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寮生活

2023/6/4

A4-1。私はもうすぐこの部屋からいなくなり、また別の部屋へ移動する。かつての相方と1年間一緒に過ごした空間だから多少の感傷にふけってベットに寝転がっていた。普段は夜になると窓全体の半分しかない短いカーテンを申し訳程度にしめるが今日はなぜかしめずにいた。めったに吸わないパーラメントをちょっと前に吸ったので煙草による覚醒作用が原因か、なかなか寝付けない。
しばらく黄昏れていると真っ暗な部屋に自分の影ができていることに気が付く。最初は廊下から光が漏れているかと思ったが光の所在をたどってみるとそこには月があった。月の明るさに驚きと感動を味わいながらぼんやり見つめているとそれはゆっくりと下に降りていき、やがて隣のアパートに隠れて見えなくなった。あいつはこのことを知っていたのだろうか。

夜が終わろうとしていた。

月を見て物思いにふけるなんて陳腐な感情かもしれない。けれども、次の部屋では同じように月が見えるだろうか、ルームメイトと気は合うだろうかなんてことを考えていたことは紛れもない事実であった。

空が明るくなっていることを確認し、私はスマホを閉じた。


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