阪急中吊広告と銀座いせよしポスター広告の炎上に関して思うところ

「毎月50万もらって毎日生き甲斐のない生活を送るか、30万だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか。 研究機関 研究者/80代」

「ハーフの子を産みたい方に。」

前者は阪急電車の中吊広告、後者は銀座の呉服店「銀座いせよし」のポスターで使用されたキャッチコピーである。

これらの広告が世間に波紋を呼び起こしたのは記憶に新しいだろう。

なぜこれらのコピーが想像に反して(炎上商法を狙っているとしたら、予想通り)炎上してしまったのか、今後のキャッチコピーの在り方について自分の思うところをつらつらと書き綴っていく。

まずはそれぞれの広告の背景を振り返りたい。
最初に阪急の中吊広告について。
事の発端は6月1日。「働く人たちを応援したい」という趣旨をもって阪急電車の中吊広告に、上記の文章が掲出された。この中吊広告はコンサルティング会社・パラドックスがまとめた書籍「はたらく言葉たち」から80の文章を抜粋したもので構成される。今回主に炎上したものはこのうちの1件。京都線、神戸線、宝塚線の各1編成に掲載し、企画列車「ハタコトレイン」として運行していた。5ちゃんねるやTwitter上で非難が殺到し、6月11日には運行の取りやめが決定した。

次に「銀座いせよし」のポスター広告について。
この広告は東京・銀座の呉服店「銀座いせよし」が2016年、つまりは3年前に掲出したポスターの5枚のうちの1枚である。「ハーフの子を産みたい方に。」のキャッチコピーを担当した広告代理店のコピーライターは「東京コピーライターズクラブ」で新人賞を受賞している。それが2019年6月19日に、あるTwitterアカウントの批判的な投稿によって、爆発的に拡散され、炎上へとつながった。

なぜこれらの広告が炎上したのか。


一言でいってしまえば、両者ともが時代錯誤の内容であり、共感性を欠いたものであったからである。


阪急の広告に関しては、提示されている月収の額が実情と大きく異なっていることや、労働者のやりがい搾取を想起させるような表現が、令和という新時代とはかけはなれた前時代的なものであり、その結果非難の対象となった。
銀座いせよしの広告に関しては、着物を着ると外国人男性からナンパされるからいい、とでもいいたいかのような、品のない表現に対しての違和感や、その共感性を欠いたコピーを作成したコピーライターが新人賞を受賞していることにまで批判が及んでいる。

これらの広告は掲出された時代が、たとえば平成の頃であればすんなりと受け入れられ、批判を受けることはなかったのかもしれない。(実際いせよしの広告は発表された3年前の時点ではこのように話題にあがることはなかった)
だがしかし、令和となった現在においては、これらの広告は不協和音となり、掲出中止や、謝罪をする騒動にまで発展している。

平成の後期ではコンプライアンスが叫ばれ、広告主や広告代理店各社で、その意識は徐々にではあるが浸透していた。だがしかし今後重要となってくるのは、コンプライアンス意識だけでなく「ポリティカルコレクトネス」である。
性別、人種、宗教など、多様な価値観をもつ人々が存在する世の中で、差別や偏見を排除した中立的かつ人々の共感を呼ぶ表現が今後求められ、関係各社、各担当はより一層意識する必要があるだろう。

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#ハーフの子を産みたい方に

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