サッカーボールの神様

俺は生きることに無気力だ。
ここたまに寿命がないことを心底悔やんでいる。
俺も昔は一生懸命ここたま活動をしていた。
あの事故が起こるまでは...その日から今日でちょうど10年だ。
俺は10年間罪悪感に苛まれているということだ。

俺は当時5歳の女の子ゆりが誕生日プレゼントとしてもらっていたサッカーボールから生まれたここたま「スタスタシュートでスーパーゴールのみこと」ケリーだ。

俺の魔法は物事の最後の仕上げを完璧にキメる魔法だ。
ゆり以外の人間にもたくさんの人間を手伝った。自分で言うのもなんだが誰よりも一人前ここたまに近い存在だと思ってた。

結論から言うと、ゆりは俺が生まれたサッカーボールを庇って死んだ。
まだ当時5歳の女の子が俺の目の前で死んだ。
俺が生まれたサッカーボールを抱えて。
人にぶつかられて俺が生まれたサッカーボールを落とし、道路に飛び出したところをトラックに轢かれてしまった。

俺は泣いた。
声と涙が枯れるほど泣いた。
そのおかげで今は声が低くなって目の下に隈ができた。
そしたら一人前ここたまが俺をここたま界に連れて行った。
最初は何事かと思ったがだんだんなぜ呼び出されたのか察した。

俺は責められた。
なぜ見殺しにしたんだと。
なぜ助けなかったんだと。
俺だって目の前の光景をしばらくの間受け入れられなかった。
頭が真っ白になった。
たませんにんとやらからは「お前のような出来損ない初めて見たわ!」
と怒鳴られた。
何があったか見てなかったくせに、俺とゆりの間にどんな物語があったかも、俺が今までどれだけ血を吐く努力をしてきたか、何も知らないくせに。
俺はその一件から一人前ここたまが嫌いになった。
それだけではなくここたま活動している見習いここたまを見るだけでも虫唾が走るようになった。
人間も嫌いになった。
俺たちより大きくて長い脚を持ってるくせに、楽に移動したいからと言って、あんな車輪付きの危ない機械を動かす。
全く理解できない。
お前らがどれだけ恵まれた環境に置かれているのか、今一度理解して欲しい。

俺はいつもサッカー場を彷徨いてる。
あいつの夢だったサッカー選手のことを見るためだ。
だが、サッカー選手も所詮は人間だ。
そう思うと悲しくなって涙が出てくる。
ゆりがあんな人間になると思ったら息が荒くなる。
だからすぐに人がいないところに行く。

