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恐怖の病・ホンデ病!

ホンデ病という言葉をご存じでしょうか?

僕もつい最近知った言葉なんですが、『あやうく一生懸命生きるところだった』という韓国人の著者が書かれた本の中で、作者がこの病気にかかったと記されていました。

ホンデとは、韓国一の難関美大『弘益大学校』です。

ホンデ病とは、このホンデを目指す受験生達の間に蔓延する流行病のこと。ホンデでなければ美大にあらずと言われているそうで、七年間も浪人生活を送らせるケースもざらにある。

昭和の時代の東大病にも似ているかもしれません。東大以外は大学とは認めないなんて言葉もありましたから。

ちょっと調べてみると、ホンデって韓国ではサブカルチャーの最先端でもあるそうです。ニューヨークとかそんな感じかもしれないですね。そのハイセンスな雰囲気もあいまって、ホンデ人気が高いのでしょう。

ホンデに受かれば人生が一変する。

何せホンデは一流大学です。ホンデ卒というだけで大企業からのスカウトが絶えないという噂もあるそうです。

あやうく一生懸命生きるところだったの著者のワンさんも、ホンデ病にかかり、二浪したそうです。ですが二浪しても受験を失敗してしまいます。

彼はホンデに受からなかったことで、自殺すら考えました。

自分で命を断つ勇気が持てず、泣く泣く滑り止めの大学に入学します。しかしホンデ病はワンさんの体の芯まで浸食していました。

ワンさんはどうしてもホンデをあきらめることができません。そこで大学を辞めて、三度目の挑戦に挑みます。まさに背水の陣をしいたのです。

そして、見事ホンデに合格しました。

まさに快挙です。あきらめなければ夢は叶う。まさにその言葉通りです。

ただ現実とは壮大な皮肉でもあります。

ワンさんはホンデに入学しましたが、その理想と現実のギャップに困惑します。

あれほど苦労してホンデに入学したのに、ひたすら学費を稼ぐためのアルバイトの毎日。大企業からのスカウトなんていうのも文字通りの噂でした。

夢のホンデに入学したのに、現実は何も変わらなかったのです。

この話なんか似ているなと思ったのが、作家でした。

作家志望者は、小説の新人賞を取ったり、ネットで作品が評判になって作家デビューすることを夢見ます。

ホンデ病ならぬ、作家病ですね。

大正、昭和は今以上に作家への憧れが強かった時代なので、作家病の罹患者がうようよしていました。作家になれないと絶望して自殺する人も多々いました。

ただ念願叶って作家になったはいいけど、その理想とギャップに絶望する人も多いです。

デビュー作がドカンと売れて、一躍人気作家になれるのはほんの一握りです。大方の作家はデビュー作が売れず、二作目、三作目が書かせてもらえない状態に追い込まれます。

本が売れない時代なので、以前よりもセカンド、サードチャンスが少ない傾向にあります。

無事デビュー作が売れても、その後も売れ続ける保証はどこにもありません。

作家あるあるなんですが、早く売れてしまえば、早く消える可能性も高まります。

作家にはスタートダッシュ型と、晩成型があるんですが、スタートダッシュ型はだんだんとネタがなくなり、晩成型は年を重ねるごとに作品に深みが増していきます。

作家の人生を調べると、不遇の時期が長い作家の方が、売れる期間も長くなる傾向にあります。

だから早く売れたからといっても安泰ではなくて、「いつ自分は消えるんだろう」とその恐怖に怯えることになります。それって精神的にはかなりの負担です。

つまり作家デビューしても、それで人生が一変して、バラ色の生活が待っているというわけではないです。

作家デビューしてウハウハの新人作家に、ベテラン作家が不敵な笑みを浮かべてこう声をかけました。

「地獄へようこそ」と。

それって冗談ではなく真実なんですよね。ただその地獄を楽しむことができるのが、本当の作家ともいえますが。

これってホンデに入学したのに、理想とぜんぜん違ったというのと似てますよね。

作者のワンさんは、「ほんの少し顔を上げて周囲を見渡すだけで、ほかの選択がいろいろとあると気付くのに、執着してしまうとそれが見えなくなる」と書かれています。

もちろんあきらめず夢を追うのは大事なんですが、ふと力を抜いて周りを見渡し、『自分にある別の可能性』に目を向けるのも大事なんでしょう。

あきらめないのも大切だけど、あきらめたときに別の扉が開く。

ここに人生の面白さと残酷さがあるんだなと思います。


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