川端りつこ

京都とタイ料理をこよなく愛する編集者。noteでは、みじかい小説やエッセイなど、ぽちぽ…

川端りつこ

京都とタイ料理をこよなく愛する編集者。noteでは、みじかい小説やエッセイなど、ぽちぽち書きます。

最近の記事

「男女の友情」は傲慢かもしれないという話

「男女の友情は成り立つのか」という問題は、すでに議論されつくされるほど議論され、しかしいまだ結論の出ていない難問だ。 かくいう私も、その答えを出しあぐねている。 かつて、私は「男女の友情は成り立つ派」の人間だった。それはある種の実体験に基づいていた。いわゆる「親友」といえるような異性の友人が、私にもいたのだ。 大学二年生から三年生にかけて、ある出版社でインターンをしていた。 その会社には常に学生インターンが5,6人いて、取材のテープ起こしや原稿作成を行っていた。「ライティ

    • あなたは編集者とライター、どちらに向いているのか① 編集者編

      前回、編集者とライターの違いと、それぞれの仕事についてお話ししました。 文章を仕事にしたいと思う方であれば、次に気になるのは「じゃあ、どんな人が編集者やライターに向いているの?」「私は編集者やライターになれるの?」ということですよね。 それぞれにどんな人が向いているのか、私見にはなりますが、解説していきたいと思います。 ■編集者に向いている人は?まず、おさらいしますが、編集者の仕事は前回書いた通り、 意図をもって情報を集め、整理して構成を考え、何らかのアウトプットを生

      • 編集者とライターとはどんな仕事で、何が求められるのか?

        私は、ビジネス系のwebメディアで編集者をしています。 具体的には、インタビュー記事(企業の方や大学の先生などが多い)を企画し、外部のライターさんと一緒に取材に行き、ライターさんが書いた原稿をチェックして、世の中に出すという仕事です。 こう言うとよく聞かれるのが、「自分で記事は書かないんですか?」「編集者とライターってどう違うんですか?」「どんな人が向いているんですか?」といった質問。 知らない人からすると、なかなかイメージしづらい仕事のようです。 こうした質問への答

        • noteをはじめて1ヵ月半たちました!

          12月の終わりにnoteを始めて、約1ヵ月半。もうすぐいただいたスキの総数が、100になります。 とっても嬉しいです! 投稿したのが8記事、短編小説とエッセイがほとんどです。だいたい見ていただいた方の10人に1人がスキを押してくださっている計算のよう。ありがたい……。尊い……。 ノートを始めた理由はこの記事で紹介しています。(写真は去年の夏に川でつかまえたエビ。このあとカラッと揚げておいしくいただきました。) いただいた反応は、すごく励みになります。この場を借りてお礼

        「男女の友情」は傲慢かもしれないという話

          先週付き合った男のLINEを、ずっと無視している

          昨年の12月ごろから何度か食事に行った男性から、先週「付き合わないか」と言われた。 わりといい焼き鳥屋のカウンターで、夕食を食べた帰りだった。 「本当は、もうちょっといい雰囲気で切り出すつもりだったんだけど」 彼はそう言って困ったように笑った。でも、そもそも私たちがいい雰囲気になったことなんて、一度もなかったはずだ。 食事はしても、毎回一次会で解散。キスはもちろん手を繋いだこともない。色っぽい話もしていない。 「この人、私とどうこうなるつもりあるのかな?」と、内心不可解に

          先週付き合った男のLINEを、ずっと無視している

          大人になった私たちは、あの頃のときめきさえ忘れてしまう

          女子高生のころ、私たちはいつも「恋がしたい」と願っていた。 つまらない勉強。 退屈な放課後。 遊ぶ場所なんて商店街のカラオケボックスか街に一つある映画館、あとは公園くらいしかない。 そんな田舎でただ一つ、輝いて見えた「恋」。 鮮やかで、きらきら光るその日々。 あんなに特別な気持ちを、私たちはいつ忘れてしまったのだろう。 「ああ、結婚したいなあ」 神楽坂のワインバルで、はるかは三杯目のグラスワインをあおりながら言った。 こうして集まって、愚痴とも願望ともつかない話を吐