ユラノ「またあんたかい!」
人がいない寂れた公園に行くと、いつもの3人組が俺を睨んで来る。
いつもはめんどくさいからそいつらに出くわすとすぐに場所を変えるが今日はそんな気が起きない。
俺は一人前だけじゃなくて、見習いからも嫌われてるのか。
そりゃそうだよな、俺は持ち主を殺してしまったんだから...
ケリー「おう...」
とくまる「ここはおいら達のナワバリでやんす!」
ケリー「知ってるよ」
ユラノ「じゃあとっととここから出ていきな!」
ケリー「人間を見たくないんだよ」
ユラノ「はぁ?」
ケリー「俺は人間が嫌いだ、一人前ここたまも、お前ら見習いここたまも」
とくまる「何言ってるでやんすか...?」
ケリー「何よりも俺自身が嫌いなんだよ」
ユラノ「...訳がありそうだね」
そう言うとピンク色の見習いここたまがこっちに近付いてきた
ユラノ「話くらいなら聞いてやらないこともないよ」
ケリー「お前らに話しても何にもならねえよ...っ?」
ムキテツ「...。」
緑色のここたまが俺の肩に手を置いた
ケリー「触るなよ」
俺はすぐそいつの手をどけた
とくまる「ユ...ユラノ姐さんが折角聞いてやろうって言ってるでやんすよ!」
ケリー「ッチ...」
この青いここたまはなんなんだ?ピンクのここたまの言うがままに動いてやがる...完全に尻に敷かれてるな...いつも蹴られてるけど
ケリー「はぁ...話だけしてやっから、そしたら俺は出ていく、これでいいか?」
ユラノ「...早く話しな」
俺は10年前の出来事を話した
ケリー「...今日でその日からちょうど10年だ」
3人は驚いた表情をしていた
ケリー「じゃあ俺は出て行くから、俺なんかの話に付き合わせて悪かったな」
俺は立ち上がろうとした
するとピンクのここたまが俺の腕を掴んだ
ユラノ「待ちな」
ケリー「んだよ...」
ユラノ「あっちの端っこ...仕方ないから使わせてやるよ」
ケリー「は?」
とくまる「ユラノ姐さん!本当にいいんでやんすか!?」
ユラノ「アタイが決めたことは絶対だよ」
とくまる「...姐さんに不用意に近づいたらタダじゃおかないでやんすよ!!」
ケリー「...言われなくても、俺からお前らに話しかけないから」
俺はピンクのここたまに向かってぶっきらぼうに吐き捨てた
ケリー「一応礼を言っておく...ありがとう...」
ここたまに...それも見習いに優しくされてしまった。
俺はなんだか恥ずかしくてその場からすぐに離れた。
とくまる「ぶっきらぼうな奴でやんす...」
ムキテツ「珍しいこともあるんだな」
とくまる「え?」
ムキテツ「ユラノが他のここたまに優しくするなんて」
ユラノ「違うよ!アタイらと...境遇が似てるから仕方なくだよ...」
ムキテツ「ユラノは世話焼き」
ユラノ「るっさいね!ほら、食べ物を探しに行くよ!」
俺はあいつらのやり取りを遠巻きに見ていた
ケリー「...。」
やかましい奴らだ。
しかも猫を連れてんのか...ここたまにも色々いるんだな...まあどうでもいいや
あいつらがくれたこの場所を俺の住処にしてやろう。
...そろそろ俺も飯を取りに行くか、腐ったものでいいから、少しでも収穫があればいいが

...今日は生ゴミばっかだな、ん?
なんだ...このキノコ...泣いてる...?
とりあえず食ってみるか...毒があってくたばれれば最高だしな
んぐっ...っち毒は入ってねえのか...
まあ不味くはないしいい食料になりそうだな、どうやらもう使われ無くなった物から生えてるみたいだ...とりあえずゴミ処理場に行けばもっと手に入りそうだな...今日の分はもう十分取れたからまた今度行くか
...あいつら、まだ帰ってきてないのか
まあどうでもいいけど
とくまる「今日は豊作だったでやんすねぇ〜」
ユラノ「ふっふーん、今夜はこれで...」
とくまる「姐さん?」
ユラノ(あいつ...まともな食べ物持ってんのか...?)
ユラノ「あんたら先に食べてな、アタイの分残しとくんだよ」
とくまる「は...はぁ...」
ユラノはケリーがいる場所まで来た
ユラノ「ちょっとあんた」
ケリー「なんだよ」
ユラノ「その...なんだ...食べ物持ってんのかい?」
ケリー「余計なお世話だ」
ユラノ「っ!」
ユラノはケリーの前で仁王立ちした
ユラノ「よく聞きな!ここはアタイ達のナワバリ、つまりあんたはここのルールに従わなけいけないのさ!」
ケリー「だったらなんだよ」
ユラノ「ほら」
ユラノはケリーにクッキーを渡した
ユラノ「好きに食べな」
そういうとユラノは立ち去った
なんだあいつ...
まともな食べ物食えるのいつぶりだろうか。
そういえばクッキーって...ゆりの大好物だったな...
ゆり『わぁ...!クッキーだ!私クッキー大好き!!』
...変なこと思い出しちまった
ユラノはとくまるとムキテツの元に帰ってきた
とくまる「あいつにクッキー渡したでやんすか?」
ユラノ「あぁ、なんか文句でもあるかい?」
とくまる「い...いや別に...」
とくまる(ユラノ姐さんの様子がおかしいでやんす...)
ムキテツ「ユラノ、具合でも悪いのか?」
ユラノ「アタイはいつも通りさ、ほら食べるよ」
ノラたまトリオは食事を楽しんだ

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