見出し画像

〆その温もりを感じて

「ずるいです」

今の彼氏を初めてアパートに呼んだ日。


まだ、私には忘れられない人がいて
でも、今の彼氏に言い寄られてて。

そんな状況の3年前。

私は、その時の好きな人とセフレの関係になって、
連絡しても私が求めてる時は会ってくれなくて、
寂しくて仕方がなかった。

そんな時に今の彼氏、

「俺なら、今の好きな人を忘れさせるくらい、好きにさせて見せます」

私はそんな真っ直ぐで純粋な気持ちに漬け込んで、自分の寂しさを埋めた。

「今日、アパート遊び来ない?」

好きな人に振り向いてもらえず、1人でお酒を飲んで寂しかった。

冬の夜の空は、心が痛くなるくらい澄んでて、月が凄く綺麗で。

好きな人と、こっそり海で会った夜を思い出して、

もう、次会ったら会えなくなるのかな。

って、お酒飲むと更に悲しくなった。

「行きます。今すぐ行きます。」

もう誰でもいいから、私と一緒に寝て欲しい。

30分くらいして、着いたってLINEがきた。
近くで待ち合わせて、そこに車を置いて
一緒に歩いてアパートにむかった。

「俺、都合のいい男にはなりませんから。」

夜の街灯の下で彼はそう言った。

彼をふと見た姿は、

急いできたんでしょ、

って言いたくなるような髪の乱れ。


「がんばって〜」

空の星を見ながら私は言った。

この人を好きになれたら、どれだけ楽なんだろう。


そんなことを考えながら、アパートに向かった。

「お邪魔します」

ソワソワした彼は、

「俺、女の子の部屋に入ったの初めてです。」

緊張してる顔、分かりやすい。

なにをするわけでもなく、夜中だったから、各自ご飯も食べてたし、お風呂も入ってたし、

「そろそろ寝る?」

私がそういうと、アパートのかたいフローリングに寝そべって、

「俺、ここで寝ますから」

おいでよこっち、って私のベッドを指差しても、

「いいです、俺ここで寝ます。」

ほら、おいで

腕を引っ張って、ベットまで来た彼は、案外すんなり、私の隣に横になって、

なんだよ来たかったんじゃん。

って思いながら、

背を向け合って寝た。

この次に絶対何かが始まるような沈黙。
正直、心地いいというか、好きだった。

「まだ起きてますか?」

「うん」

「少し、くっついてもいいですか?」

「いいよ」

背を向けて寝ている私がそういうと、彼はごそごそとこちらを向き、私の首の下から腕を入れ、抱きしめてきた。

「都合のいい男にはならないんじゃないの?」

私がそう言うと、

「なりませんよ」

なんだか、こんなに、大事に抱きしめられたことは今までなかったな、と自分の背中から感じる温かさに驚いた。


こんなに温かいのか。


私から見えるのは彼の腕だけ。

その純粋な温かさに愛おしさを感じ、腕にキスをした。

「それはずるいです。」

「ごめんね」

彼にそう言われながら、そのまま私は寝てしまった。

あんな温かさ感じたことがなった。きっと普通のことなのに、心地いい温かさを感じた。

朝になり、

「おはよう」

「あれ、都合のいい男になってない?」

「いや、俺なんもしてませんから笑」

なんて笑いながら、

私達はその2ヶ月後付き合った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?