          大人になった私たちは、あの頃のときめきさえ忘れてしまう

          おじいちゃんは、月のきれいな夜に死んだ

          祖父が死んだ日、空には大きな月が出ていた。 母さんから電話を受けた私は、上司に「祖父が亡くなったので、三日ほど休みをもらいたい」と伝えた。「仕事のことは気にしなくていい」と上司は言った。「無理はしないで、今日はもう帰りなさい」 帰りの電車の中で、翌日の朝の飛行機を調べ、予約する。呆然と冷静が似ていることを、そのとき初めて知った。 祖父が死ぬということは、もう随分前からわかっていた。癌が見つかったのは7年も前で、直前の半年は意識もほとんどない寝たきりの状態だった。持って数

          おじいちゃんは、月のきれいな夜に死んだ

          noteをはじめたわけ : 編集者の仕事と、自分自身の表現について

          はじめまして。 私は川端りつ子といいます。1992年生まれ、今この記事を書いている時点では、26歳になったばかりです。 名前は本名ではありません。仕事は、ウェブメディアの編集者をしています。 具体的に、そしてかんたんに説明すると、 インタビュー記事を企画して、 ライターさんと一緒に取材に行って、 書いてもらった原稿に赤入れして、 世の中に出す ということをして、お金をもらっています。 「文章」とか「日本語」とかが小さな頃から好きだったので、それに関わる仕事はとても楽

          noteをはじめたわけ : 編集者の仕事と、自分自身の表現について

          合コンを生きがいにした女子大生たちのインモラルな日々について

          大学時代、私は星の数ほど合コンをした。 幸運なことに、「わりと賢くて、お嬢様が多い」というイメージの大学に通っていたので、そういった誘いを受ける機会は多かった。商社マンや広告代理店、時には野球選手や芸人、某男性アイドルグループのメンバーとだって合コンした。 その話はまた後日するとして。 あんなあわただしい日々は、もう二度と訪れないだろう。 だからだろうか、思い出すインモラルのまわりには、どこか愛おしさすら漂っている。 ————— 合コンが終わってMちゃんの家に帰ると

          合コンを生きがいにした女子大生たちのインモラルな日々について

          私たちの失われた愛と、失われた幸福なセックスについて

          わちくんと付き合っていたのは、23歳の夏から24歳の秋までの、一年と少しのことだった。それが短いのか長いのか、振り返ってみるとよくわからない。私の人生で最も輝かしい季節であった気もするし、最も淀んだ時期であった気もする。 そのころ、私はまだ社会人になったばかりで、ぐらぐらする自分の支えになる何かを求めていた。そんなとき知り合ったのがわちくんで、これ幸いと身を預けたわけだ。預け先を間違ったと気がついた時には、もう遅かった。 わちくんとは、飲み会で出会った。会社の同期の女の子

          私たちの失われた愛と、失われた幸福なセックスについて

          ひとりのクリスマスと、ロン毛の朝青龍ことハラグチさんについて

          クリスマスイブ、一人で恵比寿の街を歩いていて、ハラグチさんのことをふと思い出した。 まだ大学生だったころ、私は都内の漫画喫茶でアルバイトをしていた。900円の時給は相場からすると少し安かったが、客がほとんど来なくて暇だったのと、好きな漫画を読みながらドリンクバーのジュースを飲めるので、割と気に入っていた。 ハラグチさんとはじめて会ったのは、その漫画喫茶に面接に訪れたときだ。 入り口のドアを開けて受付で名乗ると、店長らしき男性は、客のいない奥の席へと案内してくれた。 「少

          ひとりのクリスマスと、ロン毛の朝青龍ことハラグチさんについて

          金魚坂の追悼

           丸ノ内線の本郷三丁目駅から徒歩十分ほどの場所に、「金魚坂」はある。 350年続く金魚の卸問屋があることから、こう呼ばれるようになったそうだ。と、スマートフォンの画面を見ながら亮平は言う。夏も終わりに近づいた、ある日のことだった。 「ふうん」と私は相槌を打つ。 「行ってみない?」  そう誘われて、思案したのはほんの数秒だった。ほくろの数も知っているような幼馴染の亮平と一緒に、大学進学を機に上京してもう三年。涙なくしては語れない紆余曲折を経て付き合って、すでに一年半。

          金魚坂の追悼