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ココア共和国11月号やながわの感想

今月号の詩のレベルの高さは、これまでで一番だったと思う。ひとつ感想(評)を書きおわり、ページを捲ると、また新しい言語に圧倒された。
ココア共和国の成長スピードがあまりにも速く、追いつけない。これは「やばい」レベルだ。ちなみに、これは佐々木さんの編集後記を読まずに書いている。引っ張られてしまう可能性を避けるためになのだが、書き終えた後、読んでみると、同じようなところを取り上げていたり、全く違うところだったり、違う視点を得ることは私の勉強になる。

投稿詩の感想の前に。。

四コマ詩「見えない大根」「なにも聞こえない」この2つに猛烈に、ひっそりと、大笑いさせていただきました。秋さん、素敵すぎます。
佐々木貴子写真館「アンジェラ、はじめての万歳」かわいすぎて瞬殺されました。。

では、感想。
「変融」中マキノ
先月も中さんの詩を取り上げたが、今月も独自の世界を持って言葉を自由自在に操っている。漢字2文字のタイトル、筆名、全てがピッタリとおさまっている。特に、手で掬った金魚の「ぬめり」が、「金魚の一部」ではなく、「私が金魚に同化しつつあった部分」がいい。カフカの「変身」を彷彿させつつも、ラストの「からだが苦しみそのものになってしまうのを待つ」これは単なる「変身」ではない。「変融」というタイトルに通じている。

「僕は乳牛親衛隊モイン!」テル
モイン!モー!が繰り返されているうちに、心地よくなって、「モイン!」と元気よく一緒に叫びたくなる。モー凄いしかない!そして、面白いのに、詩が向かう方向は全くもって真っ当である。「長期的に生き残るという意味」ここがとてもいい。

「ワイヤレスイヤホンの詩」林やは
何度も繰り返し読んだ。言葉がスライドし、潜りこみ、戻る。そのバランスの危うさが魅力的だ。

「心電図」山口波子
行の高さが心電図を模している。命の最期の瞬間に向かう。最後の」(かっこ)が効果的だ。

「星の街」関まりこ
ああ、このような感覚に陥ること、多々ありますよね。(わたしもつい最近この感覚を詩にしました、お話したいです、と詩を読みながら思いました)関さんのそれは、とてもうまく感覚が表れていて、心がぎゅっとなった。自分の家以外の「家」が、どんな風に「生活」しているのか、その「生活」を「私」が浸る。それは、夕方、家の灯りがつき始めた頃に、よく起こる現象だ。「私」が体験する「生活」の中ではビーフシチューを作っているが、実際の私は作ったことがない。ここに現実と非現実との行ったり来たりする揺らぎが存在する。「中学二年生の時、仲良しだったあの子との約束を守った方のわたし」「した」か、「しなかったか」無意識も含めて、数えきれない選択の末に、今がある。私は「私」である以上に「私」であるのかもしれないし、「私」ではないのかもしれない。

「拝啓、ほろびへ」真水翅
「ほころび」から産み落とされるものが「ほろび」を待つ。精錬された言葉が「詩」について、「死」について語る。作者が描こうとしている境地を反芻する。いい。

「羊歯植物」岩佐聡
1行目から持っていかれた。葉と葉の間にお稲荷さまがいるのだ。羊歯植物とはシダ植物で、歯朶(しだ)から来た説、その形が羊の歯に似ている説など諸説あるらしい。(なぜ、「羊」なのか、つい、不思議になって調べてしまった)「汚物にこそ精霊は群がる」から、最終行で「鍾乳洞が腰をかがめて盆踊り踊る」圧巻だ。

「逆十字」三船杏
最初の2行でキリストの言葉「神よ、何ゆえに我を見捨てたのですか」と、くる。死んだあと、「かわいがってくれる」人々の中で「私」は熟成されていく。この視点が秀逸で、書き切れている。タイトルの「逆十字」とラストの二行が呼応する。

「忘れんぼ」竹之内稔
何が「自分」と確定させることが出来るのか、それはあいまいだ。他者によって登録されてはじめて自分としては「忘れる」ことが果たされるのだ。「誰そ彼」時、自分の存在が揺れる。

「創世記 ヌカの福音」ぐら
創世記、福音、とキリスト教をモチーフにしながらヌカ「糠」漬けの世界が描かれていく。未来永劫が味蕾永劫になっていたり、あちこちにユニークな要素を盛り込みながら「どんどん美味しくなってしまう」糠漬けの世界を描き切っていて、凄い。

【史上最長】ー全裸パークに行ってみたwww(live ver.)鳴海洋子
タイトルからお分かりかと思うが、なんて思い切った言葉たち!怖いものなんてないでしょ、鳴海さん!自分の言葉を信じていなければ、こうは書けない。

「お姫様の魔法」月ノ音姫瑠
「私は女の子でありました」ではじまり、憧れを言葉に乗せる。タオルケットを巻きつけた「お姫様ドレス」からゴシックアンドロリィタで本物のお姫様になる。なりたいものになろう。好きなものを好きと言えることはとても大切なことだ。(私の若い頃にゴスロリに茶色のカラコンがあったらなあ、とつくづく残念に思うのです)

投稿詩の感想は以上。電子版まではまた後ほど。

詩の感想(評)では、知人以外の詩を優先しているのだが、どうしてもこれは残したいというものが今回の、佐々木貴子の「穴」。
星は「涙を拭った指で空にぷすり、と開けた穴」であり、「生きたまま墓標を持つことを空は許した」のだ。「生きたまま墓標を持つこと」の余韻が、いつまでも続く。「空っぽのわたしから溢れるものは何ですか」「蒸発しないと分かっていたなら雨も降らなかったのではないですか」たたみこむように問いかける言葉の強さが刺さり、わたしの心に穴をあけた。
詩を読むことは、このように特別な一行に出会えることがある。わたしには書けない一行に出会える奇跡。静まりかえった暗黒の宇宙からわたしの心の穴は星に見えているのかもしれない。









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