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彼は引くほど、素直だった。

「ねえ、もう友達になりたい」
『もう、ストレートでいいよ』
「…別れたい」

随分と投稿していなかったが、2ヶ月前に彼氏ができた。そして、別れた。22歳にして、初めての彼氏だった。2歳年下の大学生だった。出会いは友達の紹介で、連絡先をもらった。

「ね、電話しない?」

直接会ったことはなかったが、ラインでの会話も続いたので電話に誘った。

『いいよ』

電話が始まっても彼は全く話さなかった。これ、電話の意味あるの?ってくらいに無言で、私ばかりが話していた。つまんないんだなあ、と思った。

「もう切るね」

初めての電話は5分も続かなかったと思う。それから数日後、また彼から連絡がきて、電話をすることになった。

『この間は、ごめん。女子と電話するの久しぶりだったから、緊張して』

”なにそれ、可愛い。”

その後は普通に会話が進んで、会おうって話になった。

写真しか見たことはなかったけど、彼はイケメンだった。182㎝で色白で、笑うと顔がクシャってなった。

買い物をして、次に会う約束もした。お互い映画が好きだったし彼の家で映画を見ることにした。
夕方、仕事終わりに彼の家に行くと、料理をしていてくれた。凄く嬉しかった。男の人の手料理なんて食べたこと無かった。

『ピザ食べたいって言ってたから』

スライスしたジャガイモの上にチーズとケチャップがのったピザで、どうやって作ったの!!凄い!ってはしゃいだ。
その後、映画をみて2人でベットに入った。

『したい』

彼は、引くほど素直だった。

いや、ムードは?ってなったけど、彼氏とかいたことなったし、こんなもんなのかなって思った。

「いや、今日はちょっと…
私らまだ付き合ってないし…」
『キスしたい』
「付き合わないとできない」
『じゃあ、付き合おう』
「”じゃあ”?」
『俺、今日、本当に凛花さんが来てくれるの楽しみにしてたし、じゃなきゃ料理なんてしないし、本当に会ったときから付き合いたいって思ったよ』
「…”じゃあ”付きあおっか」

完全に折れただけだった。
男性から、私を求めてくれるなんて嬉しかった。

「でも、今日はできないから」
『なんで…?』
「やだ」

分かった、と彼は言うとキスをして2人で寝た。

そして、私は22歳にして初めての彼氏ができた。

彼のアパートまでは車で1時間くらいかかった。
彼に会うときは私が車をだした。彼は学生で車を持っていないからで、 

『俺、助手席気に食わない、いつも来させてごめん』「いいよ、私新車だしいっぱい乗りたくてうずうずしてるから」

そう思ってくれてるだけで嬉しかった。

「いつか、私のこと助手席に乗せてね、それまで仲良くしようね」

彼がバイトの日は、バイトが終わるまで彼の家で待った。

『家に帰ったら凛花さんがいるシチュエーション俺にとっては最高なんだけど』

と言ってくれた。

付き合ってから1ヶ月くらいして、彼がラインを返してくれなくなった。なんかしたっけと思っていたら電話しよう、と連絡がはいって

『この間、バイト先の人とご飯いった』
「そうなんだ、えっ、女じゃないよね?」
『女よ』

彼は引くほど素直だった。

「…私が他の男と2人で夜にご飯行ったら嫌じゃないの?」
『別に。俺、嫉妬とかあんましないし』
「もういいよ」

不安なのは私だけなんだ。
それから、彼のと私の価値観のズレが生じた。

「次はいつ会える?」
『分からない、会えそうなとき連絡する』

ラインをしても既読無視された。

「1日1通でもいいからラインはしてたい」
『俺、ラインとかずっとしてるの
業務的で嫌なんだよね』
「分かった」

ラインもしなくなった。

仕事でしんどいとき、少し愚痴をこぼしたら
『なに?それって、俺になんか言って欲しいの?
同情とか欲しい?』
「ひどいよ」
『なにが?』
「私が傷つかないとか思ってるの?」
『分かんない、俺社会人じゃないし』
「そうじゃない」
『なに?』
「もういいよ」

本当に、あの時の彼と同じ人?そう思った。

連絡をあまりとらないまま、
付き合って2ヶ月の日になった。

『電話する?』

珍しく、連絡が来て嬉しかった。
電話を始めても、彼はテレビを見ながら話していて全く私に反応してくれなかった。
私は何とか話そうとしたが、変なところで怒られたりして、もう限界だった。

「ねえ、1回友達にならない?」

こんなのでも、まだ別れたくは無かった。まだ、お互いが考えるような時間が欲しかった。

『なんで唐突に?』
「ごめん」
『俺、友達いないから分かんない』
「友達なろうよ」
『…それってさ、結局別れたいってことでしょ?』
「私の言いたいこと分かる?」
『ストレートに言ってよ、本質は同じじゃん』
「もういいよ、別れよう」
『バイバイ』
「むかつく」

私が聞きたかったのは
「今日で2か月だね、これからもよろしくね」とか
だったんだけどなあ。

めんどくさい女でごめんね。2か月の日私たちは別れた。彼はすぐにSNSの投稿やフォローを外していた。

彼は引くほど素直だった。


                    つづく


                           




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