを引くと、目の前でカラスか何か、鳥が飛び立つのが見えた。 眩しい。 窓のすぐ外には小さな公園があり、その奥には最近改築したばかりの小綺麗な団地が続いている。 神谷はテレビのスイッチを入れ、冷蔵庫から麦茶の入ったポットを取り出した。 "おはようございます 7月14日のお天気をお知らせします" 3年前に大学の先輩からもらった24イ

          とどめの愛撫で 3

          でもわかっていた。私には何もできないのだと。私には手出しできない場所に、このひとはもう人生を築き始めている。 - 江國香織

          でもわかっていた。私には何もできないのだと。私には手出しできない場所に、このひとはもう人生を築き始めている。 - 江國香織

          とどめの愛撫で 2

          「ほんとに、気をつけて帰ってくださいよ」 宇田にそう告げて、しばらくその背中を見つめる。 後悔している背中だ。 神谷にはそれが分かった。 この人はいつも後悔している。 宇田を助けるのは、とても難しい。 なぜ難しいかというと、あの人は不幸になりたがっているからだ。自ら進んで、傷つこうとしている。 神谷が手を差し出して引っ張り上げようとしているのに気づきながら、いつまでも手を取ろうとしない。 不幸であろうとする人を助けるのは、本当に骨が折れる。 * * * 約束の

          とどめの愛撫で 2