人の顔を覚えるのが苦手という病
ある日ジムで、80代のスキンヘッドのおじいさんと他愛のないことを喋った。
ところが次にあった時、その場に80代とおぼしきスキンヘッドのおじいさんが3人いた!
私は前に話したおじいさんが誰かわからなくなってしまった。
目があったら挨拶しようと思ったけど、誰とも目が合わないし。
結局、また別の機会にそのおじいさんが話しかけてくれて、むこうから話しかけてくれることが3回くらい続き、私はようやくそのおじいさんを覚えることができた。
正確には、覚えたのではなくて、見分けられるようになっただけ。
そのおじいさんは、他のおじいさんより「足首がほそい」という特徴があったから!
私は今も足首を見て、その人だと判断している。
私は、人の顔を覚えるのがすごく苦手だ。
単に物覚えが悪いのかもしれないし、初対面の人とあまり目を合わせて話せないせいもあると思う。
人の目を見ると、自分のことを見ている瞳に、なんだか怖くなってしまう。
深淵を覗く時、深淵に覗き込まれている、という言葉を思い出してしまう。
相貌失認とまではいかないかもしれないけど、ちょっとそれに近いものがあるかもしれない。
病名がつけば病気とされるけど、病名がつかなくともその症状がある人はいる。
病気も性別のようにゆるやかな黒から白へのグレーになっていて、私は相貌失認の白に近いグレーにいると思う。
何回か会えば覚えられるけど、数回しか会わないとなかなか覚えられない。
男性は、特徴がないから覚えにくい。
逆に女性は、特徴が変わるから、覚えにくい。
女性は髪型や髪色を変えられるとわからなくなるし、日によって化粧も違ったり、マスクの色も変わったりするし、同じ人と認識することが難しい。
マスクをしてる顔、してない顔、メガネをかけてるときの顔、そうじゃない顔では、1人の人で2人分覚えないといけない状況になり、なおのこと難しい。
子育てで何年も引きこもっていたのだけど、もう引きこもるのはやめようと思ってから、たくさんの人と会うようになった。
幼稚園、小学校、子どものドッチボール関係、ジムに自分の野球チーム、囲碁教室にカフェの仕事関係。
ばったり会って、「久しぶり!」と言われても、誰かわからないことがしばしばある。
でも「誰ですか?」なんて質問するのは失礼だから、いつも「久しぶりです」なんて、わからないのに話を合わせてしまう。
だけど私の様子が不審で、鋭い人には、私がわかってないということがバレてしまう。
時にはそんな人が「私、松本です」と教えてくれたりしたけれど、それでも「どの松本?」とやっぱりわからなかったりして、申し訳なさが2倍になる。
20代の頃、知らない男の人に話しかけられて「ああ、久しぶりです」とごまかしたら、ただのナンパだったことがある。
逆に相手に「えっ!?会ったことあった!?」とビビられてしまった。
1番困るのは、知ってる人が私と目が合っても、私が挨拶をしないから、無視されていると勘違いしてしまうことだ。
「私、無視してるわけじゃないんです!」と、説明しながら歩きたい気分だ。
それが怖くて人と目を合わせなくなってしまったというのもあり、そのせいで顔が余計にわからなくなるという、負のループ。
そのため近頃は、できるだけ人と目を合わせるように訓練をすることにした。
カフェで接客をしているので、幸い、人と目を合わせないといけない機会は多い。
それでも私が説明しているあいだ、目を合わせられると怖くてやっぱり視線をそらしたくなる。
人と目を合わせる人は、なんで初対面の人とあんなに目を合わせられるのだろう。
目を見ると、逆にじっと見つめ返す人には、すごく居心地の悪い気分になってしまう。
それでも頑張って、少しは目を合わせられるようになってきた。
先日、3、40代とおぼしき男性と、ジムで少し言葉を交わした。
その人の特徴ー短髪でメガネーを、頭に叩き込む。
そして次に会った時は挨拶しようと思っていたら‥。
3、40代の短髪メガネの男性、5人くらいいる!
めっちゃ多すぎ!
結局、その男性をまたしても見分けることはできなかった。
確かおでこの形がM字だったような‥。
いや、M字も三人いる‥!
人を見分けるのは、やっぱりまだまだ難しいのだった‥。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?