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わたしの本棚

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わたしが読んできた本の感想をまとめています。週1〜2回の更新です📚本好きの方、小説をよく読まれる方、ぜひ覗いてみてください♪
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記事一覧

読書|星の子

じわじわと、家族が崩れていく。でも、本人たちは形が歪になっていることに気がついていない。 なんだか、怪しいよね? 病気が治る”奇跡の水”って、怖くない? そう頭に疑問符を浮かべながら、物語が進んでいきました。怪しさを拭えきれないまま、ちひろの両親は怪しい宗教にのめり込んでいきます。 発端は、ちひろの病気を治したかったから。愛する家族のためにあの手この手を尽くして、やっと辿り着いた先が”奇跡の水”でした。 この水で…、と奇跡を願っていたら、本当にちひろの病状は良くなりま

読書|やがて訪れる春のために

来年おとずれる春のために、大好きなハルばあちゃんのために。真芽は祖母の庭を蘇らせようと奮闘します。 春に、春の本を読みたくなりました。桜や新生活、暖かい陽気を感じられる本はないかな〜と図書館をぶらつき、「春」のキーワードが目に飛び込みます。 主人公は真芽は、祖母のハルが倒れた情報を聞き、病院へと駆けつけました。久しぶりに病院で会った祖母は、一見元気そうに見えるものの、どうやら一人で認知症と闘っていたようです。 家に帰りたくても帰れないハルに代わり、自宅のお掃除をやること

マーケティング入門「弱者でも勝てるモノの売り方」

マーケティング初心者にオススメの一冊!知識ゼロの状態でも、スルスルっと内容が頭に入ってきます。 会社や個人で商品・サービスを提供している人には、マーケティングは避けて通れない知識です。 とはいえ、私はこれまでは避けて通ってもなんとかなっていたのですが、いよいよマーケティング視点を得なければ進めないと思い、新しい扉を開きました。 他のマーケティング入門本を読み比べていないので、客観的な比較はできませんが、本書はマーケティングの基本のキを分かりやすく、さらに実践しやすい流れ

読書|結婚させる家

舞台は、40代以上限定の結婚相談所。人生のパートナーが欲しいとやってくる人々と、カップリング率No. 1のカリスマ相談員の物語。 友人の結婚ラッシュが止まらない影響か、自然と「結婚」の本を手に取ってしまいました。 結婚相談所のお話なのに、タイトルに「家」がついているのはどうしてだろう?と読み進めましたが、どうやら、ある屋敷で交際検討中の男女がプレ夫婦生活を体験できるとのことです。 カリスマ相談員の恭子さんは、屋敷へくる人々にぐいぐい攻めます。相手の興味を引くために事実と

読書|何者

何年か前の就職活動の記憶がヒリヒリを思い出される。あの頃の胸の痛みは、まだまだ健在だ。 就職活動を控えた5名が集まるアパートの一室は、同志のように見えて、全員自分の胸の内は隠しているような緊迫感がありました。 ここぞとばかりに経歴を熱く語る理香や、個性で就職活動からはみ出そうとする隆良は、確かに痛く感じるものがあります。 特に、失敗を自分のものと認めたくないがために、人には夢語りを気持ちよくする隆良は、見ていてモヤモヤする部分が。 ぐはっ。自分にも朝井リョウの言葉が刺

読書|池袋ウエストゲートパーク

私の知っている池袋じゃない。でも、もしかしたら私が知らないだけかもしれない。少年ギャング団に乱れる街。ヒリヒリとドキドキが止まりません。 頭の切れるナイスガイのマコトは、荒れ狂う池袋の街で颯爽と暮らしています。仲間が殺された時は復讐をし、ヤクザのお頭に人探しをお願いされたら奮闘し、街の秩序が乱れたら平和を実現させました。 残酷な仕打ちや性的な描写も激しく、夜寝ぼけた状態で読むにはだいぶ刺激的…。そのスリリングさがこの物語の美味しいところなのでしょう。 エピソードを重ねる

読書|神様の暇つぶし

優しい父が事故で亡くなった。心の隙間を埋めるようにふらっと現れたのは、かつて頭を撫でてくれた父よりも歳上の全さんだった。 恋は人を変えるのだろうか、恋で自分が変わったと思いたいのだろうか。 血色の悪い唇に、乾燥した肌。いつか土に還ってしまいそうな容姿なのに、全さんの眼差しや温度を忘れることができない。 大学生の藤子は、カメラマンの全さんに心と身体を奪われ、今もなお、全さんを身体の一部で飼っている。 私にも、過去の記憶が自分の中に居続けています。優しく撫でてくれたひいお

