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2002年からの武術エッセイ

人は一歩踏み出すまでの間に手は一つしか仕事をしない。
しかし、無理すれば、なんとかやっとふたつくらい仕事はできるかもしれない。
でも、三つとなると不可能に近い。
もし仮にできたとしても、たった一歩踏み出しただけなのにバランスを崩すだろう。

しかし、すり足で一歩踏み出せば、そのあいだに手は余裕をもって三つの仕事を終える。
しかし、武術においてはもう一工夫いる。
その三つの動きを並べるのではなく、同時展開するのだ。
手の動きの成分のなかに同時に別方向の成分を加え、手の動きとは関係の無い方向に股関節を開き、胴体は手とは関係なく斜めにあるいは、正面に、あるいは平行に進む。

一歩のすり足の間にこれだけの仕事をする。

すり足を使うことによって安定した重心移動を可能にし、手、胴体、股関節がお互いに影響されることなくばらばらに同時に動くように日ごろから訓練しておくことによって、安定した重心移動を土台にして、さらにバラバラ同時に動く精度が高まる。
これによって「術」というものがあらわれるのだ。

技の核心が「術」であり、武術を会得した者は、一歩踏み出しただけで技になる。

2005年4月記す。

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