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マーケティングレンズ vol.3 - 「ファンがつく企画」ができるまでを学ぼう

マーケティングレンズ (MARKETING LENS) は、有志が集まってマーケティングを多面的に学ぶイベント企画。
今回は、スマイルズの吉田 剛成さんをお招きして実施した、第3回目のイベント「ファンがつく企画ができるまでを学ぼう」をレポートします。

過去のレポートは、以下のリンクよりご覧ください。
vol.1: Marketing Lens キックオフ
vol.2: 商品やプロモーションを考えるきっかけを捉えよう

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1. オープニング: マーケティングレンズの始まりとテーマ

阿座上:

マーケティングレンズは、インプットとアウトプットを繰り返し、「0の状態からでもマーケティングができるようになること」を目標に、初回のキックオフで決めた以下3つのテーマに沿って勉強しています。

「マーケティングレンズ」の3つテーマ
1. マーケティングの王道ステップ
2. ニッチマーケットでのマーケティングのやり方
3. 若者向けプロモーション・バズる施策の作り方

今回は、Soup Stock TokyoやPASS THE BATONなどの思わずときめいてしまう事業や企画を実行しているスマイルズ クリエイティブ本部プロジェクトマネージャーの吉田さんをお招きし、「スマイルズにおける企画のつくり方」を伺い、ワークショップで実践していきます。

登壇者情報:吉田 剛成スマイルズ プロジェクトマネージャー2008年スマイルズ入社。Soup Stock Tokyoでの店長業務、人事部採用担当を経て、2013-2015年は経済産業省クリエイティブ産業課へ出向。中小企業の海外展開事業「MORETHAN PROJECT」「The Wonder 500」、海外向け情報発信サイト「100 Tokyo」を立ち上げに参画。現在は、スマイルズが手がける外部案件のコンサルティング、企画・プロデュースなどを担当。

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2. インプット: スマイルズにおける「企画のつくり方」

吉田:

今日は「マーケティングレンズ」という勉強会ですが、実はスマイルズには「マーケティングをしない」んです。(笑)。
マーケティングというと、トレンドや市場規模、差別化、「3年後に100店舗展開へ!」といったものから企画を考えはじめますが、スマイルズはその逆。妄想とかシーン、そういったものから考えはじめることが多いです。

スマイルズでは、「Smiles or NOT」という視点でよく考えます。

例えば、"Soup Stock Tokyo" or ファストフード。
ファストフード店にはファストフード店の「普通」がありますが、それをスマイルズが手がけると"Soup Stock Tokyo"になる。同じように普通のリサイクルショップではなく、出品者の顔写真と商品にまつわるストーリーが添えられている"PASS THE BATON"。

「スマイルズさんはいつも新しいものを作りますね」と言われることがあるのですが、新しいことをやっている気は無く、既存のものに対して「自分たちだったらどうするか」という考え方で企画立案を行なっているんです。
というのも、今までに無い全く新しいものって、意外に面白くないんですよね。想像ができないし、マーケティング的にいうと、ニーズがないので。

でも、自分たちの中にある妄想やシーン、イメージ、オリジナリティ、ユニークネス・・・そんなものを既存の事業にのせていくことで、「普通」を超えて皆さんの体温をあげるような企画になる。そんな考え方をしています。

スマイルズの企画づくりにおけるポイントは以下の3つ。

スマイルズ流 企画づくりの3つのポイント
①全員で思考し、全員で実行する
②ワタシマーケティング文脈でハートを掴む
③事情と心情に橋をかける

ひとつひとつ、具体例をまじえながら説明をします。

①全員で思考し、全員で実行する

スマイルズの社員は、基本的に全員が「企画」を行います。
「この人は企画担当で、この人がコピーの担当」ではなく、「全員プランナーで、全員コピーライター」なんです。

何かの企画を行う際には、チーム全員で企画のアイディアを出していきます。コピーもチーム全員で出しあって、ひとつものを作り上げていく。各々が、ワークショップもイベントも商品開発も、企画から実行までやるんです。

例えば大きな企業だと、チームで頑張って考えた企画を最終的に外部委託に出して実行することもあります。

でも、スマイルズでは、実行にこそ価値があると考えています。
これ良くない?みたいアイディアから始まり、なんとなく自分たちでチーム作って、まずはやってみる。そして実行後に成功すれば、事後報告で予算取りをしていく。まずは実行して、既成事実を作ってみること。そうすれば、「これは必要な企画だからやりなよ」と予算は後からついてくるのです。

②ワタシマーケティング文脈でハート掴む

スマイルズの企画は、個人的なこと(価値観への共感)が入り口になることが多いです。「社会的な意義としてどうしなくてはならない」「他社が何をやってうまくいっている」ではなく、「自分だったらこの事業をどのようにしたいか」という自分の中のキーワードを探していく作業から始まるのです。

社会的意義といった本質から始めると、ロジカルな道筋を通るので、アウトプットが画一化し、結局「ありがちな企画」で終わってしまうことも多いのですが、個人のキーワードから始めるとニーズが顕在化しているので他の人も共感しやすい。

例えば、Soup Stockのスープカップは縦型なのですが、「縦型のスープカップだと入っている量が少なく見えてしまって損なのでは?」と言われることがあります。でも実はここには、「がつがついっぱい食べているようにみられたくない」という女性のニーズ(本音)がある。

