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あっぱれマーちゃん物語 2

第二話  思い出

ここはあっぱれ星若殿様のお屋敷です。退屈な若殿様のマーちゃんはお目付け役の爺のツナモッちゃんとお話しをしています。

「ですから、以前に退屈じゃとお屋敷を抜け出して、とんでも星団まで行って大変な目にあってますのじゃからおとなしくなされてくだされ」

「そうは言っても、退屈なものは退屈なのじゃ、あ~ぁ面白いことないかな」

さてさて、マーちゃんはその昔大変な事件を起こしてしまったことがあったのです。

その時のこと、マーちゃんは余りにも退屈だったのでお屋敷の蔵に隠してあった非常用の宇宙船で勝手に宇宙に遊びに行ったのです。そろりそろそろ、ぬきあしさしあし、音をたて無いようにお屋敷の蔵に忍び込みました。

「しめしめ、誰にも見つからずに来れたぞ」

ガチャン。

「しーー、静かに」

自分で開けた宇宙船の扉の音に驚きました。

「どれどれ、どうすれば動くんだっけ」

マーちゃんはまだ自分で宇宙船を操縦したことがありませんでした。以前に乗ったときは、大殿様の部下のパイロットが操縦しました。それを見てちょっとだけ覚えていたのです。

「最初は、たしかこれだったな」

宇宙船の中が明るくなり、静かな振動が伝わってきました。

「よーし、これだ」「えーと次は」

マーちゃんが椅子の横にあるレバーを引くと、蔵の屋根が開いてシュンと天空へと飛び立ちました。よくあるマンガでは失敗して宇宙船をぶつけたり、建物を破壊してしまうのでしょうけれど、そんな面白いことは書きません。

「やったー」

宇宙船は漆黒の宇宙へと飛び出しました。宇宙船は光の速さで飛んでいきます。マーちゃんのいる六次元では、光の速さで飛んでも時間が変わることはありません。なぜって聞かないでください。そういうものなのです。

「さてどこへ行こうかな」「そうだ、赤赤星団へ行ってみよう」

赤赤星団とは、マーちゃんのロクボウ星団のある銀河のとなりのとなりの銀河にあります。どっちのとなりかは言えませんが、そこは危険な星団なので決して行ってはいけないところなのです。

「そこは行くなと言われているけど、そう言われると行ってしまいたくなるのが若者なのだ」キラリ*

嬉しそうに目を光らせたマーちゃんは、赤赤星団へと近づいていきます。

「わあ、みんな赤だ」「ようし、あの星に降りてみよう」

目の前に迫ってきた煙突が突き出たような、まあるい星へと降りて行きました。この頃には宇宙船の操縦にも慣れてきました。科学が超進んでいる六次元では、宇宙船の操縦でもとてもシンプルで簡単なのです。

地上に人が見えてきました。人???人のようですが、何か違います。頭は丸いのですが、手か足か分からぬものが・・・んーと、1・2・3・・・・どうやら八本確認できます。みんなが嬉しそうに手、いや足?を振っています。

「思ったとおりだ。みんな歓迎してくれているぞ」

マーちゃんは上手に宇宙船を操縦して地上へと降りて行きました。宇宙船から降りるとその歓迎ムードはますます盛り上ります。くねくね踊っているものもいます。よく見ると口がみんな突き出ています。地球で言えばタコですかね。マーちゃんを取り巻いて嬉しそうです。

チャンカチャンカ、チャンカチャンカ、タコ踊りです。

するとそこに群衆をかき分けて、ひときわ大きなタコのような星人がやってきました。手には日の丸扇の付いた長い杖を持ち、頭には金色の冠をかぶっています。まさしくここの王様でしょう。

「ちゃったこ、ちょったこ、つつちょねちょ」

王様らしきものがマーちゃんに語りかけてきました。マーちゃんは意味不明な言葉に、たぶん歓迎の言葉だろうと思い、にっこり笑って挨拶を返しました。

「こんにちわ、みなさん。歓迎してくれてありがとう」

そう言って握手しようと手を差し伸べました。すると王様らしきものが両手を広げてマーちゃんに近づいてきました。とても嬉しそうです。王様はマーちゃんを抱き寄せるとほっぺにキスをしました。マーちゃんの顔がゆがむほどの吸引力です。まあ、タコですから当然といえば、当然でしょうけどね。

「ちょっと、吸い方がきつだす」

ますます吸い込まれていくほっぺたにマーちゃんは苦しくなってきました。その時です。王様の杖の先に付いていた日の丸扇がマーちゃんの頭にくっつきました。それを見た群衆は我先とマーちゃんめがけて駆け出しました。すると、あっという間にマーちゃんの全身にキスをし始めました。

「ううう、く苦しい」

マーちゃんの顔が青ざめてゆきます。やっとマーちゃんが気づいたようです。マーちゃんはこの星の住人にとっては食料だったのです。ですから、マーちゃんがやってきた時には星人たちは大喜びしたわけです。餌は王様が最初に食べるのが決まりのようで、杖についた日の丸扇が餌の頭にくっついた時が、みんなも食べていいよのサインだったわけです。

「ぐぐぐぐぐぐ」

マーちゃんは徐々に干からびていきます。このままでは死んじゃうのも時間の問題でしょう。そして、この物語もこれでおしまいとなります。とはなりませんよね、今までのお話は思い出話しですからここで漫画のような奇跡が起きてマーちゃんは助かるはずです。

マーちゃんの生命活動が弱くなっていくと、宇宙船の警報器が鳴り出しました。マーちゃんの生命状態は宇宙船が常にモニターしているのです。そして緊急信号が六芒星団のあっぱれ星の大殿様まで伝わりました。

「わが息子の一大事じゃー。全員戦闘配置について宇宙船に乗り込め」

大殿様の号令のもと、一斉に戦闘宇宙船が飛び立ちました。

「もたもたするなよ。一気にワープじゃ」

超科学のもと、船団は瞬間に目的地の赤赤星団へと現れました。

「若を助けよ」

大殿様の命令で一斉に攻撃を始めました。星人たちも反撃に出ます。口から黒い光を放ちます。その光は宇宙船に当たると全体を真っ黒にして動けなくします。すごい戦いが続きます。船団の一部がその黒い光をくぐり抜けてマーちゃんの元へと向かいます。マーちゃんはもう身動き一つせずに、スルメのようになっています。

「そりゃータコ焼き光線だー」

ぐるぐると回る光を発射すると、タコ星人たちはマーちゃんから引き離されて行きます。最後に残った王様は一斉射撃を受けて吹っ飛んで行きました。

「いまだ。助けよ」

司令官の言葉が終わらぬうちにマーちゃんは助け出されました。

まあ、そんなことが以前にあったので、監視役に大殿様がツナモをそばに置くようになったのでした。

今回はここまで、またね~



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