読書|声の在りか

声にならない声が存在する。自分の気持ちはどこに置けばいいのだろう?今日もまた、言いたいことをグッと我慢してしまった。 パートタイム勤務で小学四年生の息子を育てる希和は、自分の気持ちを伝えるのが少し不器用です。家のことは専ら希和が頑張っていますが、その頑張りを旦那は気づいていません。 そんな旦那は今日もまた、動画を見ながら夜ご飯を食べています。私が一生懸命作ったご飯を、動画の片手間に消費されいる姿に耐えかねて声をかけても、その言葉は旦那には届きませんでした。 私も気持ち熟

読書|なれのはて

最後のページを読み切った後、ふぅ…と漏れ出る吐息。読了後の充実感と壮大なストーリーが終わってしまった寂しさが、胸に広がりました。 「加藤シゲアキの第2章としてのスタート」のキャッチコピー。これまでの彼の作品を遥かに超えていった一冊は、読んで悔いなし、出会えてよかったと思える物語でした。 本書では、扱うテーマが多岐に渡ります。戦争・報道・著作権・家族・石油…。それぞれのテーマを貫くのが、無名の画家の絵でした。 報道の第一線で活躍していた守谷京斗は、ある事件をきっかけに、イ

読書|わたしが少女型ロボットだったころ

ある日、ふと気づいてしまったらしい。自分が人間ではなくロボットであることを。 今まではなんの抵抗もなく食べれていたご飯も、自分にとって栄養は不要だと知った途端に喉を通らなくなった。母親には心配され、怒られ、突き放され、でも今まで通りには戻れない。だって、私はロボットだから。 見た目があまりにも人間そっくりなので「ロボット」であることを信じてもらえない多鶴ちゃん。食事をしないとみるみる痩せてしまうところまで人間そっくりです。 頭がおかしくなっちゃった?単なる摂食障害?と思

読書|月曜日の抹茶カフェ

月曜日が定休日のマーブル・カフェ。「木曜日にはココアを」の続編として登場した本書のはじまりも、あの素敵なカフェからでした。 前作が色彩がテーマだったのに対し、本作は和風名月で物語が流れていきます。抹茶や京都がキーワードなため、1月2月…ではなく睦月如月…と続いていく日本の暦が、青山さんの紡ぐ世界観にピッタリでした。 心に残る言葉がいくつもあり、その度に付箋を貼っているのですが、今回はその中の3つを紹介したいと思います。 自分にとっての転機の言葉やあの人との大切の瞬間など

読書|気まぐれ指数

ショートショートの第一人者である、星新一さん。今回は、1000を越える作品を世に放った方の長編コメディーを楽しませていただきました。 犯罪評論家が、犯罪経験をするためだけに仏像窃盗を試みます。主要キャラクターの「気まぐれ」から、ことは泥棒や嘘、駆け引き…とどんどんあらぬ方向へと動いていきました。 犯罪評論家ぎ捕まってしまうハラハラ感は意外にもなく、仏像の行方が気になって仕方がありません。コミカルな展開だからこそ味わえる読書時間というものです。 他にも、誰のものかはっきり

読書|きみの存在を意識する

自分にとっての当たり前は、誰かにとっての当たり前じゃない。ひとりの人間が感じられる世界は、限られています。 中学2年生の5人が語りの短編連作集。筆者の想いは、最後の一文に込められていました。 主人公の5人はそれぞれの特性を持っています。字を読むのにものすごく時間がかかる子や、筆記は苦手だけどタイピングは得意な子、匂いに敏感で教室に入れない子など。 ”教室”という子どもにとっては大きな世界の中で、自分が他の人の感覚と少し違うと気づいた時「大袈裟だ」「努力次第でなんとかなる

読書|夏物語

命とは、家族とは、子どもが産まれてくるとは。壮大な問いとぶち当たりながら、それでも生きていく。 季節は夏、夏目夏子さんが主人公の"夏"物語です。夏のゲシュタルト崩壊が起きそうですね。 取り扱うトピックはシリアスで、パートナーがいない夏子が自分の子どもに会いたい夢を叶えるために、見ず知らずの男性から精子提供を検討します。 情報を集めていくうちに、精子提供によって産まれた子どもの体験記へと辿り着き、さらには当事者と親交を深めていくーーという流れです。 シリアスで気持ちが沈