このように、確実に存在するn=1のコンプレインや誰かのストーリーから企画を立案していくことを大切にしているのです。

③事情と心情に橋をかける

スマイルズの企画づくりのポイント3つ目は、事情と心情をうまく課題設定でつなげていくこと。

事情:大人の都合。論理・合理。出し手目線。
心情:素直な心。共感・感情。受け手目線。

ここで良い課題設定やコンセプト開発ができると、実は仕事の8割は終了です。逆にそこが決まらないとうまく方向性が決まらないので、ここが肝とも言えます。

例えば、「カレーストックトーキョー」という企画があるのですが、企画立案の際の「事情」と「心情」として以下のようなものがありました。

事情:カレーをもっと売りたい。sales promotionもしてるが頭打ちに。でも割引したくない。
心情:「限定」って言葉に人は弱い。いつでもいけると結局いかない。意外性やギャップも好き。

そこで、この2つをブリッジさせるために「スープのない1日」というコンセプトで「全店カレーしか売らない日」を作りました。

企画の鉄則は、押すより引く(推すより惹く!)。
販売促進の活動をみたい人なんて、そもそも誰もいないんですよね。

カレーだけを売る必然性がないからこそ中途半端にやらず、もはや内装やロゴもドラスティックに変えていく。この1日だけ思いっきりカレーを打ち出すことで「あれ、何かスープストックがやってるよ」と逆に話題になりました。

まとめ

スマイルズの企画の考え方のポイント3点をお話しましたが、では企画力をつけるにはどうすれば良いのでしょうか?

企画力へのチカミチ
①素直になって、価値の根っこを探す n=1の経験の中に企画のヒントが必ずある。
②山盛りの思考と実行でアブダクションの爆発 45個と4950個。10倍が100倍の違いを生む。
③具体の集積からコンセプトを紡ぐ 順番は関係ない。アイデアからはじまる企画も。

まずは自分の経験や想いの中に企画のヒントがあると信じて、深掘りを続けること。様々な企画に携わることで、その経験が何十倍何百倍もにレバレッジされていくこと。そして、具体的なアイデアの集積から突発的に企画を始めてみても良いこと。

そんなことを心がけると、日々企画力を磨けるかと思います。

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3. アウトプット: 「じゃあ、企画をつくってみよう!」

アウトプット編では、吉田さんに教えていただいた考え方を元に、日常感じている「これ、もったいない!」を価値ある企画に変えていくワークショップを行いました。

ワークショップの流れ
①日常感じている、これはもったいない!をたくさん出してみる
②チームで1つのテーマにしぼる
③インプットで教わったことを元に、企画立案

ということで、実際に出てきた企画アウトプットはこちらです。

チーム「餃子」

テーマ:女子が「餃子を食べに行こうよ!」って気軽にいうのが難しい。

企画:「餃子銭湯旅館」を作る。
コンセプトは、「思い出をなくそう」。餃子を誘いにくいのは、明日が気になるから。そして、餃子を一緒に食べられるのは、本音をさらけ出せるほど仲がいいから。じゃあ、「明日が気にならないように泊まりがけで、裸の付き合いありの、旅館」で、餃子を目一杯楽しもうよ!という企画です。


チーム「スナック」

テーマ:地方のスナックって、入りにくい雰囲気がある。

企画:スナックを「ルイーダの酒場」的な場所にする。
コンセプトは、「夜の学校」。地方のスナックに入りたい=地元の人たちと話したい・現地情報が知りたいというニーズがある。だから、地方のスナックには、老若男女が混ざってその場で仲良くなるような雰囲気がある。地元の年配の方は観光客の若い方にその土地の情報や訪れると良いスポットを教えて楽しい、観光客の若い人は地元ならではの情報などを教えてもらえて嬉しい、そんな場所にしていく企画です。

チーム「クラシック」

テーマ:クラシックのコンサートって、敷居が高い。

企画:結婚式などのシーンで、クラシックのコンサートを実施する。
コンセプトは、「着飾って、クラシックを楽しむ」。人気奏者がいたりするけど、クラッシックのファンってなかなか広がらない。周りの人に聞いて見ると、クラシックのコンサートって、何を着ていけばいいのか分からないから、敷居が高いと答えている人が多かった。カジュアルダウンして敷居を下げるのではなく、あえて敷居の高さを逆手に取り、結婚式などのおしゃれをしている場所でクラシックのコンサートを行い、クラシック音楽のファンになってもらう企画です。

ということで、3チームとも、とても楽しく企画立案ができました!

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以上で、第3回マーケティングレンズは終了!

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編集後記:
個人的に感動したのが、吉田さんのアナロジーの圧倒的な質の高さです。どの分野の話をしていても、違う分野からアナロジーをきかせてコンセプトやコピーのヒントを瞬時にお話くださり、ああなんて引き出しが多いんだろう!と終始感動しておりました。
「企画力へのチカミチ」としてまとめていただいた「山盛りの思考と実行でアブダクションの爆発」というのがまさにそれで、たくさんの分野で企画の数を集積することにより、どの切り口においても誰もが共感してしまうコンセプトやコピーが浮かんでくるんだろうなと腹落ちし、学びが深まりました。
同時に、これから自分が経験することが自分の企画の断片になっていくのだなとここから先の人生にわくわくするような感覚になりました。

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では、次回のマーケティングレンズも、ぜひお楽しみに!


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